日本でも増えつつある「ラウンドアバウト」交差点 災害時に発揮されるメリットとは

欧米で古くから普及し、日本でも増えつつある「ラウンドアバウト」という環状の交差点があります。このラウンドアバウトは名前の通りラウンド(円)の形をしています。そこで、ラウンドアバウトの導入経緯や特長を紹介します。

日本で年々増加している「ラウンドアバウト」とは

 欧米諸国や東南アジアの一部の国では、信号機のある交差点の代わりに「ラウンドアバウト」と呼ばれる円形状の交差点が多く存在しています。

 現在、各国で多く設置されているラウンドアバウトは「現代的ラウンドアバウト」と呼ばれ、元々はアメリカで導入されたラウンドアバウトの問題点を改善し、1960年にイギリスで試験導入が開始され、その後、世界的に運用が始まりました。

福岡県北九州市八幡東区にあるラウンドアバウト

 ラウンドアバウトとは、中央に円状の島(中央島)が設けられており、その周囲を「環道」と呼ばれる一方通行の車線で囲い、そこに接続された複数の道から進入、退出ができるようになっているものを示します。

 上から見た形は、地図記号の「工場」のマークのようになっており、とくに大型で有名なものでは、フランス、パリの凱旋門の周囲を取り囲むように配置されたラウンドアバウトで、12か所からの進入、退出が可能となっています。

 このラウンドアバウトは、通常は信号機を設置する必要が無く、交差点での信号機の待ち時間を省略して渋滞緩和できることや、十字の交差点のように、直進車両と右折車両の交差がなく、接触事故を未然に防げることのほか、さまざまな利点があります。

 このラウンドアバウトですが、日本ではほとんど見かけることがなく、存在すら知らない人もいるかもしれませんが、じつは日本でも導入が進められています。

 2018年9月末現在で、全国30都道府県78か所に導入されています。2018年3月時点では、全国27都府県75か所であったため、着々と増えてきていることがわかります。

 そこで、日本国内におけるラウンドアバウトの導入経緯などについて警察庁にうかがいました。

──ラウンドアバウトの導入に至った経緯を教えてください。

 平成26年(2014年)の道路交通法改正以前より、中央に工作物または道路標示が設けられ、車両が通行する部分が環状の構造を有する交差点が存在していました。

 このような環状構造の交差点においては、車両が環状部分を右回りに進行し、環状部分を進行している車両が進入する車両より優先走行するよう、安全かつ円滑な交通整理がなされているという実態がありました。

 一方で、同様の状態であっても、道路の幅員、道路構造その他の道路状況によって、一方通行、一時停止等の交通規制の実施状況が一様でない上、通行方法を見落とすおそれがあるなど、交通の危険を生じさせるおそれも存在していました。

 そこで、平成26年の改正において、環状交差点の定義を定めた上で、環状交差点では、車両は中央に設置された工作物等の周囲を右回り通行にするとともに、環状部分を通行している車両が交差点に進入しようとする車両に優先することとなるなど、その交通法に関する規定を整備しています。

※ ※ ※

 警察庁の話を要約すると、2014年の改正道路交通法により、バラバラであったルールがまとめられ、9月1日より正式に「ラウンドアバウト(環状交差点)」の導入が開始されましたということです。

 日本国内は2014年以前からラウンドアバウトの試験運用が始められており、2010年に長野県飯田市の吾妻町、2012年に同県同市の東和町に導入されました。

 飯田市での実地検証によると、直線的に通過できない形状とし、入口、出口の1車線化、環道は真円にして車線幅は車両1台分、導流帯(ゼブラゾーン)を用いて侵入と退出をわかりやすくし、優先/非優先の明確化を行なうことで、交通の流れを整え速度抑制も可能になったとしています。

 実地検証によると交差点の通過速度が、約35km/hから25km/hに低下しています。利用者アンケートによると過半数が良くなったと答え、悪くなったと答えたのは20%に留まりました。

日本にあるラウンドアバウトを画像でチェック(6枚)

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