意外と凄い! スズキ「キャリイ」57年間の歴史 巨匠ジウジアーロデザイン世代もあった!
巨匠ジウジアーロのデザインしたモデルもあった
注目すべきモデルとしては、1969年登場の4代目です。スズキはライバル他車に勝つべく、ジウジアーロにデザインを依頼。ジウジアーロはいすゞ「117クーペ」やVW「ゴルフ(初代)」、日産「マーチ(初代)」をデザインした人物で、当時でも有名なデザイナーでした。
バンではフロントウインドウとリアウインドウの傾斜角度がほぼ同じで、横から見ると前後が対称に見える斬新なデザインを採用しました。トラックはフロントキャブ部分がバンと共通デザインで、角型ヘッドライトを採用するなどスタイリッシュにまとめられていました。
ほかにも歴代でスタイルの大きな変化は、1999年に軽自動車の新規格に対応するためにボディを大型化した際になります。ホイールベースをギリギリまで長くし、高速走行の得意なセミキャブオーバータイプへと変化させました。当時、軽トラックは5つのメーカーが製造しており、大型化の際にセミキャブオーバータイプとしたのはスズキ、ホンダ、三菱の3社。それに対してダイハツ、スバルはキャブオーバータイプのままにしています。
セミキャブオーバータイプが多勢で主流になるかと思われましたが、ロングホイールベースでは悪路でボディ中央下部が引っかかるいわゆる「亀の子状態」になりやすく、キャリイは2005年にショートホイールベースのキャブオーバータイプを主に農業用に再登場させ併売しました。
そして、2013年の現行型へのモデルチェンジの際には、全車をショートホイールベースのキャブオーバータイプに統一。この時点で「キャリイ」は3代目までのスタイリングに先祖返りしたカタチになります。
「キャリイ」は過去約40年間に渡って軽トラック販売台数首位という実績もありますが、現在はライバルのダイハツ「ハイゼット」にその座を譲っています。一方でOEM供給も積極的で、以前はマツダ「スクラムトラック」のみでしたが、現在では日産「クリッパーNT100」、三菱「ミニキャブトラック」を加え、合計4ブランドの軽トラックが「キャリイ」になっています。
キャビンが大きなスーパーキャリイが仲間入り
保守的なスタイルとメカニズムを変えない軽トラックですが、2018年にはキャビンを長く伸ばした「スーパーキャリイ」がラインアナップに加わりました。シート後部にショッピングバスケットや工具箱、書類などを置くことのできるスペースを作り、通常の軽トラックでは不足しがちな手荷物スペースを確保しています。
さらにシートもリクライニング機構のあるものが装備されるなど、運転ポジションの自由度も高くなっています。反面、荷台の前後長が短くなってしまいましたが、キャビン下部を凹ますことで板や細長いものを滑り込ませて積載できるようにし、荷台の前後長が短いことが販売面で不利にならないよう対策しています。
ほかにも長いキャビンのモデルはダイハツ「ハイゼット ジャンボ」がありますが、キャビンの長さは「スーパーキャリイ」が上となっています。トラックの命である荷台の長さを最優先するなら「ハイゼット ジャンボ」に分がありますが、ユーザーにとっては選択肢が増えているため、より自分の用途に合ったものを選べる面もあります。
小型軽量で安価、しかもフラットな荷台に物がたくさん積めるため、レジャー用途としても注目されている軽トラックのなかでも、「キャリイ」は円熟の時を迎えています。
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