「暖機運転」は今のクルマに必要ない? 避けるべき冬場の「NG行為」と愛車に優しい“ウォーミングアップ”とは
かつて冬場の常識だった車の「暖機運転」。技術の進化により、多くの車ではその必要性が薄れ、「不要」という見解が主流になっています。では、現代の愛車を寒さから守り、長く快適に乗り続けるにはどうすれば良いのでしょうか。知っておくべき正しい「車の温め方」と、運転時の新しい習慣について紹介します。
愛車に負担をかけないよう、必要に応じて「暖機走行」を!
かつてはクルマに乗る前の習慣として広く行われていた「暖機運転」。しかし、現代のクルマではその必要性が薄れ、「不要」とまで言われるようになりました。
これは、燃料噴射装置の進化やエンジンの高精度化、電動パーツの増加など、技術革新によるものです。一方で、極度の低温環境や久しぶりの運転、そして走行を始める際には、車に負担をかけないための「ひと工夫」が推奨されています。
愛車を長く大切にするために、今知っておきたいクルマの「正しい温め方」について解説します。

クルマの運転を始める前に、エンジンを始動し、しばらく停車した状態で機械を温める行為を「暖機運転」と呼びます。
これは、かつてのクルマにおいて、冷えた状態では金属部品の動きが滑らかでなく、本来の性能を発揮しにくいという理由から、広く行われていた習慣です。
特に、古いクルマに採用されていた燃料噴射装置である「キャブレター」は、冷間時に燃料の噴射量が安定しにくいという特性がありました。
過去に取材した自動車整備士A氏は、「キャブ車(キャブレター車)では、暖機運転によって燃調(燃料噴射量)が安定し、排気ガスも改善されてクルマに優しい。そのため、ほとんどの人が習慣的に行っていました」と語ります。
しかし、現代のクルマでは、この停車状態での暖機運転はほとんど推奨されていません。
暖機運転が不要となった最大の理由として、燃料噴射装置がキャブレターから電子制御式の「インジェクション」へ移行したことが挙げられます。
整備士A氏は、「今のクルマは電子制御のインジェクションを採用しているため、冷えた状態からでも安定した作動が可能です」と説明します。
また、エンジンの組み付け精度が向上したことや、高性能なエンジンオイルの普及により、極端に冷えた状態でも十分な潤滑性能が確保されるようになった点も大きな要因です。
さらに、パワーステアリングのポンプや発電機、エアコンのコンプレッサーといった補機類が電動化され、エンジンの熱に依存せず性能を発揮できるようになったことも、「暖機不要」の流れを後押ししています。
加えて、近年は環境問題や騒音防止の観点から、長時間のアイドリングを避けるよう自治体の条例などで呼びかけられていることも、暖機運転が推奨されない理由のひとつとなっています。
●極寒地や久しぶりの運転では「短時間の暖機」がおすすめ
一般的に暖機運転は不要とされていますが、一部の条件下では短時間の暖機が推奨されるケースもあります。
特に、氷点下10度を下回るような極寒冷地では、エンジン内部の部品や各種オイル類が過剰に冷却されていることが予想されます。
前出の整備士A氏は、「極寒冷地では、パーツやオイルが非常に低温になっているため、できる範囲で暖機運転をしたほうが望ましい」と述べています。
トヨタの公式サイトでも、「極端な低温時や、しばらくおクルマをご使用されなかった場合は、数十秒間の暖機運転をおこない、ゆっくり発進することをおすすめいたします」と案内されています。
また別で過去に取材した自動車整備士のB氏は、長期間クルマを動かしていない場合についても触れており、「1週間以上ぶりにエンジンを稼働させる場合、オイルが下に下がってしまっているため、ゆっくりとオイルをほぐし、金属部品が潤滑に動かせる状態になるよう意識しながら暖機運転をしたほうが良い」と指摘。
ハイブリッド車についても、モーターやエンジンにはそれぞれ適切な作動温度があるため、「できれば短時間でも暖機をしたほうが良い」という見解を示しています。
現代のクルマで最も推奨されているのは、停車しての暖機運転よりも「暖機走行」です。これは、走行しながらクルマ全体を温めていく方法で、人間でいう「準備運動」にあたります。
整備士B氏は、「エンジン始動直後から動かすにしても、『急』のつく操作をしないことが大切です。いきなりアクセルを踏み込む、暖まる前に急な加減速を繰り返すのは避けるべき」と強調します。
エンジンの水温計が安定するまでは、エンジン回転数を上げすぎず、ステアリングやブレーキも優しく操作することで、エンジンやトランスミッション、サスペンションなど各部に負担をかけずに済みます。
整備士A氏も、「高速道路のインターが近くにあっても、クルマが温まり切らないうちにアクセルをベタ踏みするといったことは、ぜひとも避けていただきたい」と、急な負荷をかける走行をしないことの重要性を説いています。
周囲の気温にもよりますが、凍結がない場合は5分程度、凍結するほどの寒冷地であれば、短時間の暖機と合わせて合計10分程度、「おとなしく走ること」が、愛車を長持ちさせる秘訣と言えるでしょう。
Writer: くるまのニュース編集部
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