どんなトコロでも走れちゃう!? 三菱 新型「デリカミニ」がスゴすぎた! 軽だけど“三菱SUVの末っ子”!? オンロードもオフロードもイケる頼もしさを試乗で実感
三菱の軽自動車「デリカミニ」のフルモデルチェンジが、2025年9月18日に発表されました。2代目となった人気軽スーパーハイトワゴンにジャーナリストの山本シンヤ氏が試乗。オンロード、オフロード両方の走りをチェックしました。
抜群のハンドリング! 乗り心地も改善
2023年に登場したデリカミニは、2年で9万台を販売。カッコ可愛い「デザイン」とアウトドアシーンを想定した「走り」、そしてマスコットキャラクターの「デリ丸」の存在も相まって、2年で9万台を発売するスマッシュヒット作となりました。
そんなデリカミニが2代目となる新型に進化。「たった2年で世代交代は早くない?」と思う人もいるでしょうが、そもそもデリカミニは2020年に登場した「eKクロススペース」の販売不振(3年で3万台)から生まれたリリーフだったため、ハード的には世代交代の時期だった…というわけです。
今回、正式発表に先駆けて愛知県岡崎市にある三菱のテストコース(オンロード/オフロード)で試乗をしてきました

新型もNMKV(日産と三菱のジョイントベンチャー)が企画を行ない、日産が設計・開発、三菱が生産を担当すると言う役割は変わりませんが、見た目のみならず走りに関しても初代以上に三菱独自の“機能”や“味”をより色濃くプラスしているのが特徴です。
エクステリアはキープコンセプトですが、室内長を伸ばすためにAピラーの位置(ルーフの位置で10mm)と角度(8度)が見直されたことにより、スクエアなプロポーションがより際立っています。個人的に兄貴分(=「デリカD:5」)により似てきたな…と。
よりキュートになったヘッドライト、より力強さが増したバンパー+スキッドプレート、塗分けをドア部まで拡大したクラッディング風のブラック塗装、四角をモチーフにしたアクセントやホイールデザインにより“ギア感”も増しています。
ボディカラーは新色となるサンドベージュ&デニムブルーを含めたモノトーン9色、2トーン6色と豊富に用意されています。
インテリアは大幅刷新です。基本の操作系レイアウトは不変ですが、水平基調のインパネデザインに12.3インチ(三菱初のGoogle搭載)+7インチ(フル液晶メーター)の統合型ディスプレイ、2本スポークのステアリング(本革以上の触感のスムースレザー)、ブラウン&グレーのコーディネーション(上級グレード)などにより、フラッグシップの「アウトランダーPHEV」に負けず劣らずのスマートかつ高品質な仕上げとなっています。
ちなみに基本的なデザインは兄弟車・日産「ルークス」と同じですが、メーターデザインや助手席インパネトレイ、更にドライブモードダイヤル付きのエアコンパネル(4WDのみ)などがデリカミニ独自仕様となります。
また、ドライブモードダイヤルはアウトランダーPHEVと同じ部品ですが、このダイヤル装着で本来エアコンパネルにあったステアリングヒータースイッチがインパネ右側に移動。一般的な目線だと「使い勝手悪いよね」ですが、開発陣の「ダイヤルの位置はどうしても譲れなかった」という話を聞き、納得しました。
居住性は従来モデルと大きな差はありませんが、実際に座るとより開放感のある空間設計(インパネデザインやAピラーの細さのおかげ)やシートクッションの厚み(撥水シート生地)、よりフラットになったシートアレンジ(段差が少ない)などにより、数値だけではない“深化”も感じられます。

走りの部分はどうでしょうか。パワートレインは直列3気筒NA/ターボは不変ですが、従来モデルで採用のマイルドハイブリッドを廃止。この辺りは費用対効果による「選択と集中」だと思いますが、エンジンのフリクションの低減、冷却系の見直しなどにより従来モデル同等の燃費を確保しています。
今回はターボ+4WDを試乗。従来モデルとの動力性能の差はほぼ感じないレベルですが、アクセルを踏んだ時のCVT特有の唐突な回転上昇を抑えたスムーズなフィーリング(従来モデルは回転先行で唐突感あり)とまるでエンジンが遠くで回っているかのような静粛性(3500~4000rpmくらいでも耳障りではない)に「本当に同じエンジンなの?」と疑ってしまったくらいです。
開発陣にその印象を伝えると、「スムーズなフィーリングは過度な回転上昇を抑えたCVTのチューニング、静粛性の高さは吸音ガラス(フロント)や遮音シート、シーリングなどの採用が効いている」とのことでした。後席試乗もさせてもらいましたが、前席との会話明瞭度は軽自動車トップレベルだと思います。
フットワークはどうでしょうか。基本は従来モデルの進化版となりますが、元々日産、三菱共に「素性が大事」と車体は軽自動車としては贅沢な設計になっています。新型はその素性をより活かす方向で各部を最適化(進化したEPS、高剛性スタビリンク、アルミ製ナックル、ブッシュの位置変更など)されています。
そのために選択されたダンパーは摺動(しゅうどう)抵抗を綿密に制御することで乗り心地と走行安定性を両立するカヤバ製「プロスムースで、この性能を存分に活かしたセットアップ(特に出しにくい極微低速の減衰をしっかりとコントロール)が施されています。タイヤは従来モデルと変わらずダンロップ製の165/60R15が採用されています。

まずはオンロードからです。いきなり結論ですが「軽スーパーハイト系を忘れるハンドリング」です。一般的に軽スーパーハイト系はロールオーバー防止のためにフロントは回頭性を落とす方向、リアは“ド安定”というセットになりがちですが、デリカミニのフロントは素直な回頭性、リアは安定方向ながらも比較的動かす方向でフロントにしっかりと追従して4輪で曲がる印象です。
その時のコーナリングの“様”は軽スーパーハイト系というよりも軽ハイト系…それも床下にバッテリーを搭載した「eKクロスEV」に負けずとも劣らないレベル。ロールは比較的大きめですがロールスピードは穏やかかつ安定しながらジワーッと踏ん張る印象で、まるでトレッドが広がったかのような安定感が備えられているのです。この辺りの味付けのさじ加減はデリカD:5にソックリ(実際にデリカD:5で同じコースを走って確認済み)。
この安定感は直進安定性にも寄与しており、テストコースの高速周回路で130km/hでバンクの最上段(最大傾斜角48度)に進入しても不安なく走ることができました。加えて、運転支援機能の「MIパイロット」を活用すればロングドライブも疲れやストレス無く楽々こなせるでしょう。
更に高速周回路ではスラローム(80~100km/h)、そしてハンドリング路(速度域が高くRが厳しい上に狭い)でハイスピードコーナリングと非日常域の性能も試してみましたが、難なくこなすだけでなく操作に忠実に“気持ちよく”走れる性能に思わずニンマリ。欲を言えばEPSの味付けがもう少しドシっと手ごたえ重視だと三菱らしさは増すかな…と。
それでいながら、乗り心地が犠牲になっているどころか大きく向上しています。テストコースにある様々な路面を模擬したフィーリング路を走らせてみましたが、段差が丸く感じる入力のマルさ、ストロークでショックを吸収する足さばき、ドッシリ感すら感じるフラット感などは、兄貴分のデリカD:5よりもレベルはハッキリ言って上です。
この辺りはカヤバ製プロスムースの成せる技ですが、開発陣は「プロスムースはポン付けではダメで、それを活かす車体とその特性を活かしたセットアップが大事です」と教えてくれました。





































