RC213V-SやRC30に続け! ホンダがまたしてもリアルレーサーの公道仕様を発売!! 「CRF450L」試乗
より手軽にオフロードへ走りに行ける!
しかし、どうしてこのようなレーシングマシンベースの公道向けオフロードモデルが誕生したのでしょうか。内山さんに質問してみました。
「要望は特に欧米から強くありました。宅地化やゴルフ場開発などにより、オフロードライディングを楽しむフィールド間に一般公道が増え、トレールが分断した状態になっています。連続してダート走行を楽しむために、公道仕様モデルが求められました。これまでのトレールバイクでは物足りないオフロード経験者らが望むマシンでしたので、今回の『CRF450L』のようなハイパフォーマンスモデルでなければいけなかったのです」
高性能なコンペティションモデル(競技専用車)の場合、移動にはトランスポーターが必要で、積み下ろしに時間を要し、手間もかかります。しかし、既存のトレールバイクでは性能的に物足りない。そこでオフロードバイクファンから渇望され誕生したのが『CRF450L』だったというわけです。
とはいえ、厳格な音量・排ガス規制があるこの時代に、競技専用車を公道向けにリメイクするのは容易くありません。吸排気系を担当した阿部雄太氏(本田技術研究所二輪R&Dセンター)は、「排ガス・音量規制への適合には苦労しました」と、振り返ります。
チャコールキャニスター(大気汚染防止装置)をシリンダー後方に配備し、マフラーはマスの集中化などに配慮した2本出しサイレンサーを450Rでは採用しますが、450Lでは容量的に有利な1本出しに変更。サイレンサーを3室リターン構造にし、消音効果を向上しているのです。
また、海外仕様ではエアクリーナーボックスは開放型ですが、日本仕様では密閉型にしました。そしてレーシングエンジンがゆえにシリンダーの壁も薄く、騒音規制の対応には手こずったとのことです。エンジンにカバーを設け、駆動系にもゴムパーツや樹脂カバーを随所に追加。音への対策が、各部で施されているのが車体の隅々を見れば一目瞭然でしょう。
メンテナンスサイクルを伸ばし、2年保証も付けた
内山さんは「公道仕様とするからには、競技専用車のような短いメンテナンスサイクルのままではいけない」と考えました。専用設計したピストンは、ピストンリングを2→3本に増やし、耐久性と環境性能を向上。熱対策としてラジエターも大型化し、電動ファンとリザーブタンクも追加で搭載しました。
メンテナンスサイクルを大幅に伸ばし、通常モデル同様に2年保証も新車に付帯。レーサー直系といえども、ホンダの一般公道向け製品である以上は、購入後のこともよく考えた、じつにホンダらしい決意です。
この本気度満点のリアルオフローダー、もしかすると「RC30」のように伝説となるかもしれません。買うなら今のうちですよ。
【了】
Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。