「何度でも再受験可能」が仇に!? 高齢ドライバーを対象とした「運転技能検査」見直しへ 事故・違反の抑止効果が不十分な可能性
現在、75歳以上の高齢ドライバーのうち一定の違反歴がある人に対しては、運転免許更新時に「運転技能検査」の受検が義務づけられています。警察庁はこの検査をめぐり、交通事故や交通違反の抑止効果が十分でないとして内容を見直す方針を明らかにしました。
一定の違反歴がある75歳以上が対象の「運転技能検査」、追跡調査で見えた課題とは
近年、高齢ドライバーによる重大事故が相次いで発生し、その対策が課題となっています。
警察庁の統計によると、免許保有者10万人当たりの75歳以上高齢ドライバーによる死亡事故件数は、75歳未満のドライバーと比べて約2倍高い状況です。
また死亡事故の人的要因として、75歳以上の高齢ドライバーはハンドルやブレーキなどの運転操作を誤る「操作不適」が最も多く、このうち約26%が「ブレーキとアクセルの踏み間違い」という結果でした。
なお、2025年5月には長野県内のスーパーマーケットの駐車場で、76歳女性が自車を暴走させ、前方の道路を横断していた歩行中の女性をはねて死亡させる事故が発生しました。
さらに2026年4月には、東京都内において76歳男性がスクールバスを運転した際、バスの前方を歩いていた7歳の女児を直前で発見、驚いてブレーキとアクセルを踏み間違えたことで女児と衝突し、重傷を負わせる事故も起きています。
このような高齢ドライバーによる事故を防ぐ目的で、これまでに様々な制度が導入されており、高齢者の運転免許更新時には高齢者講習(70歳以上)や認知機能検査(75歳以上)を受ける必要があります。
加えて2022年5月からは、75歳以上の高齢ドライバーのうち、信号無視や速度超過、安全運転義務違反など一定の違反歴がある免許保有者を対象に、運転技能検査の受検が義務づけられることとなりました。
違反歴がない高齢ドライバーであれば、認知機能検査と高齢者講習を受講することで免許更新ができますが、一定の違反歴がある人の場合は、原則として運転技能検査(繰り返し受検が可能)に合格すると認知機能検査を受けられ、その後高齢者講習を受講したうえで免許更新をするという流れになります。
また、免許の更新期間満了日までに運転技能検査に合格できなかった場合は、免許更新ができない仕組みになっています。

2025年中は運転技能検査の対象者16万5756人のうち15万6513人が受検し、14万5935人が合格しました(受検者の合格率は93%)。
ちなみに運転技能検査では、指示された速度での走行や一時停止といった項目をチェックするほか、段差に乗り上げた後、ただちにアクセルペダルからブレーキペダルに踏みかえて安全に停止できるかの確認などをおこないます。
つまり運転技能検査は高齢ドライバーに十分な運転能力があるかを確かめるものといえますが、警察庁は「運転技能が低下して交通事故を起こしやすくなっている者が、運転技能検査に合格している状況がうかがえる」と明らかにしています。

実は警察庁では、2023年5月から8月までの運転技能検査合格者5270人と、一定の違反歴がなく高齢者講習を受けた受講者8233人について、受検・受講後の交通事故や交通違反の発生状況などを追跡調査しており、次のような結果が出ています。
【10万人当たりの交通事故件数】
・75~79歳
運転技能検査合格者…1457件、高齢者講習受講者(一定の違反歴なし)…322件、その差は約4.5倍
・80~84歳
運転技能検査合格者…1284件、高齢者講習受講者…557件、その差は約2.3倍
・85歳以上
運転技能検査合格者…2086件、高齢者講習受講者…792件、その差は約2.6倍
【10万人当たりの交通違反件数】
・75~79歳
運転技能検査合格者…1万6439件、高齢者講習受講者…9432件、その差は約1.7倍
・80~84歳
運転技能検査合格者…1万4557件、高齢者講習受講者…8593件、その差は約1.7倍
・85歳以上
運転技能検査合格者…1万6481件、高齢者講習受講者…7376件、その差は約2.2倍
上記をまとめると、運転技能検査に合格した人は違反歴のない高齢者講習受講者と比べて交通事故・交通違反件数がいずれも高い結果となり、事故件数にいたっては最大で約4.5倍の開きがあります。
こうした結果を受け、警察庁は現行の運転技能検査だけでは十分な交通事故・交通違反の抑止につながっていないとして制度の見直しを進める意向を示しています。
警察庁は今後、高齢ドライバーのさらなる交通事故防止を図るため、学識経験者や指定自動車教習所業界の関係者などを構成員とした「運転技能検査の見直しに関する有識者検討会」を開催し、今年8月をめどに報告書を取りまとめるとしています。

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運転技能検査制度の見直しをめぐっては、自動車教習所の指導員から「不合格でも何回か受ければ合格することが多いのがこの検査です。検査に慣れるまで受けて金をかければ何とかなるという流れを変えない限りはこの兆候は変わらないでしょう」「合格したい人は毎回お金払って同じコースを走ればそのうち合格します。根本的な改革が必要な制度だと思います」など、何度でも受検できる現行制度の改正を求める意見が聞かれました。
そのほか「地域によって定額制のタクシーがあるんだから、そういうサービスをもっと高齢者に周知すれば無理な運転も減るんじゃないですかね」「ライドシェアが普及していれば、高齢者が無理をしてハンドルを握り続ける必要もなかったはず」といった、高齢者の移動手段の充実について議論する声も上がっています。
今回の見直しにより、運転技能検査の内容がどのように変わるのか、その動向に注目が集まっています。
Writer: 元警察官はる
2022年4月からウェブライターとして活動を開始。元警察官の経歴を活かし、ニュースで話題となっている交通事件や交通違反、運転免許制度に関する解説など、法律・安全分野の記事を中心に執筆しています。難しい法律や制度をやさしく伝え、読者にとって分かりやすい記事の執筆を心がけています。










