「廃止する意味ないのでは?」 ガソリン減税の代わりに「新税」の噂… そもそも「暫定税率」とは?

ガソリン減税について、本稿執筆時点での現状を見ていきましょう。与野党の実務者による4回目の協議が8月28日に行われ、9月1日の週には結論を出すべく、さらなる協議を進めるとしています。果たして今後どうなっていくのでしょうか。

どうなるガソリン減税!? 「ユーザーの負担は結局変わらないか増えるかも」と言われている理由は

 いわゆるガソリン減税に関連して、様々な情報が飛び交っています。

 目立つのは、ガソリンの暫定税率が廃止されても、また新しい税金ができるので、ユーザーの負担は結局変わらない、または増えるかもしれないといったものです。

 一部ユーザーからは過去に浮上した「走行課税」に関する噂も出ている状況です。

 果たして、今後どうなっていくのでしょうか。

(画像はイメージ/photoAC)
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 ガソリン減税について、本稿執筆時点での現状を見ていきましょう。与野党の実務者による4回目の協議が8月28日に行われ、9月1日の週には結論を出すべく、さらなる協議を進めるとしています。

 また、全国知事会会長の村井嘉浩 宮城県知事は8月27日、自民党の森山幹事長に対してガソリン暫定税率廃止に関する申し入れをしています。その中で、旧暫定税率廃止に伴う地方財源が確保されることを強く要望しました。

 一方で、朝日新聞が8月24日に、政府が老朽化した道路や上下水道の修繕を目的とした新税を検討し、それがガソリン減税の財源になる模様という記事を掲載しました。

 こうした一連の流れから、SNSなどで自動車に関連した税金のあり方について様々な声が出て、それらが拡散している状況です。

 では、こうした動きをさらに詳しく見ていきましょう。
 いわゆるガソリン減税については、野党7党(立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、日本共産党、参政党、日本保守党、社会民主党)が8月1日に「ガソリン暫定税率廃止法案」(正式名称:租税特別措置法及び東日本大震災の被害者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案)を衆院に再提出しました。

 ここでいう再提出とは、6月11日に衆院に提出して可決したものの、参議院では与党によって廃案になったため、改めて提出したものです。

 先の参議院選挙で与党は過半数割れをしたことで、今回の法案の再提出によってガソリン減税が実現する可能性が高まっていると言えます。

 ただし、与野党の実務者協議において、野党の間でもガソリン減税に伴う財源について主張の違いがあるため、前述のように9月1日の週に最終的な方向性を与野党で決めるためには、財源に対する”落としどころ”を早急に決める必要があります。現時点では、ガソリン減税の実施は「年内のできるだけ早い時期」としています。

(画像はイメージ/photoAC)

 ここで、ガソリン減税の中身を振り返ってみましょう。

 国税としては、揮発油税、地方揮発油税、石油ガス税。また、地方税としては都道府県税として軽油引取税がかかります。その上で、旧暫定税率については、ガソリンが25.1円、軽油が17.1円かかっています。

 旧暫定税率分は合計で年間約1.5兆円で、すべて実施された場合、都道府県では約5000億円が減収になると見込まれます。
 
 次に、朝日新聞が報じた国土強靭化(きょうじんか)という話についてです。

 これは、内閣官房 国土強靭化推進室が示した「令和8年度 国土強靭化に資する税制改正要望事項の概要」に関連したものです。国は国土強靭化について「大規模自然災害時に、人命を守り、経済社会への被害が致命的にならず、迅速に回復する『強さとしなやかさ』を備えた国土、経済社会システムを平時から構築していくこと」と定義しています。

 これを進める上で、今回の「税制改正要望事項の概要」では合計13の視点で具体的な税の活用を記載しているのですが、このうち12点については「延長」や「拡充」としているのに対して、13番目が「新規」となっています。

 13番目とは、「第1次国土強靭化実施中期計画等を踏まえた財政確保方策の検討の開始」で、これを関係省庁で検討するとしています。

 この「新規」の税について、報道ではガソリンなどの燃料課税の可能性について触れているため、これでは旧暫定税率を廃止しても結局、ユーザーの負担は変わらない、または増える可能性もあるのではないかという意見がSNSなどで広がっていると言えます。

 そもそも、自動車関連の税金については、車体課税が来年度(2026年4月1日)から抜本的に変わります。昨年の税制改正大綱の中で記されているからです。

 検討されているのは、性能環境割の廃止、また自動車税(軽自動車税)と自動車重量税を融合させた「新税」です。実は、自動車重量税にも旧暫定税率がかかっています。

 以上をまとめてみましょう。

―――
・ガゾリン税(旧暫定税率)の廃止は、年内の早い時期に実施される可能性が高い
・軽油に関する旧暫定税率の廃止について、現時点では目処は立っていない
・国土強靭化に関して、新税の検討が始まる
・車体課税の抜本改正は来年度に行われる予定で、それに向けた調整が進んでいる
―――

 そのほか、自動車関連の税金として、道路の損傷に対するユーザー負担をいう観点で走行距離課税という考え方があります。

 以前、与党税制調査会で議論になったものの、国会議員の中からも反論が出たり、SNSなどで賛否両論となったことがありますが、現時点では各方面で走行距離課税に関する議論が再開しているかどうかは不明です。

 こうした各種の動きが最終的にどのように連携するのか、それとも連携しないのか。政府、与野党、関係省庁の今後の動きを注視していきたいと思います。

【画像】「えっ…?こんな搾取されてるの?」 これが国民を苦しめる「ガソリン税の仕組み」です。画像で見る(30枚以上)

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。

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