トヨタの「“立ち乗り”コンパクトカー」! 斬新「ニョキニョキ」ヘッドライト&!超斬新ボディ採用! 衝撃すぎる米の“でんでん虫マシン”「NYC」とは

トヨタがかつて北米で展開した若者向けブランド「サイオン」。その歴史の中で、ショーにすら出展されず闇に葬られた一台のコンセプトカーがありました。はたして、その驚くべき中身とはどのようなものだったのでしょうか。

2012年登場! ニョキッと飛び出るヘッドライトに半立シート…

 コンセプトカーは、自動車メーカーが未来の技術やデザインの方向性を示すために製作されますが、過去を振り返ると、その存在すらほとんど知られることなく消えていった“謎多きモデル”も存在します。

 2012年に製作されたサイオン「NYC」コンセプトも、まさにその一台です。

え?カタツムリ?
え?カタツムリ?

 このクルマは、トヨタの北米デザイン拠点「CALTY(キャルティ)」が生み出した、未来の都市モビリティに対する過激なビジョンでした。

 エクステリアは、非常に背の高いガラスエリアと、カタツムリの目のようにボンネットから突き出た縦型のヘッドライトが特徴で、“でんでん虫”という愛称がしっくりくる、なんともファンキーなデザインです。

 都市の狭い道路をすり抜けるために設置面積は極小に抑えられつつ、視界は最大限に確保されるという、機能性を突き詰めた結果のスタイルでした。

 しかし、このクルマの最も衝撃的な部分はインテリアにあります。前席の乗員は座るのではなく、「半立位」の姿勢で背もたれに寄りかかるという前代未聞の構造が採用されていたのです。後部には折りたたみ式の補助シートも備わり、最大4人の乗車が可能とされていました。

 これは、都市部での短距離移動において、スクーターのように素早く乗り降りできることを狙った、人間工学的にも革新的な提案でした。

 パワートレインの詳細は明かされていませんが、この特殊な室内設計を可能にするには、床下にバッテリーを敷き詰めたEV構造であったと考えるのが自然でしょう。

 では、なぜこれほどユニークで先進的なコンセプトカーが、公の場に出ることなく幻に終わったのでしょうか。背景には、母体ブランドである「サイオン」が当時直面していた厳しい現実があります。

 サイオンは、2003年にトヨタが北米の若者向けに立ち上げた実験的ブランドでした。個性的なデザインや、価格交渉不要のワンプライス制などで当初は注目を集めましたが、2008年の金融危機以降は販売が急速に低迷し、経営は厳しい局面を迎えていました。

 さらに、キア「ソウル」などの競合車が登場したことや、2代目「xB」が初代のキャラクターを失いファンの期待を裏切ったこと、そして製品ラインナップへの十分な投資が行えなかったことも衰退に拍車をかけました。

 皮肉なことに、NYCコンセプトがデザインされた2012年は、サイオン経営陣がブランドの再建を模索し、“奇抜さ”を捨ててより保守的な車づくりへと舵を切った時期と重なります。ブランドが進もうとする方向と、このコンセプトカーの個性は、あまりにもかけ離れていたのです。

 また、「半立位」という異例の乗車姿勢は、安全基準や法規制の面でもハードルが高く、現実的な市販化は困難でした。最終的にサイオンブランドそのものが2016年に廃止されたことで、NYCコンセプトが日の目を見る機会は完全に失われました。

 サイオンNYCコンセプトは、時代を先取りしすぎた、あまりにも大胆な夢でした。それは、ブランドがその輝きを失いつつある中で放たれた、最後にして最も強烈な“閃光”だったのかもしれません。

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Writer: 佐藤 亨

自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。

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