「時速134kmオーバーの事故」など受けついに明確化! 危険運転致死傷罪に「数値基準」が新設へ 飲酒や大幅スピード違反の“新ルール”とは? ドリフトも対象に
2026年6月25日に開かれた衆議院本会議において、危険運転について規定する改正自動車運転処罰法が全会一致で可決し、成立しました。これにより、危険運転の速度や飲酒運転のアルコール濃度に関して数値基準が導入されるなど、その内容が大きく変わることになります。
飲酒や高速度運転による重大事故が多数発生…法改正に至った背景とは
現在、特に危険で悪質な運転行為によって人を死傷させると、自動車運転処罰法の危険運転致死傷罪として処罰の対象となり、相手を死亡させた場合は1年以上20年以下の拘禁刑、負傷させた場合は15年以下の拘禁刑が科されます。
危険運転行為の例としては、アルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為(飲酒運転など)や、その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為(高速度運転)などが挙げられます。
しかし、この危険運転致死傷罪の適用をめぐっては、これまで「基準があいまい」「一般的な感覚では危険運転と判断されるような事案でも過失運転致死傷罪が適用されている」などの指摘がなされてきました。
実際のところ2020年11月、福井県福井市において、酒気帯び運転をしていた男がパトカーの追跡から逃走中に時速105kmで軽乗用車に衝突し、相手の男女2人を死傷させた事故では、「運転手はぶれずに直進していた」などとして制御困難な高速度と認められず、被告に過失運転致死傷罪で懲役5年6か月が言い渡されました。
さらに2021年2月には、大分県大分市で、当時19歳の少年が制限速度時速60kmの交差点に、134kmオーバーの時速194kmで進入し、交差点を右折しようとした対向車に衝突、当時50歳の男性を死亡させる事故が発生しました。
この事故については2審の福岡高裁が危険運転致死傷罪の成立を認めず過失運転致死傷罪を適用したことから、福岡高等検察庁が判決を不服として最高裁に上告し、審理が続いています。

このように危険運転致死傷罪の適用ハードルが高いと言われるなか、2026年6月25日に開かれた衆議院本会議において、改正自動車運転処罰法が全会一致で可決され、危険運転致死傷罪の要件に具体的な「数値基準」が導入されることとなりました。
たとえば、飲酒運転に関してはこれまで数値基準が設けられていませんでしたが、法改正後は「血液1ミリリットルあたり1.0ミリグラム以上または呼気1リットルあたり0.5ミリグラム以上のアルコールを保有する状態」で自動車を走行させる行為などが危険運転致死傷罪の対象となります。
また高速度運転に関しても、最高速度が時速60km以下の道路においては「最高速度を50キロ超える速度」、最高速度が時速60kmを超える道路においては「最高速度を60キロ超える速度」という数値基準がそれぞれ設けられました。
つまり、仮に最高速度が時速60kmの一般道路を時速110km超える速度で、最高速度が時速80kmの高速道路を時速140km超える速度でそれぞれ運転し、人を死傷させた場合には原則として危険運転致死傷罪の対象となります。
加えて、今回の改正法では危険運転致死傷罪の要件として「その他道路および交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度で自動車を運転する行為」も追加されました。
この要件により、たとえ数値基準を時速10km程度下回っていたとしても、児童が登下校中だったり道路が凍結していたりと、そのときの道路・交通状況によっては危険運転致死傷罪が適用される可能性があります。
そして、現行の「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為」についても、これまでと変わらず危険運転致死傷罪の適用要件としているため、仮にアルコール濃度の数値基準を満たさなかったとしても、危険運転に該当するケースがあるといえるでしょう。
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そのほか改正法では「殊更にタイヤを滑らせまたは浮かせることにより、その進行を制御することが困難な状態にさせて、自動車を走行させる行為」、いわゆるドリフト走行についても危険運転の対象行為となります。
改正法は数日以内に公布され、公布から20日が経過すると施行されるため、7月中の施行が見込まれます。このたびの法改正によって、危険運転致死傷罪の適用にどのような影響が出るのか、今後の動向が注目されています。
Writer: 元警察官はる
2022年4月からウェブライターとして活動を開始。元警察官の経歴を活かし、ニュースで話題となっている交通事件や交通違反、運転免許制度に関する解説など、法律・安全分野の記事を中心に執筆しています。難しい法律や制度をやさしく伝え、読者にとって分かりやすい記事の執筆を心がけています。





















