ヤマハの「和製スーパーカー」! “全長4m”以下の「“軽量”ボディ」採用! まさかの”750kg以下”でめちゃ楽しそう! オシャ内装もイイ「スポーツライドコンセプト」とは

カーボン製でわずか750kgという驚異的な中身を持ち、F1由来の技術と二輪の魂を宿したヤマハ「Sports Ride Concept(スポーツライドコンセプト)」は、はたしてなぜショールームに並ぶことはなかったのでしょうか。

幻となった750kgの衝撃、ヤマハ「二輪の魂」を宿す四輪

 2025年10月30日から一般公開された「ジャパンモビリティショー2025」では、多くの新型コンセプトカーが出展され注目が集まりました。

 モーターショーから生まれ変わったジャパンモビリティショーですが、過去のモーターショーを振り返ると強烈な印象を残したコンセプトカーたちがありました。 

 そのうちの一台が、バイクメーカーのヤマハが過去に発表した「Sports Ride Concept(スポーツライドコンセプト)」です。

内装のデザインが良すぎる…!
内装のデザインが良すぎる…!

「バイクメーカーが創った、750kgのカーボン製スポーツカー」。この衝撃的な成り立ちを持つクルマは、多くの人々の心をとらえました。

 しかし、なぜ市販化に至らなかったのでしょうか。過去を振り返ってみましょう。

 1992年にF1由来のV型12気筒エンジンを搭載した試作スポーツカー「OX99-11」を発表するなど、ヤマハの四輪への挑戦は以前から続いていました。

 OX99-11は1994年の市販化を予定していましたが、1993年に開発遅延と当時の経済危機を理由に計画がキャンセルされた経緯があります。

 その上で、2015年10月29日から11月8日に開催された「第44回東京モーターショー」で世界初公開されたのが、スポーツライドコンセプトです。

 二輪車製造を本業とするヤマハから、これほど完成度の高い本格的なスポーツカーが登場したという事実は、国内外のメディアや自動車愛好家にとって「最高のサプライズのひとつ」として迎えられました。

 内外装のクオリティは「このまま市販化されてもおかしくない」と評され、ショーのハイライトとして絶大な注目を集めたのです。

 このクルマは、ヤマハが掲げた「もしヤマハが、スポーツカーを創ったら」という挑戦的なテーマを具現化したモデルです。

 ヤマハは2013年の同ショーでシティコミューター「MOTIV(モティフ)」を発表しており、Sports Ride Conceptはそれに続く本格的な四輪コンセプトカー第2弾でした。

 その根幹には、ヤマハの二輪車デザインに共通する「エレメンタリズム」という哲学があります。各部品が独立した造形美を持ちながら全体として調和し、二輪車特有の「人機官能」という体験を四輪で実現しようとする考え方です。

 この大胆な哲学を現実に近づけたのが、F1デザイナーとして名高いゴードン・マレー氏が開発した革新的な製造プロセス「iStream(アイストリーム)」でした。

 スポーツライドコンセプトの核である「iStream Carbon」構造は、2枚のカーボンスキンの間にハニカムコアをサンドイッチした複合パネルによるモノコックで、従来の量産手法では難しかった“超軽量かつ高剛性”を実現しました。

 その結果、車両重量はわずか750kgという、当時の軽自動車に匹敵する驚異的な数値に到達しました。

 ボディサイズは全長3900mm×全幅1720mm×全高1170mm。コンパクトでワイド&ローな、古典的スポーツカーのプロポーションです。

 エクステリアには、ヤマハのフラッグシップスーパースポーツバイク「YZF-R1」を想起させるシャープなLEDヘッドライトや、スポーツバイクの意匠を色濃く反映したセンター出しマフラーを採用しました。

 インテリアは厳格な2シーターレイアウトで、カーボンやアルミ、サドルブラウンのレザーを効果的に用い、機能性と工芸品レベルの高級感を両立。

 とくにユニークだったのは、シート後方の構造部材に、ヤマハの楽器製造部門が手掛けた木製パネルが組み込まれていた点です。

 駆動方式は後輪駆動(RWD)と示されていた一方で、エンジン搭載位置については、センター出しマフラーの造形や俊敏性を志向するコンセプトからミッドシップ(MR)とする見方があるほか、フロントエンジン(FR)説を指摘する向きもあり、公式には明確な情報は公開されませんでした。

 いずれにせよ、750kgという軽さを軸に、絶対的なパワーよりドライバーとマシンの一体感を追求する“ライトウェイト哲学”が貫かれていたと言えるでしょう。

 しかし、これほどまでに完成度の高いクルマが市販化されることはありませんでした。2019年、ヤマハは四輪車開発プロジェクトの断念を発表。競争の激しい市場、とくにスポーツカー領域で「投資に見合うリターンが見込めない」という経営判断が背景にあったとされます。

 最大の要因として、革新的な「iStream Carbon」を量産化するための莫大な設備投資と、それに見合う販売台数を確保する難しさが指摘されていました。

 とはいえ、その情熱と技術は決して無駄にはなっていません。当時、他社スポーツカーへの波及が噂されたものの、直接的な影響を示す明確な情報はありません。

 一方で技術的遺産は、開発パートナーであったゴードン・マレー氏が設立した自動車ブランド「ゴードン・マレー・オートモーティブ(GMA)」に色濃く継承。iStream Carbonで培われた思想は、後の「T.50」や「T.33」といった超高性能スーパーカーの礎となりました。

 市場に登場することはなかったものの、スポーツライドコンセプトは、自動車の軽量化技術史における重要な「if」の物語として、今も多くの自動車ファンの記憶に残り続けています。

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Writer: 佐藤 亨

自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。

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