復活の”ワーゲンバス”!? 新「“3列7人乗り”高級ミニバン」登場! 全長5m級のロング仕様は広いだけじゃなく走りもスゴイ!? フォルクスワーゲン「IDバズ」の実力とは?
2025年6月に日本で発表されたフォルクスワーゲン「ID.Buzz(アイディー バズ)」は、ワーゲンバスの愛称で親しまれた「タイプ2」のデザインを継承しつつ、BEV(電気自動車)専用のミニバンとして登場した唯一無二のクルマです。 日本の公道で乗ってみるとどんな印象を受けるのでしょうか。

日本は「ミニバン帝国」と呼ばれていますが、実は日本で購入できるBEVのミニバンはIDバズのみです。ラインナップはノーマルホイールベース仕様(2-2-2の6人乗り)の「Pro」と、ロングホイールベース仕様(2-3-2の7人乗り)の「Pro Long Wheelbase」の2種類。
今回試乗したロングホイールベース仕様のボディサイズは全長4965mm×全幅1985mm×全高1925mm、ホイールベースは3240mmに達します。
ノーマルホイールベースは全長4715mm・ホイールベース2990mmで、その他の数値は同じです。ミニバンと呼ぶには大きなサイズですが、高級ミニバンの代表格であるトヨタ「アルファード」と比べると以下の通りです。
全長-30mm/全幅+135mm/全高-10mm/ホイールベース+240mm。
実は全長はアルファードの方がわずかに長いのですが、全幅とホイールベースは大幅にIDバズが上回ります。実車を前にすると「大きい!」というより「長い!」と感じるのはこのためで、ホイールベースとスライドドアの長さが伸びやかな印象を与えています。
伸びやかに見えるエクステリアには、タイプ2のオマージュが随所に散りばめられています。ツートンカラーの塗り分け、大きなVWロゴ、スライディングウィンドーなどが代表例です。
ただ、どうせここまでオマージュするなら、フォルクスワーゲンで先に登場したクロスオーバーBEV「ID.4」と同じフロントフェイスではなく、タイプ2のような丸目ヘッドライトにして欲しかった、と筆者は思いました。
そんなことを考えながら試乗を開始。大きな車体ながら、直線的なボディラインと大きなガラスエリアのおかげで車両感覚は掴みやすい印象です。しかし、狭い路地や駐車時はさすがに気を遣います。3mを超えるホイールベースの影響で最小回転半径は6m超え、しかも後輪操舵も備わらないため内輪差が大きいのです。
他のクルマと同じ感覚で運転すると後輪を縁石に乗り上げてしまう恐れがあるので注意が必要でしょう。
ただし、このロングホイールベースはメリットも大きく、高速域では抜群の安定感を発揮します。直進安定性が高く、振られ感の少なさはもちろん、特に感心したのは高速道路の長い旋回区間です。
東名高速・大井松田IC~御殿場IC間のようにコーナーが続く区間でも、IDバズは安定したフラットライドを見せてくれました。床下バッテリーによる低重心レイアウトも相まって、大きな3列シート車とは思えない安心感があります。
ワインディングの下りでは、シフトをBレンジに入れて回生ブレーキを効かせながら走ると、ペダル操作の回数が減って疲労感も少なめ。しかもバッテリー残量がわずかに回復するのも確認でき、「BEVのワインディングは違った楽しさがある」と実感できました。
通常のブレーキでも回生が効きますが、ブレーキフィールは自然で違和感がなく、内燃機関車に慣れた人でもストレスなく扱えます。
取り回しには苦労する部分もありますが、これほどシームレスでフラットライド、しかも静粛性の高い3列シート車は日本市場に存在しません。個性的なデザインに惹かれるのはもちろん、トップクラスの快適性を理由に選んでも満足できる一台だと感じました。
なおIDバズの価格(消費税込)は、6人乗りのProが888万9000円、7人乗りのPro Long Wheelbaseが997万9000円です。
Writer: 西川昇吾
1997年生まれ、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。大学時代から自動車ライターとしての活動をスタートさせる。現在は新車情報のほか、自動車に関するアイテムや文化、新技術や新サービスの記事執筆も手掛ける。また自身でのモータースポーツ活動もしており、その経験を基にした車両評価も行う。








































































