隊員の「聴診器を噛みちぎる!?」殴打・頭突き・蹴りなどの暴挙も… 救急隊への「理不尽すぎる暴行」の実態とは 東京消防庁も「法的措置」辞さない構え
2026年3月、北海道日高町において69歳の男が「救急車の到着が遅い」などと因縁をつけて救急隊員の顔面を殴打したとして、公務執行妨害の疑いで逮捕されました。このような救急隊員への暴行事案はたびたび発生していますが、一体どのような現状があるのでしょうか。東京消防庁の担当者に聞きました。
隊員の感染防止衣を破る、聴診器を噛みちぎる、業務用携帯を壊すなどの物的被害も!
2026年3月13日の午前0時40分頃、北海道日高町において、救急隊員の顔面を殴って職務を妨害したとして、日高町に住む69歳の無職の男が公務執行妨害の疑いで逮捕されました。
この事案は、自宅でケガをした知人のために男が救急車を呼んだものの、「救急車の到着が遅い」などと因縁をつけて救急隊員の顔面を殴打したものです。その後、消防からの通報を受けて警察が現場に向かい、男をその場で逮捕しました。
さらに今年1月には鳥取県倉吉市において、自ら救急車を呼んだ55歳の会社員の男が、対応中だった救急隊員の顔面をこぶしで複数回殴る暴行をしたとして、公務執行妨害の疑いで逮捕される事案も起きています。
実は緊急搬送時に救急隊員が患者やその関係者などから暴行を受ける事案は全国的に発生していますが、一体どのような現状があるのでしょうか。

全国の消防行政を統括する国の機関である総務省消防庁の担当者は、「全国で発生した救急隊員への暴行・妨害事案の件数については網羅的に把握していない」としたうえで、「各消防本部との意見交換の場で情報を共有したり、課題について議論したりすることがある」と話しています。
なお救急隊員への暴行・妨害事案は救急搬送件数に比例して発生しやすい傾向にあることから、最も搬送件数の多い東京消防庁に話を聞いたところ、次のような状況が判明しました。
●暴行・妨害事案の件数
2024年(1月~9月まで) 15件
2019年~2023年までの5年間 96件
※隊員に対する暴力や暴言のほか、救急車・救急資機材への暴行行為を含む
●人的被害
・傷病者(患者)に腹や顔を殴られる、噛みつかれる、頭突き・蹴りといった暴行のほか、傷病者の関係者に殴られる事案などが発生。
・2024年9月には、傷病者を救急車内に収容して医療機関へ搬送する際、車内に同乗していた家族(飲酒あり)が救急隊長の胸ぐらを掴んで馬乗りになり、顔面を殴打するという事案が発生した。
この事案ではその救急隊が7時間にわたって運用できなくなったほか、別の救急隊2隊、消防隊2隊の計4隊が対応に当たることとなった。また、加害者は警察によって現行犯逮捕された。
●物的被害
・救急車や救急資機材などへの物的被害も発生している。傷病者が救急車を蹴ったり、救急隊員の業務用携帯を壊したりする事案や、救急隊員が着用している感染防止衣を破る、聴診器をかみちぎるといった事案もある。
・傷病者とは全く関係のない第三者が救急車を叩く、フロントガラスを殴打するといったケースも起きている。
東京消防庁の担当者は上記のような現状について、「救急隊は部隊として動いているため、事案によって隊員が抜けると運用ができなくなり、代替の部隊を出さなければならない。現在、救急搬送をめぐる情勢はひっ迫しているが、このような事案が発生すると対応が長時間化したり、搬送の遅延が起きたりするおそれがある」と話しています。
また暴行・妨害行為に対しては、「法的措置も検討して、毅然とした対応をしてまいります」とコメントしています。
※ ※ ※
2026年1月に総務省消防庁が公表した「令和7年版 救急・救助の現況」によると、2024年中、救急車による救急出動件数は771万8380件で過去最多を記録しています。
救急隊員の活動を妨げる行為は他の搬送を遅らせ、人の命に関わる可能性もあります。
救急隊員への暴行・妨害行為はもちろんですが、軽症で救急車を呼ぶ行為なども救急搬送をひっ迫するおそれがあるため、各個人が留意すべきでしょう。
Writer: 元警察官はる
2022年4月からウェブライターとして活動を開始。元警察官の経歴を活かし、ニュースで話題となっている交通事件や交通違反、運転免許制度に関する解説など、法律・安全分野の記事を中心に執筆しています。難しい法律や制度をやさしく伝え、読者にとって分かりやすい記事の執筆を心がけています。


























