3輪バイクのNIKENは、これからの未来に変化をもたらすか?

雨での試乗、晴れた路面と変わらない感覚でライディング可能

 今回の試乗は偶然雨に見舞われたことがプラスに働き、その優位性が一段と際立ちました。こうしたコンディションではバイクとの一体感を得られず、コーナーはただやり過ごすより他ありません。

 ところがナイケンなら晴れた日の路面とほとんど変わらない感覚でライディングすることができたのです。

濡れた路面でも晴天の日を走行してるかのような感覚

 だからといって4輪のようにハンドル任せで操作したり、どっしりと乗っていればOKというわけでもなく、身体を積極的に動かしながらGをコントロールするのは通常の2輪と同じ。つまり、バイクの醍醐味を損なうことなく、クルマのような安心感が与えられているのがナイケンという乗り物なのです。

 安心感の高さはタイヤの接地感の高さとイコールと考えてよく、車体をどんどんバンクさせていってもフロントタイヤは路面をしっかりとグリップ。その時のイメージはジェットコースターのような絶大なオン・ザ・レール感覚です。

 また、減速時は3輪分の摩擦が得られるために制動距離が短くて済む他、旋回中にブレーキレバーを操作しても挙動がほとんど乱れないなど、安全性も飛躍的に高められていました。

 もちろん、いつかグリップを失うことになりますが、基本的にフロントよりもリアが先に限界をむかえるため、不意にフロントがすくわれてスリップダウンしたり、ブレーキの握りゴケといったリスクが軽減されるのは間違いありません。

 そんなナイケンに対し、「それなら4輪に乗れ」とか「これを2輪と呼ぶな」といった意見はあるでしょうが、まぎれもなくこれはバイクです。ライディングプレジャーをそっくりそのまま残し、場合のよってはそれを引き上げた上で、安定&安全性が確保されたことが画期的なのです。

ナイケンは自立せず、ライダーがしっかり支えないと倒れてしまう

 事実、車体は自立せず、ちゃんと手足で支えないと立ちゴケもするなど、単に安楽な乗り物ではありません。「これ以上のおもてなしはお節介になってしまう」という、あえての寸止め感にヤマハの趣味に対する見識が伺えます。

 ナイケンは、これをきっかけにして本格的なビッグバイクにステップアップしていく人や久しぶりにバイクの世界へリターンする人、あるいはバイクにまったく興味がなかった人などを繋ぎ、モビリティーとしての可能性を広げてくれるに違いありません。

 その乗り味をひと言で表現するなら「グリップ革命」という言葉がふさわしく、ヤマハにはこの技術をできるだけ多くの排気量やスタイルに派生させていくことを望みます。

 6輪のF1は歴史の中の存在ですが、3輪のバイクはこれからライディングの未来を変えていくことになるでしょう。そう思えるだけの完成度がナイケンにはありました。

【了】

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