ホンダ新型「フォルツァ」に乗った! 背筋を伸ばしてスポーティ、これがイマドキ
スポーツバイクのようにフルバンクさせても大丈夫
試乗したのはツインリンク茂木の敷地内と周辺道路。ハイスピードのまま、コーナーをステップが路面を擦るほど車体をフルバンクさせて曲がってみましたが、フロントタイヤの接地感がわかりやすいうえ、車体が挙動を乱すことがないので安心したままコーナーを駆け抜けることができました。
ホンダが用意した試乗エリアには、スラロームや8の字走行のほか、高速走行もできるクローズドコースもあり、運動性能に対する開発陣の大きな自信も感じずにはいられません。実際、ジムカーナのようなタイトターンが続くコースを、目が回りそうになるほど走り込みましたが、微妙なスロットルワークにもエンジンは適確に応えてくれ、右手の操作に従順に過不足のないトルクを発揮してくれます。タイヤのグリップ感もわかりやすく、信じられないほどに小回りが効きました。
もちろん水冷SOHC4バルブエンジンも改良型となっています。最高出力23ps/7500rpmに変更はないものの、最大トルクは2.3kg-m/6000rpm→2.4kg-m/6250rpmと若干向上。大径タコメーターを見ていると、2300rpmでクラッチが繋がり、そのままスムーズに実用域である6000rpmへ。低中速でギクシャクせず、扱いやすさが際立ちます。
そして高速巡航では、優れた空力特性を体感できました。ウインドスクリーンは電動によって、ハンドル左のスイッチ操作で走行中でも140mmという広い可動範囲で上下動させることができるのですが、ハイポジションにすれば走行風の上半身への直撃が抑えられ、快適そのもの。気流が頭上を通過するよう整流され、走行時の風切り音も低減。乗り心地も良いですし、これなら高速道路を使った長距離ツーリングでも疲れにくいでしょう。
Honda セレクタブル トルク コントロール(HSTC)も先進の安全装備です。車輪速センサーが後輪スリップを検出すると、その状況に応じて燃料噴射を制御し、タイヤのグリップを瞬時に回復させる機構ですが、これをホンダがスクーターに採用するのは初めてのこと。欧州に多い石畳の道や、日本でも濡れたアスファルトや道路上のペイントなど滑りやすいシーンで心強い装備となってくれます。
作動した場合は、メーター内のインジケーターが点滅することによって知らせてくれますが、天候に恵まれ路面も乾いていた今回の試乗では、作動する瞬間はありませんでした。きっと雨の日や、橋の繋ぎ目などでアクセルをガバッと開けたときに「付いてて良かった」と思うのでしょう。
時代はもうスポーティ路線…!?
スタイルも従来までのロー&ロング路線ではなく、シャキッとフロントカウルが起きたスポーティ路線へと大きく舵を切っています。
ビッグスクーターブームと呼ばれた頃は、少しヤンチャそうなお兄さんが寝そべるようにして乗る姿も見られましたが、そのスタイルはもう時代遅れかもれしません。高めのシートに背筋を伸ばしてスタイリッシュに乗る新型フォルツァが、イマドキなのです!
【了】
Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。