ユーザーの負担増に絶対反対! 自工会が強く反発!? 結局クルマの税金どうなる? 暫定税率廃止のつけをユーザーに背負わるな!

日本自動車工業会は、ガソリン税の暫定税率が廃止された場合、その代替財源を自動車の車体課税に振り替えることに「断固反対」の姿勢を示しました。ユーザーの負担増につながる安易な付け替えは本末転倒だと指摘。複雑な自動車関連税制の抜本的な見直しを求め、国の税制改正の議論の行方が注目されます。

暫定税率廃止のつけをユーザーに背負わるな! 自工会が強く反発

「ガソリン税暫定税率廃止の代替財源について、車体課税への付け替えやユーザー負担増につながることは絶対反対」。

 自動車メーカー等でつくる業界団体の日本自動車工業会(自工会)が9月18日に公開した「令和8年 税制改正・予算に関する要望」の中でこのように記載されました。

 これはいったいどういうことなのでしょうか。順を追ってみていきましょう。

暫定税率廃止のつけをユーザーに背負わるな! 自工会が強く反発(画像はイメージ)
暫定税率廃止のつけをユーザーに背負わるな! 自工会が強く反発(画像はイメージ)

 今回の要望が出る1時間ほど前から、自工会は定例記者会見を開いており、その冒頭で片山正則会長はまず、いわゆるトランプ関税15%が最終的に適用になった件に触れ、次に車体課税に対する自工会としての意見を述べています。

 トランプ関税が従来の2.5%に25%を追加した27.5%から15%に引き下げられたことに対して、自動車産業が「壊滅的な打撃」を受けることは避けられたとして評価しました。

 それでも、関税15%は日本自動車産業界にとって大きな負担であるという認識を示しています。

 その上で、様々な要因によって先行き不透明なグローバル市場の中で、安定した需要がある国内市場の重要性が増しているとし、国内市場の需要がより円滑にまわるためには、長きに渡りユーザーにとって大きな負担となっている車体課税の抜本的な変革が必要だと、改めて主張したのです。

 自工会の主張は、国の税金に対する基本姿勢を示す税制改正大綱にすでに盛り込まれており、来年度(2026年4月1日)から車体課税の見直しを実施するために、関係省庁や与野党の間で議論が進んでいるところです。

 そうした議論と並行して行われているのが、いわゆるガゾリン税の暫定税率廃止についての議論です。

 この件については、野党7党が6月11日に「ガソリン暫定税率廃止法案」を共同で提出して衆議院で可決されたものの、当時は与党が過半数を維持していた参議院では可決に至りませんでした。

 その後、参議院選挙で与党が過半数割れとなり、改めて野党7党が8月1日にガゾリン前提税率廃止法案を提出し、11月1日の施行を目指して与野党間での新たなる議論がスタートしました。

 ところが、暫定税率廃止に伴う財源確保についてなどで与野党間の意見の溝が埋まらない状況が続いています。

 さらに、石破首相が退陣を決意し自民党が総裁選挙を控えている現在、ガソリン税の暫定税率廃止の議論が具体的にどう進んでいるのか、国民にはよく見えない状況になっている印象があります。

自工会の重点要望事項
自工会の重点要望事項

 そうした中、今回の自工会定例会見で片山会長は「ガソリン税暫定税率廃止と、それにかわる代替財源の議論が行われているが、代替財源を車体課税の引き上げにより穴埋めをするといったような声が一部で起きていることは認識している」と発言。

 その上で、こうした話は「本末転倒だ」と苦言を呈したのです。

 さらに「自工会としてはユーザー負担増につながることは断固反対」と言い切ったのです。

 あわせて「そもそも自動車重量税にも暫定税率が残存しており、これもあわせた議論が行われるのが筋だ」という見解を示しました。

 ここで話を整理するために、クルマの税金について振り返ってみましょう。

 まず、購入時には自動車所得に係る「環境性能割」と消費税がかかります。

 保有時には、「自動車税(または軽自動車税)」と「自動車重量税」がかかっています。

 これら、消費税を除いたものが実質的な車体課税となります。

 その上で、これまでに議論されている車体課税の抜本的な変革は大きく2つ。

 ひとつは、性能環境割の廃止。

 これについては、今回の自工会からの要望で改めて明記されています。

 もうひとつが、自動車税(軽自動車税)と自動車重量税を融合させた、新たなる税の構築です。

 今回の自工会の要望では「保有税改革」という表現があります。

 具体的には「道路損傷と環境負荷を根拠に、重量ベースの課税に統合・簡素化」するとしています。なお、軽自動車は定額課税の想定です。

 こうした保有時の新税に移行する中で、現在の自動車重量税にかかっている暫定税率も廃止されるのが「(税制改革の議論における)筋だ」というのが自工会の主張です。

 このように、クルマの税金の改革に関する自工会の主張は、ユーザーの立場になったものだと評価できますが、一方で財源の観点からは結果的にユーザーまたは国民全体への負担増になるかもしれません。

 いずれにしても、クルマの所得時と保有時を考えると、ガソリンや軽油などの燃料に対する税金も保有時にかかっている税金なのですから、ガソリン税暫定税率廃止の議論は車体課税を含めたクルマの税金の全体の議論として、ユーザーと国民全体が納得のいく形で決着することが望まれます。

 暫定税率廃止を含めたクルマの税金の変革に向けた最終調整について、ユーザーは注視する必要があると思います。

【画像】「えっ…?こんな搾取されてるの?」 これが国民を苦しめる「ガソリン税の仕組み」です。画像で見る(30枚以上)

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。

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