自動車の税金と補助金が見直しへ! キーワードは「公平性」 環境性能割を2年間停止し“バランス”検討 「猶予期間」内に議論を進める
自動車の税金と補助金制度が大きな転換期を迎えています。与党税制調査会での議論により、環境性能割の2年間停止と、その「猶予期間」内での抜本的な制度見直しが浮き彫りとなりました。焦点は、燃料課税のないEVとの負担の「公平性」や、複雑な車体課税の一本化です。本記事では、報道にもとづく各方面の発言などを参考に、ジャーナリストの桃田健史氏が現時点の状況を解説します。
EVに別途自動車重量税が設定される? 現時点では“詳細不明”
ここへ来て、やっと自動車の税金と補助金の議論の先行きが見えてきました。
日本の税制の将来を総括する場である与党税制調査会で、与野党と関係各省庁が集中的に議論を進めた成果です。小野寺五典税調会長が記者とのぶら下がり取材などで、議論の概要について触れる段階となっています。
本稿執筆時点では、令和8年度税制改正大綱が公表されていませんが、報道を通じた各方面の発言などを参考として、ユーザー目線で自動車の税金と補助金について考えてみたいと思います。
最初に、自動車の税金と補助金の種類を整理しておきましょう。
税金は、取得時と保有時のそれぞれでかかります。取得時は、実質的な取得税である「環境性能割」と消費税。保有時では、自動車税(軽自動車税)と自動車重量税となります。
こうした自動車本体の取得時と保有時の税金をまとめて「車体課税」と呼びます。
また、保有時(使用時)にはガソリンや軽油を使う場合には、揮発油税、地方揮発油税、軽油引取税などがかかりますが、これを「燃料課税」と呼びます。
補助金については、新車の電動車購入に対する国の「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」のほか、都道府県や市町村で購入補助金を設定している場合があります。
その上で、今回の国の議論全体を俯瞰すると「税金と補助金でのバランス」を取ろうとしていることが分かります。
キーワードは、「公平性」です。

税金については、ガソリンやディーゼル燃料などを使わないEVが燃料課税の対象にならないことや、EVに対する車体課税での優遇措置などと、EVによる社会資本への負担(道路損傷)とのバランスを取ることです。
補助金では、ユーザー目線だけではなく、日米通商交渉におけるアメリカとのバランスという意味合いも感じられます。
では、ここからさらに掘り下げてみましょう。
車体課税については、環境性能割の2年間の停止が前提です。高市早苗首相が自民党総裁選挙の際に掲げた公約でもあります。
ただし、自動車メーカーなどでつくる業界団体の日本自動車工業会(自工会)としては、「環境性能割と消費税は二重課税であり、環境性能割は完全廃止」と強く要望してきましたので、自動車業界としては納得がいかない結果でしょう。
この「2年間」というのがミソで、車体課税の抜本的な見直しに向けた議論をこの期間に完了させることを意味します。
自工会としては、自動車税(軽自動車)と自動車重量税は融合し、そこに環境性能を盛り込んだ「新税(仮称:保有税)」に一本化したいとの考え。直近では、自工会が独自提案した車両重量ベースでの試案が存在し、早ければ2026年度からの実施を目指していました。
しかし、与党税制調査会との協議は難航したため、2026年度からの抜本見直しの議論は事実上の時間切れとなり、さらなる議論のために「2年間の猶予期間」を認めざるを得なかったというのが、筆者の見立てです。
そのため、自動車重量税についてはエコカー減税を今後2年度(2026年度〜2027年度)で段階的に見直し。また、重量の重いEVには別途の自動車重量税が設定される可能性があるとの報道がありますが、現時点でその真偽や具体的な内容は不明です。
一方で、補助金についても一部報道では、EVが増額され、燃料電池車では大幅減額とありますが、現時点で詳細は不明です。
※ ※ ※
このように、国は車体課税の抜本的な見直し策を2年間でまとめる予定だ、というのが現時点で分かっていることです。
つまり、実質的には来年末の令和9年度税制改正大綱で、車体課税の抜本的な見直しについてかなり踏み込んだ形の内容を盛り込む必要があります。
ただし、グローバルで自動車産業が大きな変革期に直面している現状を踏まえると、今後2年間の議論で国、地方自治体、自動車産業界が歩みよるためには様々なハードルがあるかもしれません。
例えば欧州では「2035年に欧州域内で乗用車・小型商用車の新車100%をEVまたは燃料電池車」の基本方針を事実上撤回。また、英国では2028年4月からEVとプラグインハイブリッド車に対する走行距離課税を実施することが決定しています。
社会における自動車のあり方が変わるなか、日本での自動車の税金と補助金についてもさらなる議論が不可欠です。
ユーザーとしても、社会が大きく変わるという現実を私事として捉えることが重要です。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。


























