「次期コペン」は“縦置きFR”か!? オールダイハツ製の実験車にみた本気とは
東京オートサロン2026で公開されたダイハツの「FRコペン」実験車が、凄まじい進化を遂げていました。エンジン縦置きのフロントミドシップ化に加え、リアサスの独立懸架化など、中身はまさにフルモデルチェンジ級。開発担当者が語る、オールダイハツで挑む次期型への“本気”の中身を深掘りします。
ジャパンモビリティショー2025(以下JMS)で世界初公開されたダイハツ「K-OPEN」ですが、デザインコンセプトと共に展示されたのが、現行コペンにFRユニットを搭載した走行実験車です。
すでにテストも進められており、ダイハツ・マスタードライバーに就任したモリゾウこと豊田章男氏による評価も行なわれています。
あれから約2か月、東京オートサロン2026のダイハツブースにも走行実験車が展示されていましたが、何とフルモデルチェンジ並みに進化していました。
そこで開発を担当する相原泰祐氏(ダイハツの走りを鍛えるためにWRC/全日本ラリーも参戦するドライバーでもある)に話を聞きました。
―― JMSに展示されていたモデルと比べるとFRレイアウト以外の基本素性が全然違います。まさに開発中のフルモデルチェンジ!
相原:本当はクルマとしてお見せしたかったのですが、時間的に間に合わず…。それならば「メカニズムをシッカリ見てもらおう」と変更部が解りやすい展示にしました。
―― 製作はいつ頃からですか?
相原:JMSが終わってからですので約2か月です。
前の走行実験車は我々が手弁当で製作していましたが、今回はオールダイハツで進めています。
具体的には技術部を中心に試作のメンバー(ボデー、エンジン、シャシーなど)が仲間になり一緒に製作を行ないました。
その証の1つがサイドに張られた「試作部」のステッカーです。今後はこのようなステッカーが増えていきます。
―― つまり「会社全体のプロジェクトで進める流れになった」と?
相原:そう理解していただいていいです。

―― エンジンルームを見ると、エンジンの搭載位置がより後ろになりました。横から見ると車軸よりも内側…つまりフロントミドシップになっています。
相原:その実現のためにフロントタイヤを55mm前に移動しています。
現状は現行モデルをベースに改造しているため全長は軽規格をオーバー(+130mm)していますが、量産時にはしっかかり軽規格に納めます。
―― そんなエンジンですが、JMSのモデルと比べると角度が立ったような?
相原:以前のモデルは67度(ハイゼットと同じ)でしたが、今回は40度まで起こしました。
―― その理由は?
相原:整備性ですね。以前のモデルはプラグ交換の際にエンジンを降ろす必要がありました。
更にチューニング時にタービン交換も難しいです。
我々は作りたいのは「素のままに走ることができる」、「気持ちの良い走りで笑顔になる」、そして「その笑顔が長続きする」ですので、維持費はできるだけ抑えたいよね…と言う考えを具体化させました。
―― ただ、エンジンを起こすと重心は高くなってしまいますよね。
相原:エンジンが起きた事で生まれた空間に触媒をレイアウト(以前はエンジンの下)することで、搭載位置自体を下げています。
―― 知恵を働かした…と言うわけですね。ちなみにフロントタイヤが55mm前に移動した事で、ドライビングポジションにも余裕が出ていませんか?
相原:さすが鋭いですね。やはり安心安全で大事なのはドライビングポジションです。
遠くまで自然に見える、センターにブレーキペダルがある、そしてフットレストで踏ん張れる、そんな基本をしっかりと詰めていくようなパッケージを目指しています。
―― ただ、現状のポジションだとインパネ(現行コペン用)が高く感じますね?
相原:そこも鋭いですね。エンジン搭載位置が下がるとボンネットは低くできます。
そうなるとインパネも下げることができます。インパネが下がると視界は良くなります…と言うわけです。

―― 驚きはリアサスペンションでトーションビームからストラットに変更されています。ダイハツ車でリア独立式サスペンションは4代目シャレード(1993~2000年)以来ですか?
相原:そうですね。実はコペンのフロントをごっそりリアに持ってきました。
ただし、アーム類は新設計です。更にブレーキもリアディスクを奢りました。
―― この辺りの考えは?
相原:これも安心安全のためでトラクションをしっかり掛かる…と言う所ですね。
もちろんストロークの自由度も増えますが、あればあるほどいいわけではないので、ラリーをはじめとしたモータースポーツの現場で走らせながら考えていきたいと思っています。
―― ちなみにアーム類は何を参考に?
相原:実はラリージャパンを走ったコペンのリアサスと同じ考えです。
これは技術部のメンバーが設計してくれたモノですが、実際のラリーでは見事に壊れました。
その時は「クソーッ!」だったと思いますが、自分が一から設計したアームが壊れて、またカイゼンできるってなかなかできない経験ですので、もっと良くなっていると思います。
―― まさに「壊しては直し」ですね。
相原:そもそも、「このアームで行こう」と決めたのは私ですし、ドライバーでありエンジニアなので「こういう挙動が出たらこうしよう」と話をしながら、今も一緒に進めています。
―― 性能面では良いことばかりですが、軽自動車はお値段との兼ね合いは気になる所です。
相原:そこはおっしゃる通りで、どこを専用設計にするか、どこを流用するか…をシッカリ見極める必要はあると思っています。
―― ちなみにストラットだと構造上リアのラゲッジに出っ張りが出てしまいます。となると、コペンの特徴の1つであるオープントップの採用が難しそうな気も。
相原:従来の考えだったら「そうですね」ですが、今回パッケージを大きく変えます。
先ほどもお話しましたが、エンジン搭載位置が下がるとボンネットは低くできます。
その結果、Aピラーは空力のためにより寝かせることができるのでルーフの面積は小さくできる。そうすれば、あの隙間にランドセルのように入らないかなと。
―― つまり、機能最適ではなくクルマ全体最適で開発をしていこうと言う事ですね。
相原:だから、オールダイハツでやる事が大事なのです。
ちなみに閉めた時のルーフ形状は今のままである必要はないので、「せっかくFRにするので空力重視な形状を考えませんか?」と言う会話を各部署としながら進めています。
―― 聞けば聞くほど “ダイハツメイ”の具体化と言った感じですが、個人的には歴代コペンのユーザー層の事も考えると“熱血”になり過ぎない絶妙なバランスを期待します。
相原:我々の役目はスポーツの“裾野”を広げる事ですので、そこはお任せください。
※ ※ ※

現行コペンは2026年8月で生産終了します。
恐らく一旦その歴史は途絶えますが、これからも解るように次期モデルは確実に存在します。
恐らく、この次期開発車両はモータースポーツシーンにも出没するはずなので、筆者もその動向を追いかけたいと思っています。
元気でちょっと大人気ない“新”ダイハツフラッグシップ、期待して待ちましょう。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

















