カッコイイだけじゃないネオクラシック! モト・グッツィ「V9 ボバー」
両膝に触れるシリンダーヘッド、個性的なエンジンを堪能できる
跨ってまず感じるのは、車体のスリムさ。ネイキッドスポーツのようなアップライトなライディングポジションで、ステップも若干前寄りのリラックスできる乗車姿勢。シートも低く、足着き性に優れる点も馴染みやすい。シリンダーヘッドが両ヒザに触れ、縦置きVツインが強く主張している。イタリアの名門モト・グッツィをこれから走らせると思うと、ワクワクしてきます。
アイドリングでVツインならではの小気味よい排気音を耳にすると、アクセルをグイッとひと捻りせずにいられない。テールがリフトし、一瞬だけ車体が右に傾くトルクリアクションを味わいたいのです。これが健在なことを確かめると、思わず頬が緩んでがしまいます。
走りは軽快そのもの。粒の細かい鼓動感を伴ってエンジンがスムーズに回り、加速も力強い。ミドルレンジからトルクが太くなって、アクセルを開けて楽しいのは、さすがイタリアン。不快な振動はなく、上品さを伴っているのもいい。
前後16インチの足まわりは低重心とクイックな旋回性を両立し、コーナーでの身のこなしもすばしっこく、正立フォークとツインショックの前後サスペンションは路面追従性に優れ、ストロークの奥で荷重が強くかかってもしっかり踏ん張ってくれます。
見た目からはクルーザー然としたイメージを受けますが、走ってみるとスポーティな走りが楽しめ、コーナーを駆け抜けるたびにアクセル開度が少しずつ大きくなってしまいます。レトロ感とカスタムテイストを強調したスタイル重視のモデルと、見くびるのは間違い。エンジンの味わい深さに酔いしれながらコーナーを駆け抜ける、ワインディング三昧のツーリングに出掛けたくなるマシンです。
モト・グッツィ「V9 BOBBER(ボバー)」の価格は、124万8000円(税込)です。
【了】
Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。