ヤマハのスーパースポーツバイク「YZF-R1」 MotoGPで培った技術は最初に「YZF-R1」へ
地味でマニアックでも、さらによくするために改良するのがYZF-R1の歴史
――2018年モデルで変わった点を教えてください。
平野PL:最も大きな変更はクイックシフトです。従来はシフトアップの時にのみ機能していましたが、今回からシフトダウンの時もクラッチレバーの操作が必要なくなりました(20km/h・2200rpm以上※の時に使用可能 ※ギアにより若干異なります)。
――ヤマハはこれまでシフトダウン側の採用には慎重だったように思います。それを今回、盛り込むことになったのはどうしてでしょう?
平野PL: YZF-R1は「サーキット最速」というコンセプトを掲げている通り、高い負荷が掛かる走行を前提にしています。電子制御はライダーに負担を掛けず、自然な操作をうながすためのデバイスですから、その領域でも相応の信頼性がなくてはなりません。今回、そこに確信を持てたので採用に踏み切ったというわけです。
――なるほど。確かに街中やワインディングでは機能しても、いざサーキットでアベレージスピードを上げるとギヤ抜けを起こしたり、切り換わらなかったりするクイックシフトは珍しくありません。盛り上がった気分が削がれるだけでなく、信頼性にも関わりますからね。
平野PL:その通りです。そのため、ライダーのシフト操作を検知するセンサーの他、ペダルのゴム形状も見直しました。お菓子の「コロン」って分かります? 2017年モデルまでは、チェンジペダルの先があれと同じような円柱状をしていたのですが、2018年モデルはその先端を少し細くしているんです。これによって操作性が向上しました。かなりマニアック・・・というか地味なポイントですが(笑)、大きな問題がなくてもさらによくなるように改良する。そういう積み重ねがYZF-R1の歴史だと思います。
――変更点は他にもありますか?
平野PL:電子制御サスペンションを装備するYZF-R1Mは、そのインターフェイスを改良しています。減衰力を自動的に、もしくは任意に強くしたり、弱くしたりできる機能は同じですが、これまではサスペンションセッティングをしようにもフロントフォーク側なのか、リアショック側なのか、その中でもリバウンド側の減衰力なのか、コンプレッション側なのか・・・・・・と専門的な知識がないと踏み込みづらかったことは否めません。
そこでもっとシンプルに使えるように改良しました。例えばリバウンドやコンプレッションという言葉ではなく、それらを「ブレーキング(減速)」、「コーナリング(旋回)」、「アクセレーション(加速)」といった走行シーンに置き換えていることです。これによって車両がどういう状態にあり、セッティングするとどうなるのか。それがより分かりやすく、直感的な操作が可能になりました。