トヨタ・豊田章男会長がダイハツの“マスタードライバー”に電撃就任!オートサロンでは「軽トラ対決」も! 異例のサプライズ劇の裏側とは?
「うちのクルマを壊してほしい」。イベントに登壇したトヨタ豊田会長に、ダイハツ副社長が異例の直談判。その場で「マスタードライバー」就任を快諾し、会場は拍手に包まれました。グループの垣根を越えたサプライズ劇の裏側をお届けします。
トヨタ・豊田章男会長がダイハツのマスタードライバーに!?
2025年10月14日から11月3日まで京都駅ビルやその周辺で開催される「第1回 京都駅ビル芸術祭」。
初日にはオープニングセレモニーが開催され、そのなかでダイハツとトヨタにおけるサプライズがありました。
それはダイハツ工業の星加宏昌副社長のトーク中に、客席にいたはずのトヨタ・豊田章男会長が突如ステージに登壇。
さらにその場で豊田会長がダイハツの「マスタードライバー」に就任したのです。一体、何があったのでしょうか。

●異色の「匠」が集結したトークイベント
このトークショーは、伝統的な木工芸の世界と、現代の自動車産業という、一見すると全く異なる分野の「ものづくり」について語り合うというユニークな趣旨で開催されました。
登壇したのは、木桶づくりの伝統技術を継承し、国内外で高い評価を受ける中川木工芸の中川周士氏と、ダイハツ工業で長年軽自動車の開発に携わり、現在は代表取締役副社長を務める星加宏昌氏。
司会者を交え、それぞれの分野における「匠の技」や、製品に込める想い、そして後世に技術を伝えていくことの意義など、深いテーマで対談が繰り広げられていました。
特に、ダイハツの軽トラック「ハイゼット」に関する話題では、日々の暮らしや仕事を支える道具としてのクルマのあり方や、ユーザーに寄り添う開発思想が語られ、会場は和やかな雰囲気に包まれていました。
●サプライズゲストはトヨタ・豊田章男会長!「クルマを壊す」マスタードライバーの真意とは
イベントが中盤に差し掛かった頃、司会者から「すごいオーラを放っている」と紹介され、客席からステージに招き入れられたのは、トヨタの豊田章男会長でした。
豊田会長はトヨタ・レクサスの「マスタードライバー」という顔も持ち、自らハンドルを握ってクルマの性能を極限まで評価することで知られています。
その役割について問われた豊田会長は、「クルマを壊すのが仕事」という言葉で説明を始めました。しかし、それは決して乱暴な意味ではありません。
「工業製品ですから、やっぱり壊れるとこがあるんですよ。お客さまが使っていて壊れるのを事前にね、壊しておけば、その分ですね、対策ができるんですね。
それで、いろんな使い方をして一回壊しますと、そこは弱いわけですから、そこを強くすればいい。それで一つが強くなると、またどっかが弱くなりますから、それを直せばいい」
このように語り、市販される前により高いレベルでクルマの弱点を洗い出し、安全で信頼性の高い製品を顧客に届けるための重要なプロセスであることを強調しました。
ユーザーが遭遇しうる過酷な状況を開発段階で徹底的にシミュレーションし、あえてクルマを限界まで追い込むことで、真の「いいクルマづくり」に繋がるという哲学が垣間見えました。

●「うちのクルマを壊してほしい」ダイハツ副社長からの電撃オファーと“用意された名刺”
この豊田会長の言葉に、ダイハツの星加副社長が動きます。
これまでダイハツには「マスタードライバー」という専門の役職が存在しなかった背景に触れつつ、突如、豊田会長に向かって「ダイハツのマスタードライバーを引き受けていただけないか」と、異例の公開オファーを行ったのです。
このダイハツの「マスタードライバー」に関する話題は、2024年1月30日に開催された「トヨタグループビジョン説明会」まで遡ります。
この説明会は、2023年から日野、ダイハツ、豊田自動織機、トヨタとトヨタグループで不正問題が相次いでいるなかで開催されたもので、そこに豊田会長が登壇。
説明会の一幕では、トヨタ・レクサスのマスタードライバーも務める豊田会長からのアイデアとして、日野・ダイハツ・豊田自動織機に対して「マスタードライバー」をつくるように提案。
当時、豊田会長は「いまからフォークリフトや大型免許は取れません。軽自動車の乗り味を判断するのもしませんが、不正を起こした各社にはその会社の強みを生かした人選をしたマスタードライバーを出して欲しいです」と語っていました。
今回のダイハツ・マスタードライバー就任は、まさにこの時の話がきっかけだったと言えるでしょう。
さらには、京都駅ビル芸術祭で星加副社長はポケットから一枚の名刺を取り出しました。
そこには「ダイハツ工業株式会社 マスタードライバー 豊田 章男」とはっきりと印字されていました。
この日のために準備されていた名刺の存在は、このオファーが単なるその場の思いつきではなく、ダイハツ側の強い意志表示であったことを物語っています。
星加副社長は以前、豊田会長にダイハツの試作車を評価してもらった際のエピソードを披露。
「3か月かかった車を半周で壊していただいた」という驚きの事実を明かし、その厳しい評価があったからこそ、クルマの弱点が明確になり、結果として開発が大きく前進したと語りました。
この熱意ある申し出に対し、豊田会長は笑顔で快諾。がっちりと握手を交わし、ここに「ダイハツ・マスタードライバー」が電撃的に誕生。会場からは、この歴史的な瞬間を祝う拍手が送られました。

●グループの垣根を越えた新たな関係性へ “軽トラ対決”にも期待
この一連の流れは、トヨタとダイハツの関係性が新たなステージに入ったことを象徴する出来事と言えるでしょう。
豊田会長は両社の関係について、親会社が子会社を支配するような「求心力」ではなく、それぞれの個性を尊重し合う「遠心力」を大切にしていると語りました。
「(トヨタグループは)求心力って言うじゃないですか。でもここのこだわりは遠心力なんですよ。『トヨタの言うこと聞くか』みたいなね。でも、その遠心力は大切にしてほしいなと思ってんです」
この言葉は、ダイハツが持つ「小さなクルマづくり」へのこだわりと独自性を最大限に尊重し、グループとしてさらなる高みを目指すという豊田会長の強い意志を感じさせます。
※ ※ ※
トークの最後には、豊田会長(モリゾウ選手)と星加副社長率いるダイハツチームが、それぞれカスタマイズした軽トラックで競い合うという、ファンにとって夢のような企画も示唆されました。来年の東京オートサロンでの“軽トラ対決”が実現するのか、期待が高まります。
今回のサプライズ就任劇は、単なる話題作りにとどまりません。
トヨタのトップが自らダイハツのクルマづくりに深く関与し、その限界を見極めることで、ダイハツ車の品質や走行性能がこれまで以上に向上することは間違いないでしょう。
グループの垣根を越えた「匠」の共演が、これからの日本の自動車業界にどのような新しい風を吹き込むのか、目が離せません。
Writer: くるまのニュース編集部
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