「EVトラックを販売して終わり」じゃない! 三菱ふそうが挑む「使用済みバッテリーの画期的活用術」とは?
燃やさず、溶かさず、素材に戻す
もちろん、二次利用を終えたバッテリーや、再利用できないほど劣化したバッテリーも存在します。最終的に待っているのはリサイクルですが、ここにも三菱ふそうならではのこだわりがありました。

従来のリサイクル手法では、バッテリーを焼却してレアメタルを取り出すため、多くのエネルギーを消費し、二酸化炭素も排出してしまいます。また、取り出せる素材も限定的でした。
そこで三菱ふそうは、シンガポールのスタートアップ企業であるTrue 2 Materials(トゥルー・ツー・マテリアルズ)と手を組み、同社が持つ「トータルマテリアルリカバリー(TMR)」という技術を活用。ナノレベルの分子技術を活用して、バッテリーから主要素材である正極材や負極材を、高い純度で回収することを可能にしたそうです。
特筆すべきは、回収した素材がそのまま「新しいバッテリーの材料」として使えるレベルにあるという点です。三菱ふそうは、バッテリー製造→トラックでの使用→素材回収→再びバッテリー製造という完全な循環を目指しています。すでに川崎製作所内では、産業スケールへの拡大準備が進められていました。
「売るだけ」から「循環させる」企業へ
今回の取材で明らかになったのは、三菱ふそうが単に「環境に優しいトラック」を売るだけのメーカーではなくなっているということです。
EVトラックを販売してそのバッテリーを管理し、寿命が来たら蓄電池として社会インフラに活用し、最後は素材に戻して次のトラックへ返す。この「Fuso eモビリティソリューションズ」と呼ばれるエコシステムは、他社に対する大きなアドバンテージとなる要素を持っていると言えるでしょう。
物流業界の脱炭素化は待ったなしの課題ですが、車両価格やバッテリーの寿命、処分への不安が、EVトラック導入をためらう要因でもありました。しかし、取材したような「バッテリーの価値を最後まで使い切る仕組み」が確立されれば、巡り巡って車両の残価向上や、トータルコストの低減にもつながります。
川崎から始まった循環型経済(サーキュラーエコノミー)への挑戦は、日本の物流とエネルギーの未来を大きく変えるポテンシャルを秘めているのかもしれません。
Writer: くるまのニュース編集部
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