ヤマハ「YZ」、スマホアプリでエンジンパワーも即座にチューニング! もうそんな時代です
ヤマハの新型「YZ250F/YZ450F」は、スマートフォンでのセッティングも可能で、モトクロス競技専用モデルながらセルスターターも装備し発表されました。開発者の方達に開発の経緯等をお聞きしました。
競技用車両にヤマハの未来を垣間見た
ヤマハのモトクロス競技用市販車が「YZシリーズ」です。最新2019年モデルでは「YZ250F」がフルモデルチェンジされ、オフロードバイクファンらから熱いまなざしを向けられています。
注目すべきポイントは色々とありますが、まず面白いのは、スマートフォンできめ細かいエンジンセッティングをユーザー自身でできることです。
従来は専用の端末「パワーチューナー」を車体にケーブルで繋ぎ、エンジンの出力特性をセッティングしてきましたが、新型ではスマートフォンのアプリケーションとして「パワーチューナー」を開発し、ユーザーのスマートフォンのWi-Fi機能を通じてのセッティングを実現しています。
キャブレター時代はジェット類やクリップ段数を手作業でいちいち変えていましたから、それを考えるとものすごくスピーディで簡単です。
燃料噴射量や点火時期のマップを、スロットル開度を縦軸に、エンジン回転数を横軸にした3Dグラフで表示することができ、拡大したり360度ビューで見ながらリアルタイムで調整でき、セッティングデータを他の人と共有し合うことも可能。もちろんアプリケーションは、iPhone版とアンドロイド版が用意され、無料でダウンロードできます。バイクのエンジンも、スマートフォンでチューニングできる時代がもう来たのです。
そして新型「YZ250F」の大きなトピックスは、ついにセルスターターを標準装備したことです。
「えっ、いままでなかったの…!?」って思う人もいるかもしれませんが、そうなのです、軽量なほど有利な競技用モトクロスマシンでは、これまで重量増を気にしてセルスターターはほとんどのメーカーが採用していませんでした。
ヤマハでは昨夏発売した「YZ450F」で初搭載し、今年は「YZ250F」もそれに続いた形になりましたが、一体どういうことなのでしょうか。
開発プロジェクトリーダーの櫻井太輔さんによると「バッテリーが進化し、小型軽量化できたことが大きい」とのこと。つまり技術進歩によって重量増はほんの僅かとなり、もうセルスターターを備えるメリットの方が多くあるというわけです。
モトクロスの場合、転倒などのトラブルでレース中にエンジンが停まってしまうことが珍しくありませんが、キックペダルを踏み込んでのエンジン再スタートはライダーの体力を消耗させ、そもそも不確実でキック一発で再スタートできるとは限りません。
セルスターター搭載なら、ボタンひとつ押せばエンジンが始動し、素早いリスタートを手こずらずに、体力を失うこともなくできるのです。
エンジン設計プロジェクトチーフの鈴木祐児さんは「モーターはエンジン後方、車両の中央に配置され、マスの集中に貢献しますし、リチウムイオンバッテリーも小型で軽量設計です」と、教えてくれました。