セリカはどうなった!? スープラの今後は? トヨタ技術トップ・中嶋氏が明かす次期GRモデルと「白い巨塔」の今
ル・マン24時間の現地で行われた、トヨタの中嶋裕樹副社長と欧州メディアとの懇談会。そこでは、日本のメディアとは異なる視点の鋭い質問が飛び交いました。海外記者からの直球の質問に対し、中嶋副社長が語った「セリカ」への熱い想いや次期スポーツカー開発のヒントを、現地に赴いた山本シンヤ氏がレポートします。
欧州メディアとの懇談会で飛び出した、次期GRモデルへの直球質問
ル・マン24時間のレース中に、中嶋裕樹副社長と欧州メディアとの懇談が行われました。
筆者(山本シンヤ)はひっそりとその模様を見学していましたが、日本のメディアとは異なる視点の質問に、時に豪快なジョークを交え、時に真摯に語っている姿が印象的でした。
その内容は「モータースポーツがもたらす企業文化・人材育成への効果」、「水素を活用するパワートレインの最終ゴールと市販車の可能性」、「WECの2026年新レギュレーションへの対応」、「ハースF1チームとの提携目的と技術貢献」、「マルチパスウェイ戦略について」、「代替燃料の普及性とコスト課題」など多岐にわたりましたが、注目は「Top Gear」のジャック氏からの直球の質問でした。
「英国ではGRヤリスが絶賛され、まもなくGR GTも登場します。ただ、GRカローラは手に入りません。ズバリ、次に控えるGRモデルは一体何でしょうか?」

この質問に対して中嶋副社長はニヤリと笑みを漏らしながら、このように答えました。
「我々はモータースポーツの活動を通じて、『もっといいクルマ』を提供したいと考えています。これはエンジニアの視点から見て最も重要な要素です。皆さんもご存じだと思いますが、GR86はスバル、GRスープラはBMWと共同開発しました。ただ、私たちは自分たち自身の手で新しいスポーツカーを造り上げたいという想いからGRヤリスを開発し、今はGRカローラもあります。
そして次は……皆さんはかつて世界を席巻した『セリカ』という名をご存じですか? 皆さんは大好きですか?私は大好きです(笑)。
私の“個人的”な夢としては、近い将来にセリカを開発したいと考えています。現在、仲間たちがそのために大きな努力をしていますが、まだ確定(=開発GO)はしていません。ですので、一言だけ言えるのならば『セリカは私の夢』だということです(笑)」
2024年のWRCラリージャパンのトークショーで「セリカやっちゃいます」と公言してしまった中嶋氏ですが、口が滑らかなのか、さらにこんなことまで語ってくれました。

次期GRスープラの立ち位置と、ベースとなるオリジナルモデルの役割
「そして、GRスープラの次期モデルに関しては、トヨタからの情報は今は『何もありません(笑)』。ただ、GRが発売するスポーツモデルには2つあります。
1つはGR GTのようなモータースポーツに直結するクルマ、もう1つはGRヤリスやGRカローラ、さらにはGRセリカのように、ベースとなるオリジナルのヤリス、カローラ、セリカの販売ボリュームの拡大に貢献する役目のクルマです(つまり、普通のセリカも存在するのか!?)。
では、次のGRスープラはどちらに位置するのか?個人的にはその“間”に位置する存在になるクルマだと考えています。
とにかく、そのような領域のクルマを開発するために、今後もできる限りの努力をしたいと考えています。もちろん、個人的には、ですが(笑)。常に可能性はあります」
現行のGRスープラは市販モデルに加えて、GT3の下のカテゴリーとなる「GT4モデル」もラインアップされています。
この話を踏まえると、次期モデルもこの流れを踏襲するだけでなく、より市販車とレーシングカーの関係性が色濃くなるような気がしています。

エンジニアリングへの情熱と、変化を遂げる「白い巨塔」の未来
懇談の最後に、中嶋副社長はこのように締めくくりました。
「モータースポーツはエンジニアにとって非常にエキサイティングなものです。なぜ、我々がトヨタ・レーシング(TR)を設立したのか? その理由はエンジニアリング(技術)に注力したいからです。
そのためにはモリゾウの都合は気にせず、エンジニアリングに焦点を当てています。私はそのような姿勢こそが、厳しい市場でトヨタが生き残るための『成功の鍵』であると信じています。ですから、できる限りGRカンパニー、そしてGR製品をサポートしていきたいと考えています。それが私のパッションです」
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セリカの夢を熱く語り、スープラの未来を諦めない男が舵を取るトヨタの技術戦略。
豊田章男会長は、中嶋氏が率いる技術部のことを「白い巨塔」と呼びますが、揶揄するものの1度も『やめろ』、『解体しろ』とは聞いたことがありません。
中嶋氏はこう語ります。
「昔ほどはありませんが、今も技術部が“白い巨塔”であることは紛れもない事実です。ただ、僕は『白い巨塔=トヨタの開発文化』だと思う部分もあるので、それを守る必要もあると認識しています。良いところは残す。悪いところは変えるのが『今の白い巨塔』です。
おそらく会長も、白い巨塔の良い部分と悪い部分は理解していると思います。会長にも『思ってもいないのに、白い巨塔の番頭のような形で“御意”なんて言っていたら、周りは本当信用しなくなるよ。たまには無視したり、違いませんか?と言っている姿を見せた方が信用されるよ』と言われるので、少しずつ実践しています(笑)」
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。




















