ホンダ「“最強”軽トラ!?」に注目! ワイドフェンダー&ロールバーで“武装”!? 5速MT×ターボ搭載のスポーツトラック「T880」コンセプトが超スゴかった!
「東京オートサロン(TAS)2017」でホンダアクセスの有志が作り上げ、大きな話題を呼んだコンセプトカー「T880」。今なおカルト的な人気を誇るこのクルマは、いったいどのようなモデルだったのでしょうか。
働くクルマを“楽しむマシン”へ!?
2017年1月に開催されたカスタムカーイベント「東京オートサロン(TAS)2017」でホンダアクセスの有志チーム「N Lab.」が手づくりで完成させた、走行可能なコンセプトカー「T880」。
テーマは「働くクルマはカッコいい!」。ベースとなったのは、なんと「軽トラック」でした。

ベースに選ばれたのは、ミッドシップレイアウト×後輪駆動の軽トラック「アクティ」。
1960年代の名車「TN360」を思わせる丸目ヘッドライトと、大胆にチョップドルーフ化されたルーフが、レトロとモダンを融合させています。
ワンオフで製作されたボディは、フロントウインドウの立て直しやドアパネルの延長によってキャビンを拡大。張り出したオーバーフェンダーにクラシカルな八本スポークホイールを組み合わせ、軽トラックとは思えないワイド&ローのシルエットを強調しています。
荷台にはオートバイが固定できる凹みを設け、テールゲートは観音開きと下開きの二段構造とするなど、趣味と実用を両立させる工夫も盛り込まれました。
インテリアは、ロールケージが張り巡らされたスパルタン仕様で、シンプルなベンチシートを備えます。
メータークラスターは社外品に換装され、5速MTのシフトレバーにはロングタイプを採用。ドライバーをレーシーな世界へ誘うコクピットに仕立てられています。
パワートレインに「バモス」の「E07Z」型660ccターボエンジンを搭載し、ビートのクロスレシオ5速MTで後輪を駆動。排気は中央一本出しの特製マフラーが担い、ターボ車ならではの軽快なサウンドを響かせます。
T880の車名の由来は、自然吸気エンジン換算で880ccとなることからでした。
前輪には4ポットキャリパー、後輪には「S660」用ディスクブレーキを流用。車高調サスペンションと相まって、“走れる軽トラ”と呼ぶにふさわしい制動力とハンドリングを獲得していました。
具体的な出力や車重は非公表ですが、サーキットで実施された試走レポートでは、ノーマルの「アクティ」を凌ぐ加速と最高速を記録したと伝えられています。
開発には、部署と役職を超えて集まった約15名が1年を費やしました。設計から曲げ加工、溶接、塗装まで自前でこなす姿勢は、ホンダ創業期の「やらまいか」精神を現代に蘇らせる取り組みといえるでしょう。
かなり本気でつくられた様子のT880が、けっきょく量産化されなかった理由は何なのでしょうか。
大きいのは、そもそもベース車であるアクティが2021年で生産を終了した点にあります。その後もホンダは、後継の軽トラックを開発していません。
量産は叶いませんでしたが、T880のメッセージはその後のホンダ車とアクセサリービジネスに影響を与えました。
翌年登場した「N-VAN」は技術的な継承こそありませんが、「実用車でも趣味を楽しむ」という価値観を市場へ提示し、ユーザーの支持を集めています。
また、同じN Lab.が手がけた「S660 ネオクラシック」の外装キットが市販化された事例は、T880の“遊び心”を量産車向けに具現化した好例といえるでしょう。
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軽トラックでありながらスポーツカーの魂を宿すT880は、ショーモデルであるがゆえに、純度の高い情熱を体現しました。その存在はホンダファンの心に刻まれ、企業文化の中で新たな挑戦を促す火種となっています。
市販化の予定はなくとも、「働くクルマをカッコよく、そして走って楽しいものへ」というT880の提案は、今も色褪せることはありません。
2025年秋には、日本最大の自動車ショー「ジャパンモビリティショー2025」が開催されます。
同じ精神を宿す新たなコンセプトモデルが現れ、来場者を楽しませてくれることを期待したいところです。
Writer: 佐藤 亨
自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。













































