トヨタが子供たちの「クルマ好き」を育てる!? 鍵は「若手育成」&「モータースポーツの入口」か 異例の「GR KART」開発中

自動車メーカーがレーシングカートを商品化を手掛けるのは世界的にも例がないとのことですが、TOYOTA GAZOO Racingは新たにレーシングカート「GR KART」を開発していることを明らかにしました。どのようなものなのでしょうか。

「クルマの楽しさを知ってもらいたい」カート開発に挑む理由とは

 TOYOTA GAZOO Racing(以下TGR)は、子供たちがモータースポーツに触れるための新たな入口づくりと、自動車業界の次なる担い手育成の一環としてレーシングカート「GR KART」を開発していることを明らかにしました。
 
 自動車メーカーがレーシングカートを商品化を手掛けるのは世界的にも例がないとのことですが、どのようなものなのでしょうか。

ノアやヴォクシーに乗るレーシングカート
ノアやヴォクシーに乗るレーシングカート

 TGRは「モータースポーツは将来にわたって持続可能なものになるのか?」そして「どうすれば将来のクルマ好きを増やしていけるのか?」という課題に対して「GR KART」という新しいアプローチで挑戦します。

 現代の子供たちはスマホやバーチャル、AIなどデジタルコンテンツに囲まれていますが、自動車業界にはリアルな体験も必要です。

 そこで「免許を取得する前の子供たちに対して”種まき”が必要」という考えから、クルマの楽しさを知ってもらうツールとして、「安価な入門レーシングカート」の開発をTGRは進めています。

 この取り組みの重要な目的は2つあります。

 1つはモータースポーツの裾野拡大です。F1やWRCなどの頂点につながる道を示し、「そこに行くにはどうすればいいの?」と夢見る子供たちに、”TGR”が道を示す存在になることを目指しています。

 もう1つの目的は、将来の「自動車業界の人材」「クルマ好き」の育成です。

 カートに触れてモータースポーツを経験した子供たちが、必ずしもプロドライバーを目指さなくても、エンジニアやメカニック、自動車メーカーや販売店、部品メーカーなど自動車業界の様々な職種に興味を持つきっかけになることを期待しています。

 そんな目的のためのひとつの解決策として、今回のGR KARTが検討されています。

 レーシングカートはモータースポーツの入口として最適ですが、日本では普及が進んでいません。

 JAFカートライセンス発給数は1995年頃にピークを迎え、現在はその半分程度にまで減少。国産カートは2004年に製造が中止され、それ以降は輸入車が主流となっています。

 普及を妨げる要因は明確で、「お金がかかる」「運ぶ手段がない」「どう始めればいいかわからない」「整備できない」「置き場がない」など、多くのハードルが存在します。

 特に価格面では、一般的なレーシングカートは150万円前後と高額で、さらに年間のランニングコストも初年度で約250万円、2年目以降も約100万円かかります。

 日本の平均世帯年収が524.2万円(中央値は405万円)であることを考えると、子供に数百万円のカート活動費を捻出できる家庭は限られています。

安価なレーシングカートを開発することで子供たちの「クルマ好き」を育てる!?
安価なレーシングカートを開発することで子供たちの「クルマ好き」を育てる!?

 こうした課題を解決するため、GR KARTは「原点回帰」をコンセプトに開発されています。

 GR KARTは、「シンプル!親しみやすい!」というカート本来の魅力を取り戻すことを目指しています。

 徹底してシンプルかつ低コストにこだわり、ワンメイク仕様でセッティングを触れない構造にすることで、メンテナンスの手間と時間を大幅に削減。

 フレームは欧州の最高級クロモリ材(約30万円)を使用する既存カートとは異なり、パイプ業界で最も安い規格材を使用し、ロボット溶接で製造されています。

 さらに、トヨタのクルマ解析技術を活用することで、安価でありながらも「楽しい!」と思える性能を実現しています。

 また、従来カートの運搬にはトヨタ「ハイエース」など大型バンが必要でしたが、その運搬の課題を解決するため、GR KARTではトヨタのミニバン「ノア」や「ヴォクシー」などのファミリーカーに載せて運べるサイズに設計されました。

 さらに、初心者向けの安全対策として、タイヤの接触を防ぎ、軽度の衝突にも耐えるフルカバーをワンタッチで装着できる機能も備えています。

従来のレーシングカートとは違う特徴は?
従来のレーシングカートとは違う特徴は?

 またGR KARTのもう1つの特徴は、子供自身が整備できるよう工夫されていることです。

 主要なボルトには締め付けトルク値が明示され、専用のトルクレンチも用意されています。

 また、安価なGR KART専用工具の開発も工具メーカーと検討中とのことです。

「自分で整備したマシンで走った!」という経験が子供たちの自信につながり、将来のクルマ好きを育むことにもつながります。

 当初はガソリン/カーボンニュートラル(CN)燃料の併用仕様で開発が進められていますが、将来に向けて水素エンジン仕様の開発も進行中とのことです。

 今回、実際に乗ってみましたが、従来のレーシングカートと比べても遜色ない操作性やレスポンスを体感できました。

 シンプルに「走りを楽しめた」ことから、前述のコストや運搬のわづわらしさが軽減されることには期待せずにいられません。

※ ※ ※

GR KARTの意義とは
GR KARTの意義とは

 今回のGR KARTにおける取り組み意義について、TGRの担当者は「GR KARTは、単なる営利目的の事業ではなく、『将来への種まき』として自動車業界の活性化や子供たちの育成を念頭に置いた取り組みです」と説明しています。

「将来のクルマ好きを増やしていくため」「モータースポーツが将来にわたって持続可能になるため」という長期的な視点に立ち、子供たちが自動車やモータースポーツに触れる機会を提供することが、このプロジェクトの本質といえます。

 なおGR KARTの発売時期や価格などの詳細はまだ明らかにされていませんが、モータースポーツの裾野を広げる新たな取り組みとして、今後の展開に注目が集まります。

 子供たちが気軽にモータースポーツを体験できる環境が整えば、将来のクルマ好きの増加や自動車業界の活性化につながる可能性も考えられます。

【画像】超楽しい! これが「新GRカート」です!(18枚)

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Writer: くるまのニュース編集部

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