横断歩道で歩行者が「お先にどうぞ」 行ってもOK?それとも違反? パトカーが「譲られて通過」する動画が話題に 法律にはどうあるのか
基本的に横断歩道では歩行者の通行が優先されますが、SNS上ではパトカーが歩行者に道を譲られ、そのまま進行する動画が話題になっています。では横断歩道で歩行者に道を譲られた場合、クルマが先に行っても良いのでしょうか。
あくまで横断歩道は歩行者優先! でも…
クルマを運転中、横断歩道で歩行者に道を譲られたらどうしますか。SNS上では今、パトカーが歩行者に道を譲られ、そのまま進行する動画が話題となっています。
自分が同じ状況になった場合、一体どうしたら良いのでしょうか。

日々、全国各地で交通違反の取り締まりがおこなわれています。警察庁の統計によると2024年中の交通取り締まりの件数は514万3671件でした。1日あたりに換算すると1万4000件以上もの違反が検挙されていることになります。
検挙件数は多い順に「一時不停止」「最高速度違反」「放置違反金納付命令件数(駐車違反関係)」「通行禁止違反」「信号無視」「横断歩行者等妨害等違反」などと続きます。
特に横断歩行者等妨害等違反に関しては、歩行者が横断歩道を渡ろうとしているかどうかの判断が難しい場合があり、車両側がどのような対応をとるべきか迷うこともあります。
この交通違反をめぐってはSNS上で、一般の方のドライブレコーダーに撮影されたとあるパトカーの動画が投稿・拡散され、話題を呼んでいます。
その動画は、パトカーが街中の横断歩道のある交差点を左折する様子を映したもので、パトカーが左折しようとした際に、歩行者がやって来ます。
パトカーは歩行者に気づいて横断歩道の手前で一時停止しますが、歩行者は立ち止まり、2回ほど腕を振ってパトカーに道を譲る素振りをみせます。
そこでパトカーは歩行者のジェスチャーに従って左折、歩行者はパトカーが曲がった後横断歩道を渡っていく様子が撮影されていました。
この動画に対しては「これって歩行者妨害の違反に当たるのでは?」「歩行者の人も譲ってくれるのありがたいけど、それ鵜呑みにしたら切符切られちゃうことあるから面倒くさいルールですよね」など、歩行者に道を譲られてクルマが先に進行する行為が違反ではないかとの指摘が上がっています。
その一方で「歩行者としては車両に止まられるより、さっさと行ってくれた方が安心して渡れる」「急ぐの面倒くさいからクルマははやく行ってほしい」「(動画の)歩行者が渡るように2回ジェスチャーをしているのがはっきりとわかります。私もよくそうします。クルマが待っていない方が安全だと思います」など、歩行者側からの意見も多く寄せられました。
そもそも横断歩道における歩行者の優先については、道路交通法第38条第1項で次のように規定されています。
「車両等は、横断歩道又は自転車横断帯に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前で停止することができるような速度で進行しなければならない」
「この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない」(条文を一部抜粋)
上記条文にある「横断しようとする歩行者等」とは、車両がそのまま進行すれば、その横断を妨げることになる横断歩行者や自転車のことを指します。
簡単に言うと横断歩道は「歩行者優先」であり、横断歩道を渡ろうとしている・渡っている最中の歩行者がいれば、車両は横断歩道の直前で一時停止をして、通行を妨げないよう配慮しなければなりません。
一方で、クルマに道を譲ってくれた歩行者が上記条文の「横断しようとする歩行者等」に該当するのか、またクルマが先に行った場合に「歩行者の通行を妨げた」といえるのかという点については、弁護士をはじめとする有識者の間でも意見が分かれています。
つまり歩行者から明確に道を譲られ、それを受けてクルマが先に進行した場合には、横断歩行者等妨害等違反に当たらないと考える有識者もいます。
実際のところ、2022年に東京都内の横断歩道で歩行者に道を譲られ、警察官に横断歩行者等妨害等違反で切符を切られたという事案では、当事者が弁護士とともに抗議した結果、後日「違反が成立しない」として違反が取り消されるに至りました。
また一部の都道府県警察では、「車両が歩行者に道を譲られて進行した場合には切符を切らない」という運用をしていることも明らかになっています。
ただし、あくまで横断歩道は歩行者優先です。加えて、歩行者に道を譲られた場合に横断歩行者等妨害等違反に該当するかという点については未だ判例がなく、歩行者が道を譲ったときの状況次第では違反とみなされるおそれもあることから、その点は留意すべきといえるでしょう。
※ ※ ※
横断歩道付近で歩行者に道を譲られ、クルマが先に進行した場合、横断歩行者妨害で切符を切られるかどうかは現在のところ、ケースバイケースといえます。
もしそのような状況になった際には、横断歩道は歩行者優先ということを念頭に置き、たとえ歩行者に道を譲られてもクルマ側は停止し、先に渡るよう歩行者にうながす方がベターでしょう。
Writer: くるまのニュース編集部
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