トヨタ異例のミッドシップ4WD! 何が進化した? 注目の「GRヤリスMコンセプト」 現在の状況は?
TOYOTA GAZOO Racingが開発する「GRヤリス M コンセプト」が、2026年スーパー耐久開幕戦もてぎに登場しました。アンダーステア解消を狙ったミッドシップ化による変化と、新たに浮上した冷却や足回りの課題について、エンジニアの市瀬氏の証言を交えて解説します。
トヨタ異例のミッドシップ4WD! GRヤリスMコンセプト、S耐開幕戦もてぎでの現在地は?
「モータースポーツを起点としたクルマづくり」の一環として、2025年秋の岡山大会で実戦投入された「GRヤリス M コンセプト」。
車体前方のエンジンを後方に移した特殊なレイアウトは、どのような進化を遂げているのでしょうか。
2026年のスーパー耐久開幕戦もてぎの現場から、公開開発の現状と技術的な課題について解説します。
ベースとなる市販のGRヤリスはフロントエンジン4WDを採用していますが、前輪への負荷が大きく、コーナリング時に意図通りに曲がらないアンダーステアの課題を抱えていました。
この問題を根本から解決するために採用されたのが、エンジンを車体後方に配置するミッドシップ4WDレイアウトです。
2026年のスーパー耐久開幕戦もてぎで取材に応じた開発エンジニアの市瀬氏によれば、本車両は後部に新開発2リッターターボエンジンを搭載。そして、既存の四輪駆動システムを改造し、プロペラシャフトを用いて前輪へも動力を伝達する構造を採用しました。
前輪の負担軽減を図った一方で、新たなレイアウトは別の技術的課題を生み出しています。
市瀬氏は現在直面している問題として、大きく2点を挙げました。
1点目は、車両の挙動です。
重量のあるエンジンを後方に配置した結果、旋回時に車体後方へ遠心力が働き、後輪のグリップが限界を超えてスピンしやすくなる現象が発生しています。
2点目は、エンジン周りの冷却不足です。
エンジンが前方にある場合は走行時の風が直接当たりますが、後方配置では風が入りにくくなります。
そのため、ラジエーターのみに依存する形となり、エンジンやトランスミッションの温度を下げる機能が不足しています。
これらの課題を解消するため、2026年仕様では車体下部の空力設計が変更されました。
市瀬氏によると、スピンを防ぐ後輪のダウンフォースを獲得する目的で、ニュルブルクリンク24時間耐久レース参戦車両の形状が導入されています。
車体の底面を後方まで平坦化し、リアディフューザーを設けることで空気を流す構造です。
また、冷却対策として、底面の部品間に段差を作り、エンジンルーム内へ空気を取り込む工夫も施されています。
現在は、ダウンフォースの確保と冷却性能の両立を探るためのテストが続いています。
さらに、オーバーステアを抑制するため、サスペンションのバネやスタビライザー、アームの取り付け位置といった足回りの設定調整も進められています。
トヨタにおいてリアにエンジンを搭載する車両の開発はMR-SやMR2以来となるため、過去のデータが少なく検証作業が続いています。

※ ※ ※
本来であればホイールベースを延長するなどの車体側へのアプローチも考えられますが、現段階では今の車体(GRヤリス)で実施可能な調整を試し、データを収集している状況です。
この開発手法は、レースの実戦を通じて不具合を洗い出す「公開技術開発」として位置付けられています。
最終的な目標は一般市場での市販化に設定されていますが、解決すべき課題が残っているため、具体的な販売時期は決まっていません。
現状の車両で可能な限りの改善を重ねながら、知見を蓄積する過程が続いています。
Writer: くるまのニュース編集部
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