驚異の830万円! 「進化版GRヤリス」発売! なぜ日本より高額? 中国市場特有の事情とは
GRヤリスは世界ラリー選手権(WRC)向け新マシンのホモロゲーションを取得する目的で、これまでのWRC参戦で培った開発ノウハウを盛り込んだ自社開発のホットハッチとして2020年に発売されました。今回新たに「進化版(2024年登場)」が中国でも発売されました。
進化版GRヤリス 中国で発売 驚異の830万円の理由は?
トヨタの3ドアホットハッチ「GRヤリス」の「進化版(2024年登場)」が中国でも発売されました。
その驚きの価格に注目が集まっています。

GRヤリスは世界ラリー選手権(WRC)向け新マシンのホモロゲーションを取得する目的で、これまでのWRC参戦で培った開発ノウハウを盛り込んだ自社開発のホットハッチとして2020年に発売されました。
当初の上位モデルでは専用開発NOG16E-GTS型1.6リッター直列3気筒ターボエンジンを採用、のちにこのエンジンは後発の「GRカローラ」や、レクサスのコンパクトSUV「LBX」のハイパフォーマンスモデル「MORIZO RR」にも搭載されています。
2024年1月には初のマイナーチェンジを実施、それまでの4年間で活躍した国内外の競技シーンからのフィードバックを反映した刷新が行なわれました。
もっとも特筆すべき点は外装のアップデートや、パフォーマンス重視の新開発8速AT「GR-DAT」の搭載などで、出力・トルクの向上も合わさって内外ともに生まれ変わったモデルとなります。
そんな進化版GRヤリスですが、日本から遅れること約1年半、2025年8月末に中国でも販売が開始されました。
中国向け「進化版」は2024年8月に投入が発表されていたものの、取り扱うディーラーを公表するにとどまっており、発売時期は定かではありませんでした。
その公表されたディーラー数も中国全土でわずか9か所、ほとんどが北京や上海、広州、成都といった大都市に所在する拠点です。
中国向けモデルのスペックは基本的に日本版と同一で、ボディサイズは全長3995 mm x 全幅1805 mm x 全高1455 mm、G16E-GTSの性能も出力304 ps・トルク400 Nmになると見られます。
一方で価格は39.98万元(約826.4万円)とされており、日本では最上位グレード「RZ “High performance”」でも498万円から買えることを考えると、非常に高い価格設定となっています。
ここまで値段が高いのは、実は中国特有の事情が絡んでいるからなのです。
まず大前提として、中国では輸入車に対して非常に高い15%の関税を設けています。
参考までに、日本は輸入車に対して一切の関税を設けていません。外資系メーカーは関税を回避するために中国現地生産を行なおうとしますが、2022年までは中国メーカーとの合弁会社を介して生産する必要がありました。

現在ではそのルールは撤廃されましたが、以前より構築されている関係を維持したままなのが一般的です。
例えば、トヨタは第一汽車との「一汽トヨタ」、広州汽車との「広汽トヨタ」、ホンダは東風汽車との「東風ホンダ」、広州汽車との「広汽ホンダ」など、それぞれで設立した合弁を通して中国における製造・販売を行なっています。
日本メーカー以外では、ゼネラルモータースと上海汽車の「上汽GM」、フォルクスワーゲンと上海汽車/第一汽車の「上汽フォルクスワーゲン/一汽フォルクスワーゲン」、シトロエンと東風汽車の「東風シトロエン」など、多くの合弁会社が存在します。
ですが、すべてのモデルを中国国内で生産するわけではなく、最上級モデルやスポーツモデルなどは輸入車として販売される例が一般的です。
トヨタではアルファードやヴェルファイア(中国名:クラウンヴェルファイア)、GRスープラ、GR86、コースター、センチュリーが輸入車として販売されており、GRヤリスも同様です。
例えば、アルファード/クラウン ヴェルファイアは89万9000元(邦貨換算:約1861.4万円)、GRスープラは2リッターモデルが49万9000元(約1033.2万円)、3リッターモデルが62万9000元(約1302.4万円)など、どれも日本より遥かに高い価格です。
また、優先的に納車するための追加費用をディーラー独自で設けることもあるので、例えばアルファードだと最終的な購入金額は日本円で2500万円近くまで膨らむこともあります。
また、GR86が2022年に中国で発売された際は386台限定で販売されました。
これに加えて中国独自の排ガス規制へ適合できないことを理由に、販売地域は規制が施行されていない一部地域のみに限られていました。
今回発売された進化版GRヤリスは取り扱うディーラーは少ないものの、特に地域や台数は限定されていないようです。
日本製スポーツカーは他にも、スバル BRZやホンダ シビック タイプRなどが中国にて輸入車として販売されています。
中でもBRZは30万元(約620万円)前後から買える安い選択肢として、若者を中心に人気を博している状況です。
また、シビック タイプRも34万元(約700万円)と日本よりも高いですが、ホンダファンからの支持は揺るぎません。
トヨタは中国市場で電動化を推し進めるとともに、各モーターショーでGRブランドの宣伝にも力を入れており、まさに多方面戦略と言える展開を行なっています。
Writer: 中国車研究家 加藤ヒロト
下関生まれ、横浜在住。2017年に初めて訪中した際に中国車の面白さに感動、情報を集めるうちに自ら発信するようになる。現在は慶應義塾大学環境情報学部にて学ぶかたわら、雑誌やウェブへの寄稿のみならず、同人誌「中国自動車ガイドブック」も年2回ほど頒布する。愛車は98年式トヨタ カレン、86年式トヨタ カリーナED、そして並行輸入の13年式MG6 GT。




































