ダッシュボードに映像を投影!? AUMOVIOが提案する「画面のない」次世代コックピットとは? 日本初公開の“プロジェクション技術”に注目 充実したSDV向けソリューションも紹介
パシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展2026 YOKOHAMA」に、コンチネンタルグループから独立したAUMOVIO(オモビオ)が出展しました。ディスプレイの制約を超えて車内のあらゆる場所に映像を映し出す「サーフェスプロジェクション」や、ソフトウェアでの機能更新を可能にする次世代通信アーキテクチャなど、ブースで紹介された未来の車社会を支える技術に迫ります。
「AUMOVIO」として初のイベント出展
コンチネンタルグループのオートモーティブ部門が分社化されて誕生した独立企業「AUMOVIO(オモビオ)」は、2025年秋にフランクフルト証券取引所へ上場を果たし、日本国内でも同年11月より新社名での体制を本格化させています。
その同社が、パシフィコ横浜で2026年5月末に開催された「人とくるまのテクノロジー展2026 YOKOHAMA」に出展。初めてAUMOVIOの名を冠したブースを展開しました。
ブースでは「安全」「エキサイティング」「コネクテッド」「自動運転」の4つをテーマに掲げ、次世代モビリティを支える最新技術とソリューションを紹介。来場者からの注目を集めました。
車内の“壁面”を自由に使える最新投影技術
今回のAUMOVIOのブースにおいて、国内初展示となったのが映像投影技術「サーフェスプロジェクション」です。
近年のカーインテリアにおいては、運転席から助手席までの左右Aピラー間を横断するように大型の液晶ディスプレイを設置する「ピラー・トゥ・ピラー」がトレンドとなっています。
しかし、同社の担当者は従来のディスプレイについて、液晶画面の表面にしか映像を映し出せないという物理的な制約があると指摘します。
サーフェスプロジェクションは、こうした従来の概念を打ち破り、プロジェクション技術を応用してコックピットの表面に情報表示やデザインを投影できるようにしました。

ダッシュボードやドアのトリムなど、車室内の一定面積がある場所であればどこにでも映像を投影することが可能です。
特徴は、ドライバーの視線移動を最小限に抑えるヘッドアップディスプレイ(HUD)の開発で培った同社の知見が活かされている点。フロントガラスやダッシュボードだけでなく、車内のあらゆる壁面(平面部分)をシームレスなインターフェースとして活用できるため、利便性と安全性を高いレベルで両立させています。
さらに、この技術は実用的な情報表示に留まらず、乗員のスマートフォンと連携して写真や動画といったコンテンツを映し出すなど、車内空間の雰囲気を自由に変えられる高いエンターテインメント性も備えています。
乗用車だけでなく、例えば働く車や商用トラックの壁面に広告やプロモーション映像を投影するといった、ビジネス面での新しい活用方法も想定されています。

また、車室内の物理的なシステムとこの投影技術を連携させることで、さらなる利点が生み出されます。
車内に配置された最小限のハードウェアボタンと組み合わせ、映像を映し出す場所やモードを切り替えることで、同じスペースが時にはエアコンの操作ユニットになり、時にはオーディオのコントロール画面になるといった、スペース効率と意匠性を両立したコックピットが実現します。
今後の対応としては、熱膨張への対策などより過酷な車内環境に耐えうる光学管理の洗練が必要とされますが、すでに欧州の自動車メーカーをはじめとする多くの開発現場から関心が寄せられているとのことです。
3つの柱からなるAUMOVIOのSDV向けソリューション
自動車業界で近年欠かせないキーワードとなっているSDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)についての展示も充実していました。
AUMOVIOのSDVに対するアプローチは、「Road to Cloud」と呼ばれる独自のエコシステムに基づいています。
このエコシステムは、道路を走る実際のクルマからクラウド上の仮想空間までをシームレスに繋ぎ、SDVを構成するあらゆるピースを提供するもの。
これらの提供価値を「Foundation」「Solutions」「Services」という3つの柱に分類し、モビリティの未来を牽引する製品やテクノロジーを展開しています。
第1の柱である「Foundation」は、クルマの骨格となる強固なエンドツーエンドのアーキテクチャ基盤を提供します。
ハードウェア面では、高度に標準化されたハイパフォーマンスコンピューター(HPC)やゾーンコントロールユニット(ZCU)、そして外部との通信を担うテレマティクスシステムを備えており、これらを仮想化技術によってデジタルツインとして扱うことも可能です。
同時にソフトウェア面においては、オペレーティングシステム(OS)やミドルウェアをはじめ、車両を常に最新状態にアップデートするためのOTA(Over the air)機能、そして現代のクルマに不可欠な車載サイバーセキュリティといった、信頼性が高く安全な基盤を構築しています。
第2の柱となる「Solutions」では、ユーザー一人ひとりに最適化された個別のSDV体験を生み出すための、革新的な車両機能を提供しています。「Safe」「Exciting」「Autonomous」というテーマのもと、高度な組み込みソリューションやクラウドアプリケーションを展開。
また、ソフトウェアの領域だけでなく、車両の周囲をセンシングする各種センサーや、ドライバーへ直感的に情報を伝えるディスプレイ、そして車両の動きを緻密に制御するアクチュエーターや各種ECUといった専用のハードウェアコンポーネントも幅広くカバーしているのが特徴です。
そして第3の柱である「Services」は、車両のライフサイクル全体に寄り添う、強力なサポート体制を意味します。
将来の拡張性を見据えた車両アーキテクチャの設計やコンサルティングから始まり、センサーやディスプレイといった複数の領域を跨ぐクロスドメインの統合、システムやソフトウェアの複雑な統合プロジェクトの実績を活かしたエンジニアリングを提供。
さらに、ソフトウェアの保守管理や、仮想環境を用いたクラウドベースの開発環境、コラボレーションを促進するフレームワークの提供、安全なクラウドサービスの運用支援など、開発から製造、運用に至るまでのあらゆる段階をサポートし、クルマとクラウドを繋ぐシステムの垂直統合を後押しします。
車両の神経網をスマートにする通信ネットワーク技術
このように包括的なSDVソリューションを有するAUMOVIOは、ブースでもこの3本の柱に基づき様々な製品や技術を紹介しました。
そのなかで、今回展示されていた注目のSDVアーキテクチャコンセプトが「Automotive Remote Control Network(オートモーティブ・リモート・コントロール・ネットワーク)」です。

同社が提案するこの次世代アーキテクチャは、中央に配置されたハイパフォーマンスコンピューター(HPC)をコアとし、各エリアを統括するゾーンコントロールユニット、そしてライトやモーターなどの末端にあたるエッジユニットを、標準化された通信プロトコルで結ぶ構造を採っています。
これについて同社のブース担当者は、自動車メーカーにおける最大のメリットはハーネスの大幅な削減であると説明。
現在の車両開発において、ECUの増加に伴う配線(ワイヤーハーネス)の肥大化と重量増加は大きな課題となっています。
これまでは、個々の部品に対してバッテリーから直接太い配線を何本も引く必要がありましたが、この新しいネットワークでは、中央から通信によってゾーンコントローラーに指示を渡し、そこから末端へ効率的に電力や信号を分配するため、配線構造がスマートになります。
また、ハードウェアとソフトウェアが分離されるため、車両の機能をソフトウェアのアップデートによって適時更新することが可能となります。これにより、車両の製造後であっても新しい機能を追加しやすくなり、モデルチェンジや他車種への技術展開にかかるコスト効率も大幅に向上します。
統合安全システムと自動運転プラットフォーム
運転支援技術と自動運転技術に関する紹介も見逃せません。
同社の統合安全システムは、従来の衝突時の衝撃を検知して作動するエアバッグECU(パッシブセーフティ)に、先進運転支援システム(ADAS)や車室内監視(キャビンモニタリング)の情報を融合させた先進的な安全システムです。
ADASからの予測情報を取り入れることで、衝突の危険性を事前に察知し、衝突が起こる前にあらかじめシートベルトを巻き上げたり、エアバッグの展開準備を整えたりする高度な予防措置を可能にしています。
さらに、キャビンモニタリングによって車室内の乗員の体格や座っている位置、デジタルセンサーとの距離を正確に把握することができます。これにより、大人の乗員に対してはエアバッグをフルパワーで展開させ、小さな子どもに対しては展開を抑制してシートベルトのみで拘束するなど、乗員の状況に応じた最適な展開強度や作動タイミングの個別制御を実現しています。

また、自動運転プラットフォーム「Xelve(セルフ)」はSDVの実現を支えるプラットフォームで、米自動車運転技術者協会(SAE)が定める自動運転のレベル2からレベル4までに対応しています。
用途に応じて複数のシステムバージョンが用意されており、高精度な自動駐車機能を実現する「Xelve Park」、ヒューマンライクなAIが意思決定をサポートする運転支援・自動運転体験「Xelve Drive」、レベル4自動運転のフェイルセーフ機能である「Xelve Pilot」、サラウンドビューをベースとしたコンピュータビジョンを用いて障害物を検知し、トレーラー牽引時の衝突を警告する「Xelve Trailer」などがあります。
電動化車両の性能や安全性を支える製品も
自動車の電動化が進む中で、バッテリーの状態(ステートやヘルス)などを監視するセンサー類にも注目が集まっています。
「e-Motor Rotor Temperature Sensor(eRTS)」も、まさにそうした電動化車両の性能や安全性を支えるための先進的なセンサーポートフォリオの一つとして位置付けられます。
eRTSは、電気自動車(EV)の永久磁石同期モーターにおいて、ローターの温度を直接かつ高精度に測定できる初めてのセンサー技術です。

これまで、モーター内の発熱状況はステーターの温度センサーや電流値などを基にソフトウェアのアルゴリズムで推測されていましたが、この手法では最大15度もの誤差が生じるという課題がありました。eRTSはこの誤差を3度にまで縮小することに成功しています。
システムは、磁石のすぐ近くに配置されるワイヤレスの測定ユニットと、モーターの外部に配置されてインバーター制御と繋がる有線の通信ユニットの2つで構成されています。
これら2つのユニット間では、ピエゾ超音波技術を利用して温度データのやり取りと電力供給を行っており、過酷な環境下でも正確な情報の伝達を可能にしています。
この高精度な温度モニタリングにより、自動車メーカーには大きなメリットがもたらされます。
従来は、広い温度誤差を見越して磁石の熱による減磁を防ぐため、高価なレアアース(希土類元素)を多用する必要がありましたが、eRTSの導入によってレアアースの使用量を大幅に削減できるため、コスト効率の向上と持続可能なサプライチェーンの構築に貢献します。
さらに、温度の許容限界をより正確に把握できることで、モーターが持つ本来のポテンシャルを極限まで引き出し、車両のパフォーマンスを向上させることも可能になるといいます。
同製品は既に量産製品への採用が決まっており、まもなく初の供給先において開発が始まるとのことです。
Writer: くるまのニュース編集部
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