なぜメーカーによって「同じクルマに見える」デザインが多い? 「カッコよければすべてよし」「あとはバラバラでOK」とはならない理由
デザインの良し悪しが売れ行きに直結する場合も少なくないクルマ。しかし、メーカーによって「同じクルマに見える」「デザインが統一されている」と感じることも多いかもしれません。その理由はどこにあるのでしょうか。
「個性がない…」を避け、制約をクリアするデザインが難しい!
クルマにおいてデザインは、時にその売れ行きをも左右する大切な要素です。
しかし、近年は特にメーカーによって「同じクルマに見える」「デザインが統一されている」と感じることも多いかもしれません。
一体どうしてなのでしょうか。

自動車は、「愛車」という言葉もあるように、オーナーの所有欲を満たし、ときには愛着も感じさせる必要があります。
機能性よりも、デザインの良し悪しが売れ行きに直結する場合も少なくありません。
しかし、自動車メーカーやブランドにとって、カッコよければすべて良しで、ラインナップする車種のデザインがすべてバラバラでいいとはなりません。
アイデンティティも不可欠と考えるメーカーやブランドが多く、ファミリーフェイスを共通化したり、メーカー全体としてのデザインコンセプトを掲げたりしています。
トヨタの「ハンマーヘッド」やスバルの「DYNAMIC×SOLID」、マツダの「魂動デザイン」、三菱の「ダイナミックシールド」などがそれにあたります。
メーカーやブランドは、時代(世代)やデザインを統括する責任者などによってコンセプトが変わることもあります。
ラインナップ全体のデザインを統括する責任者をおいているメーカーやブランドもあります。
ほかにも同じ車に見える要因があります。プラットフォーム(車体)の流用や共通化はもちろん、ドアパネルやルーフなどの外板パーツの共有化も当てはまります。
さらに、ボディサイズの制約も大きく、歩行者保護などの「コンパティビリティ」や衝突安全性能の点からもボンネットやバンパーなどのデザインがある程度、制限される事情もあります。
見逃せないのが空力性能の追求で、ファミリーフェイスを採用しつつ、空力性能を追求すればするほど、似通ったフォルム(シルエット)になりがちです。
そのほか、現在であれば、流行している横一文字のリヤコンビランプやメーカー(ブランド)のロゴをテールに配置するだけで、どことなく似通った印象を与える場合もあります。
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難しいのがアイデンティティを表現するさじ加減で、「金太郎飴」などと揶揄されたこともあるメーカーもありますし、コンパクトセダンも大型セダンも遠目で見ると違いが分かりにくい…というブランドもあります。
ブランドのエンブレムを外すとどこのクルマ(メーカー)か分からない…といわれてしまっては、売れるクルマにはならなそうです。
モデルチェンジや完全な新型車で今までと異なるデザインの方向性を打ち出した途端、売れなくなってしまった、ということもあります。
アイデンティティを感じさせつつ、個性も抱かせるのは、デザイナーの腕の見せどころであり、悩みどころといえるでしょう。
Writer: 塚田 勝弘
中古車の広告代理店に数ヵ月勤務した後、自動車雑誌2誌の編集者、モノ系雑誌の編集者を経て、新車やカー用品などのフリーライター/フリーエディターに。軽自動車からミニバン、キャンピングカーまで試乗記や使い勝手などを執筆。現在は最終生産期のマツダ・デミオのMTに乗る。













































































