大ヒット車だったトヨタ「アクア」なぜ失速したのか? デザイン大幅刷新の直後に「受注停止」!? “小型ハイブリッド車の王者”の現状は?

コンパクトなハイブリッド車として人気を極めたトヨタ「アクア」。2代目へとフルモデルチェンジした後、販売が苦戦気味です。2025年9月にはフルモデルチェンジ並みに大刷新が行われたのですが、現状はどうなっているのでしょうか。

トヨタ「アクア」なぜ失速したのか?

「プリウス」の弟分として登場したトヨタのコンパクトカー「初代アクア」は、2013年から2015年まで3年連続20万台以上売れていた、日本のベストセラーカーだった。

 2013年なんか月販平均2万1800台という爆売れ状態。2011年から10年間も作り続け、モデル末期の2019年すら月販平均8700台という人気車である。

 けれど2021年7月発売の現行の2代目モデルになるや、ガックリ台数を落としてしまい、2024年の月販平均を見るとトヨタ発表の月間販売目標の1万台に遠く及ばない5350台。

 おしなべて絶好調のトヨタ車の中で前年比マイナスの連続という“ひとり負け状態”になっている。アクアに一体何があったのか。

デザインが大きく変わった「アクア」
デザインが大きく変わった「アクア」

 失速の理由はいくつか考えられるのだが、最大の要因と思われるのが「フルモデルチェンジにあたり発表会を含む何のアナウンスもしなかったこと」だと思う。アピールしなくても売れると考えたのだろうか。

 クルマはなかなか良い。「ヤリス」より広いリアシートを持ち、ハイブリッドシステムも電池にバイポーラ型という新しいタイプを投入。価格だってヤリスと大差なかった。トヨタとしても売れない理由がわからないかもしれない。

 そんな迷いを反映したのが、2025年9月1日に行われた「フルモデルチェンジに匹敵するくらい外観を変えたマイナーチェンジ」である。

 アクアの面影無く、ハードも大幅に変更してきた。電動パーキングを採用され、自動ブレーキに代表されるADASも新しい世代のTSS3.0に進化させている。中身は最新世代のトヨタ車になったと考えていい。

 その結果、34万円の値上がりになった。ヤリスの「ハイブリッド Z」と同等レベルのアクア「Z」は24万5300円高いのだ。

 そんなアクアのマイナーチェンジをメディアは好意的に伝えていた。最近のメディアは褒めるばかりで参考にならないのだが、気になるのが「売れているかどうか」です。

 2025年1月~6月の販売台数を見ると4万1945台。月平均で6992台になる。

 9月からマイナーモデルの納車が始まっているけれど、台数といえば4587台。

 普通、マイナーチェンジ直後は台数が増えるもの。なぜか減ってしまった。とはいえ9月だけで評価するのは少しばかり乱暴である。

 私(国沢光宏)は個人的には値上げがネガティブな材料になっていると考えていたけれど、10月の台数を待つことにした。

落ちることはなかろうと予想したが、10月の結果を見ると、3181台である。これは、前年10月(マイナーチェンジ前)の台数から48.3%減、つまり半分以下ということだ。

 本当に売れていないのか、ディーラーに聞いたら「現在アクアの新規オーダーはストップしています」とのこと。トヨタの公式サイトの納期情報を見ても受注停止中となっている。

 なんらかの事情で生産が滞っているという情報あるかと探すもなし。マイナーチェンジの評価を出すにはもう1か月くらい様子見か。

 ただ、興味深いことにマイナーチェンジモデルの試乗レポートが案外少ない。前述の通り発表は2025年9月1日なので、本来なら今頃たくさんの試乗レポートを読める/見られるタイミングである。検索するもあまり出てこないです。

 マイナーチェンジということから試乗会がないのは珍しくないのだけど、一方、2025年5月に登場した「カローラクロス」などを検索するとマイナーチェンジモデルの試乗レポートはたくさんヒットする。内容もお祭り騒ぎだ。私なんか標準グレードだけでなく、新たに追加された「GRスポーツ」まで記事を書きました。

 どうやらアクアって「地味にアピールしてもクルマは売れるのか?」という実験をやっているんじゃないかと思えるほど。そう考えるとすべて納得できるあたりが興味深い。

 繰り返すけれど、マイナーチェンジ前もクルマは良かった。マイナーチェンジ後はまだ乗っていないので不明ながら、最近のトヨタ車を見れば悪くなったと思えない。「乗ってから書け!」と怒られそうながら、きっと良くなっているだろう。

 マイナス材料は値上げ。「あんたならどう評価するのか?」と聞かれたら、2つくらい思い当たる。

 コンパクトカーを買うユーザー層は一段と価格コンシャスになっていることと、試乗レポートも「アクア凄いぞ!」といった元気&賑やかさがない。

 クルマって普通の人にとって家の次に高い買い物だ。特に生活必需品であるコンパクトカーの場合「買う気スイッチ」入らないと購入意欲湧かないということなんだろう。

 トヨタがアクアをどうするのか注目してみたい。

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Writer: 国沢光宏

Yahooで検索すると最初に出てくる自動車評論家。新車レポートから上手な維持管理の方法まで、自動車関連を全てカバー。ベストカー、カートップ、エンジンなど自動車雑誌への寄稿や、ネットメディアを中心に活動をしている。2010年タイ国ラリー選手権シリーズチャンピオン。

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