「センチュリークーペ」「6輪LS」に「カローラ」!? GRはどうなる? 豊田章男会長「全て本気で実現したいと思っている」、トヨタが仕掛ける新プロジェクトの全貌とは
トヨタ自動車が2025年10月13日、トヨタイムズのライブ配信を通じて、新たなプロジェクトの始動を発表しました。公式サイトでの謎のカウントダウンで注目を集めていたこの発表会では、新型車の予告や常識を覆す衝撃的なコンセプトカーが次々と披露されました。一体どのような内容だったのでしょうか。
豊田会長の「檄(げき)」から始まった異例の発表会
トヨタは2025年10月13日、オウンドメディア「トヨタイムズ」公式YouTubeチャンネルでのライブ配信を通じて、新たなプロジェクトの始動を発表しました。
公式サイトでの謎のカウントダウンで注目を集めていたこの発表会は、豊田章男会長の「檄(げき)」から始まる異例の幕開けとなり、新型車の予告やや常識を覆す衝撃的なコンセプトカーが次々と披露されました。
鮮やかなオレンジ色のクーペスタイル「センチュリー」や6輪ミニバンコンセプトとなるレクサス「LS」など、驚きに満ちたその内容とはどのようなものなのでしょうか。
トヨタグループが描く未来のモビリティ戦略と、そこに込められた熱い想いを徹底解説します。

今回のプロジェクトは、豊田章男会長が社内のCM担当者に向けて送った1本のメッセージ動画から始まりました。そこでは「ブランド広告というものを、このメンバーで考えてみてくれませんでしょうか」と語られています。
この動画は、トヨタ、レクサス、センチュリー、GRという4つのブランドにダイハツを加えた5つのブランドの価値を再定義し、それぞれの魅力を最大化するための広告戦略を根本から見直そうという、豊田会長の強いリーダーシップの表れでした。
この会長のメッセージをきっかけに、各ブランドの新たな魅力を伝える新CMが制作されたとのこと。
生配信では、この新CMを初公開するとともに、そこに隠された新プロジェクトのヒントを解き明かす形で進行しました。
登壇者には豊田会長に加え、Chief Branding Officer(CBO)のサイモン・ハンフリーズ氏、そして各CMを手掛けた日本を代表するクリエイター、小西利行氏、篠原誠氏、野添剛士氏が顔を揃え、制作の裏側やクルマづくりへの想いを語りました。

常識を覆す衝撃のコンセプト! センチュリーとレクサスの新たな姿
発表会で最も大きな衝撃を与えたのは、間違いなくセンチュリーとレクサスの新たな姿でしょう。
まず披露されたセンチュリーの新CMでは、伝統的な黒塗りのセダンというイメージを根底から覆す、鮮やかなオレンジ色のクーペスタイルのモデルが登場しました。
「生まれ変わることでしか、歴史は続けない」 そのメッセージと共に映し出された流麗なフォルムと荒野を疾走する姿は、これまでのセンチュリーが持つ荘厳さに、パーソナルでスポーティな魅力を融合させたものでした。
この衝撃的な一台について豊田会長は、これまでトヨタブランドの最上級モデルという位置づけだったセンチュリーを、今後はひとつの独立した「ブランド」として確立させる狙いがあると語りました。
サイモン・ハンフリーズCBOも、「センチュリーが『Top of the Top』として頂点に立つことで、その下に位置するレクサスはより自由に、先駆的なチャレンジができるようになる」と説明。
トヨタグループ全体のブランドフォーメーションを再構築する上での重要な一手であることが明かされました。
このセンチュリーは単なる映像上の演出ではなく、実際に本気で開発が進められている一台であることも示唆されています。
続いて登場したのが、レクサスの新CMに登場した“6輪の「LS」コンセプトカー”です。その姿は、既存のどのカテゴリーにも属さない唯一無二の存在感を放ちます。
メッセージは「DISCOVER」と「誰の真似もしない」。これは、レクサスが既存のプレミアムブランドを追いかけるのではなく、自らが新たな価値を創造するブランドへと進化していくという決意表明に他なりません。
豊田会長とデザイン部門のやり取りの中で生まれたというこの6輪のアイデアは、月面を走る探査車「ルナクルーザー」から着想を得たとのこと。「なぜ月の上しか走れないんだ、地球の上も走りたいじゃないか」という想いが、この斬新なモビリティを生み出したといいます。
6輪にすることで室内空間を劇的に広げることが可能となり、ショーファードリブンとしての快適性を極限まで高める狙いがあります。
また、これまでラグジュアリーセダンの頭文字とされてきた「LS」の“S”について、豊田会長は「“セダン”に限る必要はないじゃないか」と問いかけ、「スペース(空間、宇宙)」という新たな解釈を提示。
レクサスが既成概念にとらわれず、未踏の領域へ挑戦していく姿勢を強く印象付けました。
なお、視聴者からの「これは6WDということになるんでしょうか」という質問に対しては、「maybe…」(ハンフリーズCBO)、「佐藤社長が中島副社長にお聞きください」(豊田会長)とのことでした。

「暮らし」と「あなた」に寄り添うトヨタとダイハツの未来像
センチュリーやレクサスがブランドの新たな高みを目指す一方で、トヨタとダイハツは、より人々の生活に寄り添う未来の姿を提示しました。
ダイハツの新CMは、「小さいからこそ、できること」をテーマに、コンパクトなクルマがもたらす暮らしの豊かさをリズミカルに描きます。「わたしの発明、ダイハツの大発明」というキャッチーなフレーズと共に、新旧様々なモデルが登場。
中でも注目なのが1959年に登場した「ミゼット」の次期型を思わせる、愛らしい未来的なコンセプトカー「ミゼットX」です。
これは、人々の暮らしを第一に考え、生活に役立つ独創的なアイデアを形にしてきたダイハツの原点回帰と、未来への進化を示す象徴的な一台と言えるでしょう。
今回の生配信では、このCMの最後に出てくるダイハツロゴの色がカラフルなものに変わるというサプライズ演出も。
これは「もっとおもろいことをやろう」というダイハツ社内からの提案で急遽変更されたといい、同社の遊び心とチャレンジ精神が垣間見えました。ジャパンモビリティショー2025の開催期間中はこのカラフルバージョンが放映されるそうです。
一方、トヨタブランドの新CMは、世界中で愛される様々なトヨタ車が登場し、人々の日常を支えている様子を映し出します。
そのメッセージは「あなたへめがけて(To You)」。これは、不特定多数の「みんな(For All)」のためだけでなく、クルマを選んでくれる一人ひとり、つまり「あなた」のために最高のクルマを届けたいという想いが込められています。
そして映像の最後には、これまで見たことのないスポーティなフォルムを持つ、「カローラ」のコンセプトカーが登場。
世界で最も多くの人々に愛されてきたカローラだからこそ、未来に向けて新たな変革を遂げるというトヨタの強い意志を感じさせました。

GRは“音”だけ公開! オートサロン2026で実写お披露目予定
5つのブランドの中で、唯一新CMが公開されなかったのが、モータースポーツを起点としたクルマづくりを行う「GR」ブランドです。
CMの代わりに流されたのは、往年の名車「2000GT」、そしてスーパースポーツ「LFA」のエンジンサウンド。そして、それに続く第3のサウンドとして、謎のレーシングカーが奏でる官能的なエキゾーストノートが会場に響き渡りました。
映像には富士スピードウェイの最終コーナーに設置された巨大な看板が映し出され、そこには2000GT、LFAと並んで、この謎のマシンの一部の写真が掲げられています。
このマシンこそが、GRブランドが次に送り出す切り札であることは間違いありません。
豊田会長は「年末にワールドプレミアを行う」と宣言。また、実写公開は2026年1月の東京オートサロンを予定していることも明らかにされ、期待が高まるばかりです。
一体どんなクルマが登場するのか、その答えはもう少し先までお預けとなりそうです。

「本気で実現したい」豊田会長が語るトヨタの未来と“あなた”への想い
今回披露された数々のコンセプトカーは、単なる未来予想図ではありません。豊田会長は「これらは全て本気で実現したいと思っている」と力強く語りました。
ジャパンモビリティショー2025では、トヨタ、ダイハツ、レクサス、センチュリーのブースが一つの大きなホールに集結し、今回登場したモデルたちを含め、ブランドの垣根を越えた展示が行われることも発表されました。
発表会の最後に、豊田会長は視聴者に向けて次のように語りました。
「トヨタが世界中の人々のショッピングリストに加えてもらえるような、そして、そのクルマと共にお客様がたくさんの素晴らしい思い出を作っていただけるような、そんな商品を生み出せるよう、我々38万8000人の従業員一同、心を一つにして取り組んでまいります。これからのトヨタが送り出す商品に、ぜひ期待していてください」
今回の発表は、単に新しいクルマを見せるだけでなく、トヨタグループがこれからどこへ向かおうとしているのか、その壮大なビジョンと覚悟を示すものでした。








































































