スバル「WRX」の限定車はなぜ人気? 高額でも即日完売する理由とは?

熱狂的なスバルファンはスペックがわからない段階で予約する

 STI限定車の多くは、基本的には一台ずつ現車合わせで架装パーツを装着するなど、大量生産ラインではできない、細部まで手の込んだセッティングが施されていることが大きな魅力です。

軽量ボディで最強のパワーウェイトレシオを実現した「WRX STI タイプRA-R」

 特に「Sシリーズ」では最高出力など性能アップが図られながら、ノーマル車と変わらない耐久性が確保された上にメーカー保証も付くなど、一般的なチューニングカーとは一線を画す品質と安心感が得られることも人気の秘訣になりました。

「S208」や「RA-R」では、前作の「S207」で実施した内容(クランクシャフト、コンロッド、ピストンのバランス取り調整)に加え、フライホイールとクラッチカバーのバランス取りも実施しています。

 カタログスペック的には、旧モデルと比較してわずか1馬力の向上に過ぎませんが、真の狙いはピークパワーの向上ではなく、エンジンの回転フィールと耐久性のさらなる向上にありました。

 これにより、ベース車はおろか、前作「S207」とも別物と思えるほど痛快なフィーリングが得られるモデルに仕上がりました。

「STIの限定車はハズレなし」のイメージ効果は凄まじく、2010年頃からは、スペックなどの詳細がわからない段階でも注文するという熱心なファンが、筆者(マリオ高野)の推測では全国に100名ほど育ちました。

 STI限定車はどれもリセールバリューが高いこともあって、旧STI限定車から乗り換えがしやすいのも人気のひとつでしょう。

「S207」以降のモデルは、即時完売だったり抽選になったりするので、まずは発売されるとわかった時点で予約をして、実際に買える権利を得たのちに、購入費用の捻出にかかるという人も少なくありません。

 あまりにもリセールが強いので、たとえ無理をして買っても大きなリスクにならないことも後押しになります。

 中古車でも新車時の定価以上の相場になるほどですから、個人はともかく、一部の販売業者がそれを見越して入手することもあったようです。中古車が高騰し続けているのは、海外の業者が買い付けていることが理由のひとつになっているともいわれています。

最新の「S209」は北米のみの販売 STIの認知度アップを狙う

 2019年1月に開催されたデトロイトショーで発表された最新作の「S209」は、「S208」の正当な後継モデルというのに北米専売ということで、物議を醸しました。もちろん、日本のスバルファンからは「日本でも販売してほしい!」との声が噴出しました。

ワイドボディで迫力満点な「S209」(北米専売)

 341馬力というスバル車史上最強スペックと、ド派手なオーバーフェンダーによるワイドボディなど、内容、見た目ともにこれまでの「Sシリーズ」とは一線を画す迫力であり、最近のSTIコンプリートカーにはなかった領域まで踏み込んでいます。

 また、スバルブランドは北米市場で大人気ですが、実は「STI」の名はコアなスビー(北米の熱狂的なスバルファン)以外にはあまり浸透しておらず、インパクトの強い「S209」を投入することで北米市場において「STI」のイメージを高める狙いもあるのです。

 振り返れば、1998年に2日間で完売した「22B」は「WRC 3連覇記念」、2015年に1日で完売した「S207」はニュルブルクリンク24時間耐久レースのクラス優勝記念車だったなど、30年に及ぶSTIの限定車の中でも、特に注目されるのはモータースポーツでの栄光と関連が深いモデルでした。

 やはり、STI限定車の人気は「戦う姿勢」と「戦いに勝つ」ことにあり、魅力の源泉はモータースポーツ活動にあるといえます。

 STIは現在もニュルブルクリンク24時間耐久レースや国内トップカテゴリーのスーパーGTに参戦し続けていますが、このファイティングスピリットを絶やすことなく続ければ、STI限定車の人気はますます高まっていくに違いありません。

【了】

オーバーフェンダーで武装した北米専売の「S209」などSTIの歴代限定車の画像を見る(32枚)

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