“8輪”の「スポーツセダン」がスゴイ! “640馬力超え”の「“超”高性能モデル」! ながーーいボディで“最高時速370キロ”実現の「エリーカ」とは
2025年10月29日にレクサスが新時代の「LS」として6輪のミニバンを発表したことが話題となりましたが、今から20年以上前に“8輪車”が発表されていたのでした。それが、「エリーカ」なるモデルです。どのようなクルマなのでしょうか。
8輪の爆速セダン?
ジャパンモビリティショー2025ではレクサスが新時代の「LS」として6輪のミニバンを発表したことが話題となりましたが、今から20年以上前の2004年に“8輪車”が発表されていたのでした。それが、「エリーカ」なるモデルです。

このエリーカは「Electric Lithium-Ion Battery Car(エレクトリック リチウムイオンバッテリーカー)」から採られた車名となっており、そこからも分かるようにBEVとなっていました。
ボディサイズは、全長5100mm×全幅1900mm×全高1365mmと大型セダン並で、乗車定員は5名、重量は2400kgとなっていました。
開発の中心となったのは慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの清水浩教授(当時)および吉田博一教授(当時)で、そこに38の企業が携わって生まれたエリーカの最大の特徴は、インホイールモーターを採用していたという点です。
インホイールモーターとはその名の通り、車輪のハブ内部にモーターを備えるレイアウトとなっており、車輪を直接駆動することで機械損失を抑えることができるというのが最大の美点となっていました。
一方で車輪の内部に組み込むという性質上、大型にして高出力なものにすることが難しいという欠点もあり、その欠点を補うためにエリーカは8輪車となっていたというワケなのです。
エリーカに備わるインホイールモーターは1輪あたりの出力は60kWでしたが、それが8輪あるということで最高出力は480kW(約640馬力)という高出力を実現し、0-100マイル(約160km/h)加速は7.0秒、最高速度は370km/hという驚異的なスペックを備えていたのでした。
またインホイールモーターは、トランスミッションやプロペラシャフト、ドライブシャフトといった動力伝達部品が不要であることから車両レイアウトを自由に変更することができ、室内空間の拡大も図れるというメリットも備えている点も特徴だったのです。
そんな特徴を持ったエリーカは実際にナンバーを取得して公道走行が可能な状態となっていただけでなく、市販化も想定されており、当時は3000万円程度の価格で200台ほどの販売を計画していました。
しかしインホイールモーターは画期的である反面、既存の車両から部品を流用することがほぼ不可能であり、足回りやブレーキなども専用に設計開発が必要となったことでコスト面の問題があり、市販モデルとして認証をとるための費用も莫大なものとなってしまったこともあって量産化の計画はストップしてしまったのです。
ただエリーカの生みの親である清水氏は株式会社e-Gleを立ち上げて現在もインホイールモーターの研究開発を続けており、今は第5世代のインホイールモーターシステムを開発中だといいます。
また、同吉田氏も、当時エリーカに搭載するリチウムイオン電池が2000万円にのぼり、コスト面の問題が表面化したことから、さらなるEVの普及と環境問題の解決のためには、車載用だけでなく、大型リチウムイオン電池の用途を広げること(標準化)が必要だと考え、その後産学連携プロジェクト「L2(エルスクエア)プロジェクト」を発足。プロジェクトでの技術をもとにリチウムイオン電池の量産化を目指すため、車体・システム開発に携わった河上清源氏とともにエリーパワーを起業しています。
近い将来また、エリーカの流れを汲んだモデルが登場する可能性もあるかもしれません。
Writer: 小鮒康一
1979年5月22日生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後になりゆきでフリーランスライターに転向という異色の経歴の持ち主。中古車販売店に勤務していた経験も活かし、国産旧車を中心にマニアックな視点での記事を得意とする。現行車へのチェックも欠かさず活動中。























