なぜ日本に「中国高級ミニバン」導入? 「ジーカー・009」展開の狙いは? 販売元「フォロフライ」に聞いてみた

中国のBEVミニバンである ZEEKR(ジーカー)「009」が日本に上陸します。販売するのは京都のファブレスメーカー「フォロフライ」。なぜ同社がこのクルマを扱うのでしょうか。009の特徴とともに解説していきます。

ダイナミックボディのBEVミニバンが日本上陸! JMS2025でお披露目へ

 京都府京都市に本拠地を置くファブレスメーカー「フォロフライ」が、中国の純電動ミニバン ZEEKR(ジーカー)「009」を日本で販売すると発表しました。

 いったいどういうクルマで、なぜ同社が扱うのかを聞きました。

中国BEVミニバン「ジーカー・009」展開の狙いは?(写真撮影:加藤博人)
中国BEVミニバン「ジーカー・009」展開の狙いは?(写真撮影:加藤博人)

「ジーカー」は中国の民営自動車メーカー「ジーリー(吉利)」が2021年より展開している純電動(BEV)ブランドです。

 ジーリー自体は多くのブランドを擁しており、2016年にはボルボと共同で若年層を意識した「リンク・アンド・コー」を設立。同ブランドのセダン「03」は、2018年に静岡県の富士スピードウェイでワールドプレミアを行なったことで日本でも話題となりました。

 ジーカーはリンク・アンド・コーの兄弟的立ち位置としてスタートしています。

 現在、シューティングブレークの「001」「007 GT」、セダン「007」、ステーションワゴン「007 GT」、ミニバン「009」「MIX」、SUV「X」「7X」「9X」の計8車種をラインナップ。

 9X以外はすべて純電動モデルのみの展開で、スウェーデン・イェーテボリにあるデザインセンターが中心となって仕上げた斬新でスタイリッシュなデザインが特徴的です。

 また、ヤマハが専用でチューニングを施したサウンドシステムや、曙ブレーキ工業製ブレーキもいくつかの車種で採用されており、何かと日本企業との繋がりが多い中国ブランドでもあります。

 そんなジーカーですが、2025年に入って日本市場への参入がたびたび報道されていました。

 日本における事務所が設立されただけでなく、コンパクトSUV ジーカー「X」の香港向け右ハンドルモデルが日本のナンバープレートを装着した状態で日本の公道を走行する様子も目撃されており、日本発売への下地づくりは着々と進んでいた状況です。

 そして2025年10月22日、まずは高級ミニバン「009」の日本導入が発表されました。

 ジーカー 009は全長5217mm×全幅2024mm×全高1812mmのダイナミックなボディを誇るミニバンです。長さ3205mmを誇るホイールベースによってもたらされた余裕のある大空間に加え、これまでのミニバンにはなかったような、奇抜で未来的なエクステリアデザインが009の特徴と言えます。

 現在販売されている009は主にバッテリー容量108kWhと140kWhの2種類に分けられ、それぞれ6人乗りモデルと7人乗りモデルが展開されています。さらにその上には4人乗りの最上級モデル「Grand(中国語:光輝版)」も設定。中国では89.90万元(約1935万2000円)という値段で販売されています。

 駆動方式はFWDとAWDの2種類を用意、108kWhモデルではFWDが出力415 hp、AWDが777 hpを誇ります。一方で140kWhモデルではそれぞれ335hpと603hpとしており、グレードによって細かく動力性能が分けられています。

 ジーカー 009の日本販売を担当するのは京都府京都市に本拠地を置く「フォロフライ」です。2021年に設立された同社はファブレスメーカー(工場を持たないメーカー)として同年、中国「東風汽車」傘下の「東風小康汽車」が製造する商用EVをベースとする「F1」シリーズを発売しました。

 F1はただ単に中国から輸入されただけでなく、日本向けに急速充電「CHAdeMO」の対応やパーキングロック機能の追加、さらには下回りの改善や剛性の強化など100か所以上にも及ぶ改修も独自で施しており、日本の法人ユーザーが求める商用EVに仕上げていると同社の担当者は話します。

 現在は東風汽車以外のメーカーとも提携し、軽規格の商用バンから中型トラックまで、多種多様な商用EVをラインナップしています。

 フォロフライはジーカー 009を日本で販売する理由として、同社がこれまで商用EV販売で培ってきた「toB(ビジネス相手)」ネットワークの存在が大きいとしています。想定する購入層はタクシーやハイヤー、その他送迎用途といった法人の利用としていますが、もちろん個人客からの購入の問い合わせにも対応するとのこと。

 もちろん同社は年間数千台規模の需要を見込んでいるわけではないものの、009は日本で未だ競合が存在しない「ラグジュアリー純電動ミニバン」の市場において大きなアドバンテージを発揮できることでしょう。

 輸入車では特に懸念材料となるアフターサービスに関しても、すでに販売中の商用EVで提供している充実のサポート網を準備しているといいます。

 2026年中に日本で販売を予定しているのは航続距離822km(ジーカー独自の測定値)のバッテリー容量140kWhモデルで、乗車定員は6人乗りと7人乗りが選択可能としています。

 日本仕様に関しては「最終調整中」とのことで、販売するにあたってハンドルの位置が右になるのは当然として、さらにこれまで販売してきた商用EV同様に急速充電「CHAdeMO」にも対応した上で、充電に対する不安が払拭されることにも期待が高まります。

 一方でより小さいバッテリーを搭載するモデルは現時点で日本における販売は未定で、また、先述の4人乗りモデルや他のジーカー車種の導入も現在公表できる情報は無いとしています。

※ ※ ※

 フォロフライは2025年10月29日より開幕する「Japan Mobility Show(ジャパンモビリティショー)2025」にも出展予定。

 今回発表されたジーカー 009に加え、同社の強みである商用EVに関しても1トンクラスの「F11VS」、軽規格トラック「FKT-B」、中型トラック「F3T-B」の3車種を初公開予定です。

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Writer: 中国車研究家 加藤ヒロト

下関生まれ、横浜在住。2017年に初めて訪中した際に中国車の面白さに感動、情報を集めるうちに自ら発信するようになる。現在は慶應義塾大学環境情報学部にて学ぶかたわら、雑誌やウェブへの寄稿のみならず、同人誌「中国自動車ガイドブック」も年2回ほど頒布する。愛車は98年式トヨタ カレン、86年式トヨタ カリーナED、そして並行輸入の13年式MG6 GT。

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