米国製トヨタ車は日本に来るのか? トランプ関税15%で一件落着も、どうなる!? 日系自動車メーカーの対応策と80兆円投資の行先

米国のトランプ大統領は9月4日(現地時間)、アメリカの自動車関税を15%とする大統領令に署名しました。しかし、気になるのは交換条件として提示されている80兆円の巨額投資についてです。今後、どのような展開を見せるのでしょうか。ジャーナリストの桃田健史氏が考察します。

トヨタの日本未導入モデルはどうなるのか!?

 トランプ関税に関連した日米政府間通商交渉は一息ついたものの、トランプ大統領お得意の「ディール」として持ち出された交換条件が今後、日本の自動車産業に大きな影響を及ぼしかねません。

 交換条件とは、80兆円という巨額の投資のこと。これにより以前にも話題となった、アメリカから日本への日本車の新車輸入が本当に実現するかもしれません。

トランプ大統領は、アメリカの自動車関税を15%とする大統領令に署名した(画像はイメージ、クレジット:マンデル・ンガン /AFP=時事)
トランプ大統領は、アメリカの自動車関税を15%とする大統領令に署名した(画像はイメージ、クレジット:マンデル・ンガン /AFP=時事)

 まずは関税について、話を進めます。

 アメリカの自動車関税、いわゆるトランプ関税が15%になることがやっと決まりました。既存の2.5%に新たに12.5%が追加されて15%。経済財政・再生担当大臣が再び渡米し、アメリカ東部現地時間9月4日、ラトニック商務長官との会談で大統領令に盛り込んだ形です。

 これまでの交渉で自動車関税15%については日米で基本合意はできていたものの、大統領令に明記することを日本の自動車産業界は強く望んでいており、これでまずは自動車メーカーや自動車部品メーカーとしてはホッと一息といったところでしょう。

 とはいえ、自動車関税がこれまでの6倍になるのですから自動車メーカーの収益を圧迫することには変わりはありません。

 例えば、トヨタは8月7日に公表した2026年3月期第1四半期決算で、営業利益は前年同期比で1000億円減の1兆2000億円で、米国関税の影響を4500億円と換算しました。通期見通しとしては、連結販売台数は980万台と先回見通しを維持したものの、営業利益では米国関税の影響で1兆4000億円の減益。これは自動車関税15%を想定したものです。

 さらに、為替変動の影響で7250億円の減益、また資材価格の高騰などで3000億円の減益など経営環境の厳しさは増す方向にあります。

 対応策としては、台数増、原価改善、バリュー・チェーン収益拡大などで約9000億円の改善努力としていますが、これでも米国関税分のリカバリーには足らない計算です。

 そのほか、日本からアメリカへの新車輸出が多いメーカーにはマツダとスバルがあります。マツダはトヨタと協業する米アラバマ工場で生産体制の調整と、メキシコ生産拠点からアメリカへの輸出をどう変革するかが課題だと言えます。

 また、スバルは米インディアナ工場での生産モデルの調整や、群馬県太田市の既存工場新設予定の工場、そして埼玉県北本工場でのストロングハイブリッド用トランスアクスルの生産の調整をどのように進めるのか、トランプ関税を踏まえてアメリカでのEVシフトや電動化市場の動きを注視しながら事業計画を修正していくことになるでしょう。

 いずれにしても、日本の自動車メーカー各社にとってアメリカの自動車税率の増加は経営に大きな影響を与えることは確実な情勢だと言えます。

 一方で、日本の自動車産業にとって新たな課題は「80兆円投資」です。自動車関税を含めた相互関税に関する交渉(ディール)の落としどころとして、米国産の米、大豆、トウモロコシなどの農産物や、食物由来などを含めたバイオエタノールなどの輸入に加えて、総額80兆円にも及ぶ巨額のアメリカ向け投資を約束しました。

 本稿執筆時点で、80兆円投資はいつからいつまでの実施なのかという期間が不明であり、またどのような産業分野で行うのかも不明です。アメリカとしては、投資分野はアメリカ側
が選定して製造業で新たに数十万人規模の雇用を生むものとしています。

 日本の産業界の現状を俯瞰してみますと、こうした規模感での投資が行える主力産業は自動車であることは明白です。仮に80兆円の半分の40兆円を自動車産業で負担するとなったとしても、自動車産業界として投資効果をどのように見出すのかが大きな課題になるでしょう。

 日本の自動車メーカーや自動車部品メーカーはすでにアメリカへ十分な投資を行っており、その結果として北米向けの新車供給体制はかなり整っている状況なのですから。

 対応策としては、第一にはメキシコやカナダから新車の最終組立工場の一部や、関連する自動車部品工場をアメリカ国内に移転すること。

また、中長期的な視点でアメリカでも進むであろうEVシフトの関連投資や、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)のさらなる進化を念頭に置いた最新鋭の研究開発拠点の整備などは、当然出てくる話でしょう。

 さらに一歩踏み込んで考えれば、アメリカを日本自動車産業界の輸出拠点として捉え、グローバル戦略を大きく見直す案が浮上するはずです。

結果として、トヨタが以前提案したとされる、アメリカで生産した新車の日本向け輸出が実現するかもしれません。

 その場合、「グランドハイランダー」「4ランナー」「セコイア」「シエナ」「タコマ」「タンドラ」といった北米市場を優先したモデルの一部を日本に輸出するのか、それとも「RAV4」などの生産の一部を日本からアメリカに移管するのかなど、様々な選択肢が考えられます。

 日本の自動車メーカー各社は今、トランプ関税の影響を最小化するための企業努力を着実に進めると同時に、直前に迫った巨額投資に対する将来構想を早期に検討することが求められています。

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Writer: くるまのニュース編集部

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