じつは存在する「後突エアバッグ」なぜ普及しない? 事故で最も多い追突、安全性どう確保
正面や側面など、運転中の衝突から身を守る様々なエアバッグが搭載されていますが、後面からの追突に備えたエアバッグはほとんど見かけません。追突は事故類型でも上位に位置しますが、なぜ「後突エアバッグ」が普及しないのでしょうか。
世界初の後突エアバッグ搭載車とは
衝突時に乗員の安全を守るエアバッグは当初、運転席のハンドル内にのみ設置されましたが、次第に助手席にも普及。いまではドアと乗員のあいだで膨らむサイドエアバッグ、ルーフライニングに沿って膨らむカーテンエアバッグ、膝の衝撃を緩和するための二―エアバッグなど、車内の各所にエアバッグが備わっています。
それぞれ、正面や側面などからの衝突が想定されたものですが、後面衝突、つまり追突に備えたエアバッグは、ほとんど見かけません。その一方で、追突事故は事故類型のなかで最も多くを占めており、警察庁の交通事故統計によると、2017年には約16万8000件と全体の約36%に達しています。
じつは、追突に備えたエアバッグはないわけではありません。トヨタとエアバッグ大手の豊田合成が2008(平成20)年に、世界初となる後突エアバッグ「リアウインドウカーテンシールドエアバッグ」を開発しており、トヨタ「iQ」に採用しています。
このクルマは、全長が3000mm以下と軽自動車よりも短い2ドア、2シーターのいわゆるマイクロカー。後席と車体後面の間隔が短いことから、「後方からの衝突速度が高い場合、衝撃力や乗員を突き上げるようなフロア変形などにより、頭部がヘッドレストを外れてリアガラスやボデー及び加害車などと衝突する場合がある」(「豊田合成技報」vol.51)といった理由で、後突エアバッグが開発されたのです。
このエアバッグは、後面からの衝撃を受けると、天井後端部から後席のヘッドレスト周りに展開。頭部を保護し、割れたガラスの乗員への飛散なども低減するといいます。