すべては安全のために! トヨタとホンダが考える自動運転技術普及への道とは【PR】
自動車メーカー各社が押し進める自動運転技術ですが、これは乗用車だけではなく、公共交通が脆弱な地方の人々の移動や、人手不足に悩む物流業界をサポートするシステムとしても期待されています。今回は、そんな自動運転技術に新たな1ページを刻んだ日本の2社にフォーカスを当てて解説していきます。
世界に先駆けて実現したホンダのレベル3とトヨタの先進技術を解説
先頃発表されたトヨタとホンダの先進安全技術とは、どんな技術だったのかをここでわかりやすく総括したいと思います。
自動運転に関わる技術は、両メーカーとも長い時間をかけて研究開発してきた成果といえます。しかし、両社が目指す「事故ゼロ」という山の頂上は同じかもしれませんが、その登山道は異なっていることがわかりました。
トヨタは着実に普及させるシナリオを描き、一方のホンダは技術チャレンジという一念に執着しました。私は日本を代表するこの二大メーカーがそれぞれ異なる道を選んだことは、日本の自動車産業にとって素晴らしい選択だったのではと考えています。
自動運転の定義ではトヨタはレベル2、ホンダはレベル3という違いはありますが、実際はそんな単純なことではありません。なので、そこをわかりやすく説明したいと思います。
「誰でも移動の自由」を。自動運転技術はどのように実用化していくのか
「自動運転の大義は?」と聞かれると、多くのメーカーは「交通事故削減と渋滞緩和」と答えると思いますが、筆者(清水和夫)が関わっているSIP(戦略的イノベーション創造プログラムの略)の第1期では10の課題が選定されており、自動運転はそのひとつのプロジェクトであり、「誰でも移動の自由」というスローガンを打ち立てています。
つまり、自動運転は乗用車だけでなく、公共交通が脆弱な地方の人々の移動を確保、あるいは人手不足に悩む物流車をサポートするシステムとしても期待されているのです。小さいもので言えば地域限定で移動するマイクロモビリティから乗用車、そして大きいものでは大型トラックやバスなども自動化することで、社会を大きく変えることができます。
自動運転を実用化するには、技術革新と法制度(保安基準と道交法)の改正が必要ですが、警察庁は道交法改正に向けて熱心に規制緩和をおこないました。
技術基準に関しては2018年に国土交通省がガイドラインを示したことで、メーカーも迷うことなく技術開発に集中できました。日本の法制度は国際法より8カ月先行して正式に施行されたことで、製品化も可能になったのです。
チャレンジャーのホンダ、普及型のトヨタ。それぞれ独自の道を歩み出した
自動車メーカーと議論しながら、SIPでは協調領域を切り出し、オールジャパン体制で様々な課題に取り組んでいました。中でもコア技術となる高精度3D地図(ダイナミックマップ)に関しては民間組織を立ち上げ、他国よりも早期に高精度な地図データを開発し、日本の高速道路約3万kmの地図データをメーカーに提供できるようになりました。
ところで、自動運転では自車の位置を正確に推定することが非常に大切です。というのも山岳路やトンネルが多い日本ではGPSはあくまでもサポート役だから。このダイナミックマップは日産がいち早く採用し、2018年に高速走行でのハンズオフが可能となるレベル2の高度運転支援「プロパイロット」を市販しました。
他方、ホンダは技術チャレンジの証として、ダイナミックマップを搭載した世界初のレベル3を開発し、2020年度に間に合うように開発を進めていました。
一方、トヨタはレベル2でいくべきか、あるいはレベル3にするのか議論していましたが、コストなどを考慮した結果、今回のアドバンスドライブはダイナミックマップを搭載した高度な運転支援を提供するモデルとして実用化することになりました。チャレンジャーなホンダ、普及型のトヨタ。それぞれ独自の道を歩んでいるのです。
自動運転技術の普及に向けた両社のアプローチ方法の違い
ホンダは2020年11月11日に型式認定を受けて自動運転レベル3を実現しました。ドイツのメルセデス・ベンツも2021年夏頃にドイツ国内でレベル3のクルマを市販する計画がありますが、今のところ正式にレベル3を発表しているのはホンダとメルセデス・ベンツだけです。
レベル3は走行条件から外れるとシステムからドライバーに運転交代が要請されますが、その引き継ぎがうまくいくかどうか、デジタルで判断するシステムとアナログの人間とのやり取りは難しく、システムから運転交代を要請されても気が付かない人、悪意をもって無視する人など、いろいろなパターンが考えられます。
そこでホンダはあえてレベル3の渋滞支援機能(ドライバーはTVを見ることも可能)を、時速30km/h以下で作動させた後から時速50km/hまでの間でのみ作動させる、と厳しく設定しています。
センサーにはカメラとミリ波レーダーに加えて数個のライダー(レーザー光を使ったセンサーの一種)を搭載し、周囲の認識技術を高めていますが、当然その分コストも高くなります。
トヨタはコロナの影響もあって、発表が2021年4月にずれ込みましたが、なんとか2020年度に間に合う形でアドバンスドライブを「MIRAI」とレクサス「LS」に搭載しました。
その中身はレベル3ではありませんが、「MIRAI」と「LS」ではライダーをフロントにひとつ採用し、かなり高度な運転支援を可能としています。定義ではレベル2ですが、技術的にはレベル3と同等の冗長性を有しているのです。
日本は安全技術でも世界をリードしていくことが今後の課題となる
20世紀という100年は、紛れもなく自動車が発達した時代です。もはやクルマは自由に移動できる便利な乗り物というだけではありませんし、コロナ禍の今に於いては感染のリスクも避けることができる交通手段です。
ですが、グローバルでは年間で100万人以上の人が交通事故で命を失っているという事実があります。クルマは便利な移動の道具ではありますが、交通事故という副作用を無視することはできません。
多くの自動車メーカーは事故のないモビリティ社会を願っていますが、目の前のクルマをもっと安全にする必要もあるはずです。
そういった意味でホンダの課題は、ハイエンドな技術だけでなく軽自動車にも採用できる技術を開発することです。普及という意味ではトヨタも同じ課題を持っていますが、トヨタはホンダとメルセデス・ベンツに負けないレベル3の技術をいち早く実用化することではないでしょうか。
自動車の安全技術をグローバルの視点で見ても、今や日本がルールメイカーになっています。2021年11月から施行されるAEB(緊急時被害低減ブレーキ)の国際法が施行され、日本では新型車装着義務化となりますが、欧米ではその対応に2年ほど遅れる見込みです。
このようにルールを作れるようになった日本は、安全技術でも世界をリードする必要があるのです。その意味でも、ホンダとトヨタの高度な自動運転技術は今後注目に値するものと考えています。