高校球児の聖地「甲子園」のツタ 高速道路の壁面緑化に一役
高速道路の緑化施策のひとつにコンクリートやフェンスの壁面緑化があります。じつは壁面緑化に使われている「ツタ」は高校球児の聖地として有名な『阪神甲子園球場』の外壁から種子を採取したものだったのです。
導入当時、国内では入手困難だった「ナツヅタ」
高速道路には、SA・PAに植樹された木々や中央分離帯の植木など多くの緑が存在します。そのなかでも、コンクリートなどの壁が一面ツタに覆われている光景を目にしたことがある人もいるかと思います。
この壁面には、阪神タイガースの本拠地や高校球児の聖地としてお馴染みの『阪神甲子園球場(以下:甲子園)』の外壁を覆う名物「ナツヅタ」が使われています。
壁面に「ナツヅタ」が覆われている理由は、コンクリートや金属などの硬い印象を和らげるとともにCO2の排出を抑え、ヒートアイランド現象や地球温暖化など環境負荷を軽減させるために壁面を緑化しています。
甲子園の外壁や高速道の壁面緑化に使われている「ナツヅタ」は、ブドウ科の落葉性つる植物です。吸盤になった巻きヒゲを伸ばし、壁などに付着して上へ伸びるのが特徴です。
また、壁面緑化の効果は、非緑化壁面(白色コンクリート板)の表面気温が35.5度に対し、緑化壁面(バイオラング)の表面気温は28.7度から34.2度となり、表面気温は最高で約7度という調査結果がでています。(国土交通省調べ)
では、なぜ高速道路に甲子園の「ナツヅタ」が使われているのか、NEXCO東日本 広報課に導入背景などを伺いました。
――甲子園のナツヅタを使用した背景を教えてください。
甲子園の「ナツヅタ」を高速の壁面に使用したのは、昭和47年頃からです。導入当時は、「ナツヅタ」があまり市場に出回っておらず、高速道路の壁面緑化に必要なたくさんの苗を集めるのに苦労していました。そんな時、着目したのが阪神甲子園球場の外壁を覆う名物「ナツヅタ」です。
甲子園の「ナツヅタ」から種子を採取し、1年かけて育てたのち高速道路の壁面緑化として植え付けをおこなっていました。滋賀県湖南市にある「NEXCO総研 緑化技術センター」では、昭和46年から平成14年2月までの間に約43万本を生産し、全国の高速道路に出荷していました。
――壁面緑化にはどのような効果があるのでしょうか?
外壁をツタなどの植物で覆うことにより、設備自体の劣化や高速道路周辺に対する壁音、環境負荷の軽減などが期待できます。また、表面気温や表面温度の上昇を抑制する効果も期待されています。
――現在も甲子園の「ナツヅタ」が使われている場所はありますか?
NEXCO東日本の管内では、京葉道路(穴川ICから貝塚IC)などの壁面緑化に甲子園の「ナツヅタ」を使っています。
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意外なところに、甲子園と高速道路の繋がりを発見。近年では、市場で「ナツヅタ」の調達が可能となったため独自生産は終了し、甲子園の「ナツヅタ」が使われることもなくなったそうです。
【了】