スズキ次期「マイティボーイ」みたい!? “660ccエンジン採用”の「“4人乗り”軽トラ」! 全長3.4m級の“小さなオープンボディ”がイイ「マイティデッキ」とは

2015年に発表され、「マイティボーイの再来」として注目を集めたスズキの「マイティデッキ」。自動昇降デッキなど革新的な装備を満載していたものの、市販化には至っていません。はたして、どのようなクルマだったのでしょうか。

衝撃デビューから10年!「現代版マー坊」マイティデッキとは

 2025年10月30日から「ジャパンモビリティショー2025」が開催され、各メーカーから発表されたコンセプトカーに注目が集まっています。

 過去を振り返ると、モーターショーで大きな反響を呼びながらも、市販化には至らなかった興味深いコンセプトカーが数多く存在します。

 2015年10月に開催された「第44回東京モーターショー2015」のスズキブースも、異様な熱気に包まれていました。その中心にあったのが、軽自動車規格のピックアップスタイルを持つコンセプトカー「MIGHTY DECK(マイティデッキ)」です。

復活のマイティボーイ!?
復活のマイティボーイ!?

 マイティデッキは発表直後からメディアや来場者の注目を集めました。とくに、1983年に発売された個性的な軽ピックアップ「マイティボーイ」(愛称:マー坊)を強く想起させた点が話題に。

 会場やSNSでは「マイティボーイの再来」「現代版マイティボーイ」といった言葉が駆け巡り、多くの自動車ファンの心をとらえました。

 また、「これ今からでも発売してほしい」「市販されたら買うのでスズキはがんばって!」といった、市販化を強く望む具体的な声も多数寄せられたのです。

 はたして、マイティデッキはどのようなクルマとして開発されたのでしょうか。

 公式コンセプトは「アーバンアウトドア」に集約されます。これは「都会と自然」「ウチとソト」「オンとオフ」といった相反するシーンを、1台で自由に行き来するという新しいライフスタイルの提案でした。

 平日は都会の移動手段としてスタイリッシュに乗りこなし、週末はそのまま自然の中でのレジャーへ出かける、そんな現代的な価値観を反映したものです。

 このコンセプトの背景には、スズキの成功体験がありました。2014年発売の「ハスラー」が「遊べる軽」という新市場を確立し大ヒット。マイティデッキは、この「遊び」の方向性を、より趣味性の高い「ピックアップ」という形で先鋭化させたモデルでした。

 そしてもちろん、その精神的支柱は、1980年代に「ファッショナブルに乗りこなせるクルマ」として若者文化を象徴した「マイティボーイ」にあります。

 マイティデッキの革新性は細部にまで宿っていました。エクステリアは、全体に丸みを帯びた親しみやすいフォルムを基調としながら、ヘッドライトにはシャープな三角形のデザインを採用。

 この「レトロ」と「未来感」の融合が、懐かしさと新しさを同居させる独特の表情を生み出していました。

 ボディサイズは全長3395mm×全幅1475mm×全高1540mmと、軽自動車規格に収まります。内外装にはウッド調パネルが大胆にあしらわれ、「アーバンアウトドア」のコンセプトを視覚的に表現していました。

 インテリアは、フロントガラス下部に帯状の大型インフォメーションパネルを配置。ナビ情報や天候、SNS連携によるメッセージ表示まで想定するなど、先進的なコックピットが提案されました。

 パワートレインは、660cc直列3気筒ターボエンジンに、スズキ独自の簡易型ハイブリッド「S-エネチャージ」を組み合わせ、トランスミッションは5AGS(オートギアシフト)、駆動方式は2WDという、現実的な構成でした。

 最大の特徴が車体後部の機能です。ルーフには開放感あふれる「キャンバストップ」を採用。さらにウッド調の荷台は「自動昇降式オープンデッキ」となっていました。

 このデッキは、下げた状態ではサーフボードなどを気軽に積めるオープンデッキとして機能し、デッキを自動で上げると、その下に施錠可能なクローズドタイプの荷室が出現する仕組みです。

 さらに、この荷室スペースに座席をセットすれば、基本の2シーターから4人乗車が可能な「2+2シーター」としても活用できる、そんな革新的パッケージングを備えていたのです。

 しかし、これほどまでに具体的で、多くのファンから熱望されたマイティデッキが、ショールームに並ぶことはありませんでした。

 発表から約10年が経過した現在に至るまで市販化はされておらず、スズキから見送った理由に関する公式発表もありません。

 現実的なパワートレインを搭載していたため、その市販化が実現しなかったことは、多くのファンにとって大きな謎として残りました。

 もっとも、公式な言及がなくとも理由は推察できます。立ちはだかった壁は主に次の3つが考えられます。

 第一の壁は「コスト」です。最大の特徴である「自動昇降式オープンデッキ」や「キャンバストップ」は、昇降用モーターや車体補強、高度な防水処理など多くの専用部品を要する複雑な機構で、軽自動車の価格帯で実現するには製造コストが膨らみすぎた可能性があります。

 第二の壁は「市場規模」。趣味性の高い軽ピックアップは熱狂的ファンを生む一方、ビジネスとして成立するだけの安定した販売台数を見込めたかは未知数だったと考えられます。

 第三の壁は「社内戦略」。同年のショーではグローバル戦略車「イグニス」も発表されており、限られた開発リソースを国内向けニッチなマイティデッキと、世界規模で販売が見込めるイグニスで比較した結果、後者が優先された可能性もあるでしょう。

 現実的なパワートレインを持ちながらも、その革新的な構造と立ち位置ゆえに市販化のハードルは高かった、というのが実情に近いのかもしれません。

 現在でも「今からでも発売してほしい」「ハスラーのピックアップ仕様として出せないか」といった、登場を待ち望む声はSNSなどで見受けられます。

 幻のモデルとなったマイティデッキですが、その情熱と技術は決して無駄ではありません。直接的にデザインや機構を受け継いだ市販車は登場していないものの、その「遊び心」の精神は後のスズキ車に引き継がれています。

 マイティデッキが提示した「アーバンアウトドア」の哲学は、ハスラーのデザインテイストを登録車に展開した「クロスビー」や、スーパーハイトワゴンにSUVテイストを融合させ「SUVな軽ハイトワゴン」を掲げた「スペーシア ギア」などに、そのDNAを感じさせます。

 また、2019年の東京モーターショーで披露されたコンセプトカー「WAKUスポ」のウッド調インテリアにも、そのデザインコンセプトが継承されていました。

 公道を走ることはなかったものの、マイティデッキが示した「日常と遊びをつなぐ」という夢は、形を変えて現代のスズキ車の中に生き続けているのかもしれません。

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Writer: 佐藤 亨

自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。

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