9年ぶり全面刷新! マツダ“新型”「CX-5」初公開! デザイン&実用性の「バランス」がスゴイ!? 3代目は「マツダらしさの再定義」行う「変革の1台」となるか
マツダは2025年10月29日、ジャパンモビリティショー2025の会場にて、新型「CX-5」を日本初公開しました。どのようなモデルに仕上がっているのでしょうか、山本シンヤ氏が解説します。
マツダらしさを再定義する変革の1台
「ジャパンモビリティショー2025」に合わせて3代目となる新型「CX-5」が日本初披露目されました。今回の展示は欧州向け仕様ですが、日本仕様も追って登場するのは間違いありません。

CX-5は2012年に登場以降、マツダのエースとしてビジネスをけん引する存在に成長。本来であれば「CX-60」をはじめとするラージ商品群にその座を譲りフェードアウトするはずでしたが、まさかの再登板となりました。
商品に対する詳報は様々な自動車メディアから発信されていますが、筆者(山本シンヤ)は「なぜ、この期に及んでCX-5が登場したのか?」についてお伝えしたいと思います。
マツダは2019年に登場したマツダ3から「第7世代商品群」の展開を開始しました。これらを簡単に説明すると「スモール商品群」と「ラージ商品群」の2つに分け、スモールはFF横置きレイアウト、ラージはFR縦置きレイアウトと車格に合わせた最適なリソースを割く……と言うモノです。
これまでマツダは「安売り」の呪縛からなかなか抜けだすことができず、ビジネスが安定していなかったのも事実です。そこで第7世代を機に数ではなく質、つまり「高収益な商品」を目指そうと考えました。そのためにはデザイン/メカニズム共にライバルとは異なる“独自性”を今まで以上に盛り込むべきだ……と。
その考えに筆者(山本シンヤ)も異論はありませんが、商品はと言うと色々な課題が発生しました。ある開発者に聞くと「ラージ商品は全てが新開発でやる事は山積み。それに対してマンパワーが全く足りておらず、結果として熟成不足や信頼性不足に繋がってしまったのは否めません」と振り返っています。
ただ、筆者はそれ以外に大きな原因があったと思っています。それは「技術者オリエンテッド過ぎた」と言う事でしょう。マツダのエンジニアのこだわりや熱血っぷりは業界トップクラスですが、第7世代のモデルは「マツダの理想」を目指すことが目的になってしまい、結果としてユーザーニーズとの乖離を生んでしまった気がしています。例えが正しいか解りませんが、「上手いから食え!」と押し付けられている感じがします。
誤解してほしくないのは、マツダの目指す道や想い、そして技術を否定しているのではなく、ユーザーニーズとのバランスを見ていくと技術者オリエンテッドになり過ぎていた……と言う事です。
ちなみにCX-60の大幅改良を行なう際に、役員の1人は「課題を真摯に受け止め、『技術的に正しい/正しくないと言ったエンジニアのメンツよりも、ユーザーが何を求めているかを考えながら改良に取り組んでほしい』と皆に伝えました」と教えてくれました。
実際にCX-60の改良型に乗ってみると、完璧とは言いませんがその想いはクルマから伝わってきました。
そんな中でのCX-5再登板ですが、筆者は7月にワールドプレミアされた時に、「あっ、マツダがラージ商品群を自ら否定してしまったのね」、「ラインアップが滅茶苦茶になってしまった」と正直否定的でした。
しかし、実際に実車を見て・触り(乗るのはまだお預け)、そして開発メンバーの話を聞くと、その考えは変わりました。それを一言で形容するなら「マツダらしさを再定義する変革の1台」だと。
そんな事を開発主査の山口浩一郎氏に伝えると、このように語ってくれました。
「そうなんですよ。新型はより気軽に、自由自在に行きたい所へ行けて、やりたいことができる、そんなクルマに仕上げました」
要するに、初代のコンセプトを現代流に解釈しています。2代目も基本的にはその流れだったものの、少々プレミアム側にシフトしたことで、初代オーナーの中には「自分にはtoo match」と他銘柄に流れてしまったユーザーも多かったと聞きます。
エクステリアは「2代目と見分けがつかない」と言う人もいますが、よりスクエアなプロポーション、よりシンプルな面構成、SUVらしい足し算(フロント下部など)、そしてよりシンプルな加飾(メッキが少なめ)など、カジュアル方向にシフト。
個人的にはボディ下部/フェンダーアーチがピアノブラック塗装の上級モデルよりも、樹脂素材そのままの中級グレードのほうが新型CX-5を上手に表現していると思います。
インテリアは水平基調のシンプルなデザインで、ドアトリムと繋がる形状は1980年代後半に登場した4ドアクーペ「ペルソナ」を思い出しますが、これまでのマツダ車よりも格段に開放感の高さと視界の良さ(直接視界が重視されている)のが大きな違いです。
注目はインフォテイメントで初のマツダ初のGoogle採用に加えて、コマンダーダイヤル&物理スイッチ式からタッチパネル式に刷新されています。
この辺りを開発者に聞くと「我々としては目的(人間中心の思想)に対する手段が変わったと言う認識です。タッチパネルは操作時に画面を注視しがちですが、今回はGoogle採用で音声検索も優秀ですので」と教えてくれました。
ちなみに大型モニターは、上級グレードは15.6インチ、中級グレードが12.9インチを用意しています。大画面必須の人は前者ですが、個人的にはインパネデザインとのバランスや圧迫感の無さなどを含めると後者の方がバランスはいいように感じました。
居住性は先代に対して全高は30~35mm、ホイールベースは+115mmを活かし、後席の足元/頭上スペースを拡大。更にリアドアの開口部の拡大(後方に向かって+70mm)や開口角の拡大、更にはヒップポイントを下げることで乗降性が格段にアップ。
更にラゲッジも奥行きが+45mm、高さは30mmアップした事でスーツケースは4個、ベビーカーも畳んだ状態で縦方向に積載も可能に。後席可倒時もよりフラットな床面になっています。
ここでお気づきの人もいるでしょう。ズバリ“使う人”の事を考えたパッケージになっていることに。
直近のマツダ車はデザイン優先で実用性はちょっと我慢して……と言った所がありましたが、新型CX-5はマツダデザインと実用性を上手にバランスさせています。
つまり「上手いから食え!」から、ユーザーの食べ方を調査した上で「こんな食べ方もありますよ」と言う提案型の商品になったと思っています。これこそが、筆者が感じた「マツダらしさの再定義」と言うわけです。
メカニズムに関しては後日発表と言う事で今回は明らかにされていませんが、プラットフォームは2代目の進化版(つまり、スモールでもラージでもない)で、ホイールベースは2700→2815mmに拡大されています。山口氏は「ハンドリングは『自然で軽やか』、乗り心地は『デイリーコンフォート』を目指しました。我々としてもかなりの自信作なので、早く乗っていただきたいです」と。
パワートレインは欧州仕様では2.5リッター直列4気筒のMHEV(マイルドハイブリッド)で6速ATとの組み合わせと発表済みですが、日本仕様はこれに加えて、2027年にスカイアクティブZと組み合わせた独自のフルハイブリッドを投入予定と公言しています。
ちなみにCX-5の“顔”だったクリーンディーゼルは廃止ですが、これに対してユーザーはどのようなジャッジを下すのか、気になる所です。
このようにCX-5はマツダらしさを損なわず、でもユーザーに寄り添った「新マツダ」な1台と言えると思います。
ちなみにJMSには次期マツダを彷彿とさせる「ヴィジョンXコンセプト」が発表されましたが、これも新型CX-5と同じ匂いがしました。そう、筆者は普及ブランドよりも個性的、でもプレミアムほど気張っていない……と言う「アッパーメインストリーム」こそが、マツダが最も輝く立ち位置じゃないかと思っています。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。














































































