便利な「ワンタッチウインカー」使うと“違反”の可能性も!? たった「3回点滅」じゃ不十分? 標準化進む「便利機能」正しい使い方とは
近ごろのクルマでよく見かける「ワンタッチウインカー」。レバーを軽く押すだけで3回や5回点滅する便利機能ですが、使い方次第では「違反」となる可能性もあるといいます。いったい何がいけないのでしょうか。
便利だけどトラブルも!? ワンタッチウインカーにまつわるアレコレ
レバーを軽く押すだけで数回点灯し、自動で消える「ワンタッチウインカー」。
欧州発の便利機能で、近年は国内でも普及が進んでいますが、使い方には注意が必要だといいます。どういうことでしょうか。

ワンタッチウインカーは、車線変更の際にウインカーレバーを戻す手間を省けます。SNSなどでも「車線変更がスムーズにできて便利」と評価する声がみられます。
しかし一方では、「法律に違反しているのではないか」という声も。
ウインカー(方向指示器)は、道路交通法第53条において以下のように規定されています。
「車両の運転者は、左折し、右折し、転回し、徐行し、停止し、後退し、又は同一方向に進行しながら進路を変えるときは、手、方向指示器又は灯火により合図をし、かつ、これらの行為が終わるまで当該合図を継続しなければならない」
さらに合図を行う時期について、道路交通法施行令第21条で以下のように記されています。
「右左折や転回は30メートル手前に達したとき、進路変更は行為をしようとするときの3秒前のとき」
つまりウインカーを操作する際は、30メートル手前もしくは3秒前から、行為が終わるまで点灯させ続けなくてはならないのです。
現在広く装備されているワンタッチウインカーにおける3回程度の点滅では、この道路交通法などに違反しているのではないか、という指摘です。
たしかにウインカーは、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第137条において、「毎分60回以上120回以下の一定の周期で点滅するものであること」とされています。
もっとも遅い毎分60回だったとしても、点灯は1秒間に1回。3回の点灯では、進路変更の3秒前に点灯させると、進路変更を始めようとするときにはすでに消えてしまうことになります。
この状況を懸念してか、トヨタは導入に慎重な姿勢をとっています。
同社のワンタッチウインカーは一般的な3回ではなく、5回点滅とする設定を基本としているのです。
ただ5回でも、状況によっては不十分となる可能性もあります。また自動車メーカーが純正機能として採用することで、「ウインカーは数回で十分」という誤解を生む懸念もあります。
法律的な問題のほかにも、わずか数回しか点灯しないワンタッチウインカーで、割り込んでくるように自車の前に車線変更をされるとイラっとするという人の声もSNSなどでは散見されます。
また、ウインカー操作を誤ったときに、キャンセルしようとしたら逆方向のウインカーが点いてしまって恥ずかしかったなど、「誤操作」時の対処のやりにくさを指摘する人もいます。
特に、ウインカーレバーを押し込んでもすぐ定位置に戻る「リターン式ウインカーレバー」を採用する車種では、消灯操作に慣れるまで混乱しやすく、レンタカーなど慣れていないクルマでは戸惑う人も多いようです。
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メーカーや車種によっては、ワンタッチ機能をOFFに設定することができたり、海外メーカーの一部では、点滅回数を選択できたりするクルマも登場しています。
ワンタッチウインカーはなくても困らない機能ではありますが、使いこなしていくと便利な機能でもあります。
今後の改良やユーザーへの周知によって、より受け入れられる装備になっていくことを期待したいです。
Writer: 吉川 賢一
日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイライン等のFR高級車の開発に従事。新型車や新技術の背景にあるストーリーや、作り手視点の面白さを伝えるため執筆中。趣味は10分の1スケールRCカーのレース参戦、クルマ模型収集、サウナなど







































