トヨタが「新プロジェクト」を発表! センチュリー、レクサスLS、トヨタカローラが…変わる!? 5ブランドの未来を紐解くヒントとは
10月13日のトヨタイムズ生配信で、「ジャパンモビリティショー2025(JMS2025)」に向けた新CMが公開されました。そこには各ブランドの未来を占う衝撃的な内容が。トヨタから独立しクーペも登場するセンチュリー、6輪ミニバンになる次期LS、復活するミゼットなど、CMから読み解ける各社の新たな役割とクルマづくりの未来を解説。
各ブランドの役割を明確化し、「クルマをコモディティにしない」決意か
10月13日、13時からのトヨタイムズ生配信。9月18日から特設サイトが開かれカウントダウンが行なわれるも、「新プロジェクト発表」以外は謎に包まれていました。
今回発表された主な内容は、今晩から放送が開始される「JMSに向けた各ブランドのCM」ですが、その中身を見ていくと各ブランドの未来を紐解くヒントが様々な所に……。
この放送を見た筆者(山本シンヤ)が、その部分を少しだけかみ砕いて解説していきたいと思います。

1つ目は「センチュリー」です。センチュリーはトヨタブランドながら他のモデルと別格のモデルとして歴史を重ねてきました。
現在、伝統のセダンに加えて新時代にふさわしいSUVタイプがラインアップされていますが、今回のCMでは何とクーペモデルの存在が明らかになりました。これは何を意味するのか。
筆者はセンチュリーがトヨタから独立したブランドになると予想しています。そのためには、センチュリーと言う個車ではなく“群”で勝負、そのためにはショーファーカーだけに留まらないモデルも必要だ……と言うわけです。
つまり、センチュリーは「全ての人に移動の自由を」のトヨタの中で、唯一「乗る人を選ぶクルマ」であり、トヨタでもレクサスでもない“特別”かつ“唯一”の存在になる決意がこのCMに込められているのかな……と。
筆者は今年の4月に行なわれた上海モーターショーに取材に行きましたが、1つだけ「?」がありました。それはトヨタ/レクサスとは別に、センチュリーのみの独立したブースが用意されていた事です。
他のブランドは誰でも入れますが、センチュリーのブースは選ばれた人しか入れないようになっていましたが、今思うと、「アレは今回の布石だったのかな」と思っています。
2つ目は「トヨタ」です。
その内容は「to you Toyota(=あなたへ)」。誰も取り残されない、全ての人に移動の自由を…‥と言うトヨタのフィロソフィを表現していましたが、最後のシーンに表れたモデルを細かく見ると「COROLLA」の文字が。つまり、あのモデルは次期カローラのコンセプトです。
カローラは1966年に初代が登場して以降、累計販売台数5000万台を超える自他共に認める「トヨタのエース」です。
現行モデルは2018年に登場した12代目。カローラをコモディディにしないために原点回帰したモデルですが、今回公開された映像のモデルはまるでワイド&ローの4ドアクーペのようなスタイリッシュなデザインに見えました。
この他にも新興国向けと思われる組み立て式のトラック(IMV0よりも小型でシンプル)、商用版(前回のJMSで発表されたKAYOIBAKOの進化版?)、パーソナルモビリティ(子供用やハンディキャッパー用)なども公開。
筆者は「グローバルでフルラインナップの全方位戦略」をより強化していく決意と見られます。
3つ目は「レクサス」です。
チーフブランディングオフィサーの豊田氏はレクサスを「本物を知る人が最後にたどり着くブランド」と形容していますが、直近は台数を求めすぎていた反省があったのも事実です。
新時代のレクサスは世界のプレミアムブランドが驚愕した初代LS(1989年登場)のような強力なリーダーシップの存在が必要と考えた豊田氏は、「誰の真似もしない」、「ディスカバー」を実現させる新フラッグシップの開発を指示。それが「LSコンセプト」です。
そのシルエットは「LS=セダン」からの脱却を果たし何とミニバンスタイル、それもリアに小径タイヤを4つ用いた6輪仕様と、LMとも違う独自性の塊と言っていい存在です。
これはミニバンを作るのが目的ではなく、室内スペースをより有効に使う、乗り降りのしやすさを追求するなど、ショーファが求める要件をカタチにしていった“結果”でしょう。
つまり次世代LSの「S」の意味は“セダン”ではなく“スペース”だと言う事でしょう。
ちなみにあのシルエットが見えた時、Youtubeのコメント欄はやや荒れました(笑)。
確かにあそこまでドラスティックに変わるとは誰でも予想していなかったはずなので当然のことでしょう。ただ、レクサスは間違いなくあのクルマだけで終わらせず、次の“引き出し”も用意しているはず。
ここからは完全に筆者の妄想になりますが、クラウンがセダンの呪縛を解いた後に新たな発想でセダンをラインアップしたように、LSもミニバンの他にセダン/クーペのようなモデルも並行して進めているような気がしています。
つまり「フラッグシップだからこそ、固定概念にとらわれず様々なニーズに対応」と言う事なのです。
4つ目は「ダイハツ」です。
ジッタリン・ジンの「プレゼント」の替え歌(=小さいクルマができる事)と共に、初代ミゼットからコペンまで小さいクルマの歴史がアニメ調で流れていきます。
他のブランドと違うのは、クルマが主役ではなく、クルマを通じた“暮らし”が主役だと言う事。そして「庶民のゲタ」だからこそ、時代にニーズに応じて変化・進化してきている事を伝えています。
その最後に登場するのは「ミゼットX」です。
初代・2代目のイメージを踏襲しながらも現代流にアレンジされたデザインになっていました。
様々な用途で使えるいくつかの提案もありましたが、恐らくラストワンマイルを支える軽トラの新しいカタチなのかなと。
驚いたのはCMの最後に出るダイハツのコーポレート標記のDAIHATSUの文字が赤→カラフルに変更されていた事です。普通はコーポレートロゴに手を加えるのはご法度ですが、これはダイハツ首脳陣の「おもろいから変えよう」と言う提案で変更されたと言います。
大阪ではおもろい=センスがいい、気が利いている……を意味しますが、認証不正から立ち直り、そのようなブランドになってくれる事を期待したいです。

そして5つ目は「GR」ですが、GRは2026年1月に開催される東京オートサロンまでお預けとの事でした。
ただ、先週末に行なわれたスーパーフォーミュラ@富士スピードウェイに合わせて、最終コーナー手前のGRスープラコーナーが「GR GTコーナー」に変更。看板には「トヨタ2000GT」「レクサス LFA」と共に、GRのロゴが付けられた“謎のクルマ”の一部が掲載されています。
放送では「グッドウッドで走ったあのクルマに似ている」、「ペブルビーチで出したあのクルマにも似ている」と語られていましたが、恐らくそれで正解なのかな……と(笑)。
「CMが流せませんが、エンジン音だけ」と3台のエンジン音が流されましたが、メカメカしいサウンドの2000GTの直6-2.0L DOHC(3M)、甲高いソプラノのレクサスLFAのV10-4.6L DOHC(1LR-GUE)に続いて聞こえたのは、軽やかに回るも図太く野性味のあるサウンドに加えてシフトダウン時のバブリング音から、4.0L前後のV8ツインターボと予想。
ちなみに番組内で豊田氏は「年末に私がワールドプレミアをしますから」のポロリ発言を私は聞き逃していませんでした(笑)。
つまり、東京オートサロンの前に独自のお披露目イベントが開催されるのでしょう。
ここまで掛け足で説明してきましたが、今回の新プロジェクト発表の狙いはどこにあるのでしょうか。
筆者は「各ブランドの“役割”をより“明確”にすること」じゃないかと思いました。その実現のために「各ブランドの“核”となるモデルが大きく変わるよ」と。
トヨタは商品を軸とした経営を行なっていますが、今後も「クルマを絶対にコモディディ化させない」と言う強い決意表面を、TV-CMを通じて多くの人にシッカリと伝えたかったのでしょう番組の最後に豊田氏は視聴者に向けてこのように語っています。
「トヨタが世界のお客さんのショッピングリストに入ってもらえる。そして、その商品と共にたくさんの思い出を作っていただく。そんな商品になるように、従業員38万3000人が心を1つに力を合わせて一生懸命頑張っていきます。よろしくお願いします」
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。









































































