ヤマハの「“4人乗り”トラック」がスゴい! 全長4.5m級の「ちょうどいいサイズ」&斬新「1+2+1」シート採用! 美しすぎる「クロスハブ」とは

ヤマハがかつて公開した「クロスハブ コンセプト」は、バイクメーカーならではのこだわりが詰まったユニークなモデルでした。今も市販化を望む声が絶えないそのクルマは、どのような特徴を持っていたのでしょうか。

ヤマハの「本気」が詰まった…トラック!?

 世界的なバイクメーカーであるヤマハは、かつて本気で四輪車市場への参入を目指していました。

 その挑戦の歴史の中で、2013年の「モティフ(MOTIV)」、2015年の「スポーツライドコンセプト(SPORTS RIDE CONCEPT)」に続き、第3弾として生み出されたモデルがあります。

 それが、2017年の第45回東京モーターショー2017で世界初公開された「クロスハブ コンセプト(CROSS HUB CONCEPT/以下、クロスハブ)」です。

ヤマハのトラック!
ヤマハのトラック!

 モデル名「CROSS HUB」には、さまざまなライフスタイルと遊びをつなぐ拠点(ハブ)になるという意味が込められています。

 コンセプトは「ヤマハの遊びをリードする」。モーターサイクルやマリンスポーツといったアクティビティと、都市生活(オン)とアウトドア(オフ)をシームレスにつなぐ、アクティブなパートナーとして提案されました。

 エクステリアは、ひと目で分かる塊感のあるタフなスタイリングが特徴です。フロントマスクはヤマハのスポーツモデルに通じる精悍な表情を持ち、力強く隆起したフェンダー周りが高い走破性を予感させます。

 ボディカラーには、自然の中に溶け込みつつも存在感を放つ鮮やかなブルーが採用されていました。

 ボディサイズは、全長4490mm×全幅1960mm×全高1750mm。全長はトヨタ「カローラ」などのCセグメント並みとコンパクトに抑えられていますが、全幅は「ランドクルーザー」に匹敵するほどワイドな設定です。

 この“短くて幅広い”独特のディメンションにより、都市部での取り回しの良さを確保しつつ、高い積載性と居住性を両立させました。

 クロスハブの最大の特徴といえるのが、キャビン内の座席配置に採用された革新的なダイヤモンドレイアウトです。

 一般的な2列シートではなく、4つの座席を上から見て菱形(ダイヤモンド状)に配置する独創的なアイデアで、運転席は車体の中央前方に置くセンタードライバーシートを採用。残りの3席は、後方から運転席を取り囲むように配置されています。

 車体中央に座ってステアリングを握る感覚は、まるでマクラーレン「F1」のようなスーパーカーを彷彿とさせ、ドライバーに特別な高揚感を与えます。

 この特殊なレイアウトは、積載性の向上にも直結します。助手席を運転席より後方にずらして配置することで、キャビン左前にスペースが生まれ、車体外側が凹んだ形状になります。

 この凹みこそが、ピックアップトラックとしての機能性を飛躍的に高める鍵です。

 荷台はヤマハのモーターサイクルを最大2台搭載できるよう設計され、キャビンの凹みを活用することで、全長を抑えたボディでもバイクを斜めにせず真っすぐ積載できます。積載効率を最優先し、遊びの道具を知り尽くしたヤマハならではの設計思想といえるでしょう。

 なお、パワートレインや車体構造の詳細なスペックは公表されていません。前作のモティフやスポーツライドコンセプトでは、ゴードン・マレー設計のアイストリーム技術が採用されていましたが、クロスハブへの採用については明らかにされていません。

 発表当時、その斬新なデザインと遊び心あふれるパッケージングは、来場者やメディアから高い評価を受けました。しかし残念ながら、クロスハブがそのまま市販化されることはありませんでした。

 2018年12月、ヤマハは新中期経営計画の発表において量産化に向けた開発の凍結を明言。競争が激しい四輪車市場で独自のクルマを量産し利益を確保するハードルの高さが理由とされています。

 デビューから数年が経過した現在でも、SNS上では「デザインが最高にカッコいい」「これが出たら絶対買うのに」といった市販化を望む声が後を絶ちません。

 ヤマハの四輪への挑戦は凍結されましたが、現在もEV向けモーターユニットの供給などを通じて自動車業界に関わり続けています。

 また、ジャパンモビリティショー2023では新型の3輪モビリティ「トライセラ(TRICERA)」を発表するなど、ユニークな乗り物への探求心は健在です。

 クロスハブで示された遊び心と技術のDNAは、形を変えて、今もヤマハのモノづくりの中に生き続けています。

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Writer: 佐藤 亨

自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。

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