じつは存在する「後突エアバッグ」なぜ普及しない? 事故で最も多い追突、安全性どう確保
その後の採用事例は…
豊田合成は「iQ」で、後突エアバッグを含む9個のエアバッグからなる「360度フルカバーエアバッグ」というコンセプトを打ち出しています。当時、同社の技報では「特に、コンパクト車の乗員保護性能を向上させる」とされていましたが、「iQ」以降、後突エアバッグを含む360度コンセプトが採用された事例はないとのこと。
理由としては、「iQ」ほど極端に後ろが短いクルマがそれ以降登場していないから、というのが実際のところだそうです。そもそも「iQ」も、後突エアバッグがなくても安全基準を満たしていたものの、より安全性を確保するために「360度フルカバーエアバッグ」を打ち出したのだそう。
後面衝突の安全性能については、メーカーごとに基準が定められているほか、その傷害のほとんどが頸部の傷害であることから、自動車事故対策機構(JNCAP)が「後面衝突頸部保護性能試験」を実施しています。同一質量のクルマが一定の速度で衝突した際の衝撃を再現し、頸部保護性能を5段階で評価するものですが、実際の事故においてはボディサイズの違い、乗員の姿勢、座席の調整位置などによっても試験結果と大きく異なってきます。
豊田合成によると、小型車であっても車体が衝撃を吸収したり、ヘッドレストが効果を発揮したりして、それぞれの安全基準は満たされているといいます。とはいえ、今後ひとり乗りの小さなクルマなどがより普及してきた際に、後突エアバッグや360度エアバッグを提供する用意はあると話します。
ちなみに、後突エアバッグは普及しないものの、そのほかのエアバッグについては年々進化してきていると、豊田合成は話します。同社でも2017年7月に新型のサイドエアバックを開発。従来、袋が2つに分かれて展開していたのが、3つに分かれるようになり、開く順番が調整されることで、胸部がより優しく守られるようになっているそうです。
「各国で安全基準がより厳しくなっていますが、今後さらに自動運転が普及すると、乗員が必ずしも前を向いていないことも想定されます。そのような状況に対応する、新たなエアバッグの開発も進めています」(豊田合成)
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