トヨタの次世代モビリティ「e-Palette」ってこんな使い方もできるの!? 移動の概念を変える「マルチユース」の全貌とは? 広がる”可能性”に期待大!
トヨタは、次世代モビリティ「e-Palette(イーパレット)」の用途や取り組みを紹介する取材会を2026年1月27日に開催しました。e-Paletteは、単なる移動手段としての電気自動車(BEV)にとどまらず、様々な「マルチユース」の可能性を秘めた一台です。はたしてどのような使い方ができるのでしょうか。
快適な移動やショッピング、推し活をサポート! 医療や災害時の味方にも
今回の取材会では、様々な事例や提案が紹介されました。
●PALETTE RIDE(パレットライド)
お台場エリア(東京都江東区)では、2025年10月からe-Paletteを活用した移動サービス「PALETTE RIDE(パレットライド)」が展開されています。
広いエリア内の移動を楽にし、街の回遊性を高めて活性化させることを目的に、トヨタと東京都が連携して行っている事業で、無料で利用することが可能です。シンボルプロナード公園には、5か所の停留所を設置。運行開始から約3万人が利用しており、ベビーカーや車椅子の人、子供連れにも好評だといいます。
PALETTE RIDEでは、一般的なバスのような固定ダイヤではなく、需要に応じて柔軟に運行を変える「オンデマンド型」の仕組みにチャレンジしています。
一般的なバス(ダイヤ運行)は、常に一定のルートで走り、運行スケジュールの時間も決まっています。乗客がいなくても走る必要がある、乗客が多いと乗り切れないといった課題ありますが、パレットライド(変動運行)であれば、イベントや混雑状況に合わせてスケジュールを組み、状況に応じてルートや台数を変えることで、需要がある場所に車両を集めたり、混む場所は待機時間を長くして多くの人を効率的に輸送することが可能です。
また、遠隔管理で運行管理室からモニターで監視し、車内のタブレットに「出発・待機」の指示をリアルタイムで送ることで、高効率な配車を実現できるという利点もあります。
●移動型店舗(マルシェ)
これまでは、消費者がお店のある場所まで出向くのが当たり前でした。しかしe-Paletteは、サービス側が人々の生活圏へと入り込みます。
お台場での実証実験では、人流データを分析し、イベントの属性や時間帯に合わせて最適な場所へ出店する試みを行っています。例えば、隣接するアリーナでバスケットボールの試合がある際には、開始直前にファンが集まる場所で関連グッズを販売するといった、データに基づいた効率的な店舗運営を可能にします。
さらに、カメラによる来客分析や販売実績を蓄積することで、次回の在庫計画や出店場所の最適化を図るサイクルも構築しています。
広大な車内空間を活かし、アパレルを意識したセレクトショップやスイーツショップ、カプセルトイなど、業種を選ばない自由な展開が可能です。
●Communication Palette(コミュニケーションパレット)
単なる移動手段としての車両提供に留まらず、遠隔地とのリアルタイムなコミュニケーションや動的コンテンツの配信を組み合わせた、これまでにない体験型モビリティです。車両、通信、配信管理、そして運営オペレーションまでをトータルパッケージとして提供することで、事業者が新しいサービスを「早く、安く」導入できる仕組みを構築しています。
本サービスの最大の特徴は、車内という限られた空間を、圧倒的な「没入感」と「臨場感」のある交流の場へと変貌させる点にあります。
車内には50インチの大型ディスプレイと高性能な音響設備(スピーカー、ウーハー)が完備され、離れた場所にいる人物が、あたかも隣にいるかのような感覚で対話を楽しむことができます。
特にこだわっているのがマイクの存在です。ユーザーが緊張せずに自然な会話を楽しめるよう、ピンマイクなしでも車内のどこからでもクリアに音を拾う高度な集音技術を追求。これにより、友人同士で雑談するようなリラックスした雰囲気での遠隔コミュニケーションを実現しました。
昨年トヨタが実施したプロバスケットボールチーム「アルバルク東京」とのコラボレーションでは、試合後の興奮冷めやらぬファンが、移動中の車内で選手本人とライブで会話を楽しむ「推し活」サービスを「ハイエース」で実施し、高い満足度を得ました(ルートは代々木体育館から東京駅まで、価格は1万8000円で50名ほどが参加)。
この実績をもとに今後はスポーツ分野のみならず、観光ガイドとの交流や記念日の特別な演出といった「非日常」を感じさせる多様なサービスへの展開を予定。2026年3月から新たな仕様での実証実験を行います。
●移動診療、災害時の給電活用
人々の暮らしに寄り添うインフラとしての活用も可能です。その一つが、医療資源が不足する地域に診療機能を届ける「移動診療サービス」です。
e-Paletteに乗るのは看護師と診療を受ける患者のみ。遠隔地の医師とオンラインでつなぎ、診療を受けることが可能です。
単なる搬送手段ではなく、病院の診察室そのものとして機能。車両の最大の特徴である低床構造と広い開口部は、足腰の弱い高齢者や車椅子利用者の乗降を容易にし、高いアクセシビリティを実現しています。
清潔感のある白い車内空間には、横になれるベッド兼用の椅子や、医師と等身大に近い目線で対話できる大型モニターが備えられ、調光フィルムによって診療中のプライバシーも守られます。
また、BEVであるため、従来のガソリン車のようなアイドリング時の騒音や振動がなく、医療機器への負荷を抑えながら、静かで安心感のある診療環境を提供できる点も大きな強みです。
一方で、災害時における電力インフラとしての役割も極めて重要です。e-Paletteは約72kWhという大容量バッテリーを搭載しており、一般家庭の約7日分に相当する電力を供給可能です。
これは自治体が備蓄する一般的なポータブル電源約25個分に匹敵する容量であり、個別に大量の電源を管理・運搬する手間を省き、いざという時に自走して被災地へ電力を届けられる機動性を備えています。
外部給電装置を接続すれば、避難所での暖房器具や調理器具の利用が可能になるだけでなく、広々とした車内空間そのものを一時的な避難所として開放することも想定されています。「万が一の時、このクルマが近くにあるだけで安心できる。そんなインフラとしての役割も果たしたい」と担当者は強調しました。
●自動運転
e-Paletteは、将来的な自動運転社会を見据え、トヨタ独自の「車両制御インターフェース(VCI)」を採用しています。これにより、開発会社が異なる様々な自動運転システム(ADK)を標準化された接続方式で搭載できるようになりました。
現在販売されている車両は「自動運転レベル2相当」の対応ですが、2027年度には「レベル4」に準拠したシステム搭載車の市場導入を目指し、継続的な機能実装が進められています。
今回は新たに、名古屋大学発のベンチャー企業・ティアフォー(TIER IV)社の自動運転システムを搭載した実車が紹介されました。
ティアフォー社の強みは、世界初の自動運転用オープンソースソフトウェア「Autoware」を軸とした開発体制にあります。特定の企業のみが技術を独占するブラックボックス型ではなく、多くのパートナーと知見を共有し、パッケージ化された導入ノウハウを提供することで、短期間かつ低コストでの自動運転実装を可能にしています。
既に全国39都道府県での実証実績があり、一部地域ではレベル4の認可も取得していることから、その技術的信頼性は高いと言えるでしょう。
e-Paletteへの実装においては、カメラ、LiDAR(ライダー)、レーダーを組み合わせた高度な「冗長性」が確保されています。これは複数のセンサーで周囲の物体を多角的に捉えることで、一部の機器に不具合が生じても安全性を維持する仕組みです。
さらに、最新のAI技術や、高精度な3Dマップとリアルタイムのセンサー情報を照合する認知技術を統合することで、人以上に安全な運行を目指しています。
この自動運転e-Paletteが提供する真の価値は、深刻化する運転手不足という社会課題の解決に留まりません。信号機などのインフラと連携した渋滞緩和や、スムーズな運行による新たなビジネスモデルの創出など、公共交通のあり方を根本から変えるポテンシャルを秘めています。
●MR換装シミュレーター
MR(Mixed Reality)を活用したマルチユースの例を“見える化”する取り組みも進められています。
様々な使い方ができるe-Paletteですが、具体的な活用方法を検討する際、その都度実車を用意したり内装設備を制作したりするには、多大なコストと時間、手間がかかるという課題が生じます。
解決策の一つとして開発が進められているのが、バーチャル技術を活用したこのシミュレーターです。VRゴーグルを使用することで、実際の車両がない場所でも実寸大のe-Paletteを空間内に映し出し、サイズ感やボリュームを正確に把握することができます。
外観のボディカラー変更やロゴの追加だけでなく、ドアの開閉や車内空間の確認も容易です。さらに、車内にインテリアを配置し、向きやレイアウトをその場で調整できるため、架装や換装の具体的なイメージを即座に膨らませることが可能です。
また、本ツールは複数人で同じバーチャル空間を共有できる点も大きな特徴です。ゴーグルを装着していない人もモニターを通じて同じ映像を確認できるため、関係者間でのスムーズな合意形成を支援します。
このように、実車を伴わずに3DCGでバーチャルな体感共有を可能にすることで、e-Paletteの新しい活用の形をスピーディーかつ効率的に検討できるといいます。
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前出の松本氏は、今後の展望について次のように述べています。
「モビリティカンパニーへの変革の第1号車として発表してから7年。試行錯誤を繰り返しながら、ようやく発表の日を迎えられました。我々が目指しているのは、単に車両を販売することではなく、このe-Paletteを通じて新しい生活の形を提案することです。
まずはこの車両を使っていただくことで、皆様と一緒に新しい使い方のアイデアを広げていきたいと考えています。サービスがやってくる、そんな新しい当たり前をこのクルマから作っていければと思います」

e-Paletteが普及すれば、私たちの生活空間や移動の概念は大きく変わることでしょう。今後どのような世界を見せてくれるのか期待が膨らみます。
Writer: くるまのニュース編集部
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