新型「エルグランド」投入で業績低迷の日産を救えるか? トヨタの強敵「アルファード」を凌駕する「売れるクルマ」になる条件とは?
日産「エルグランド」が2026年度にフルモデルチェンジして発売される予定です。一体どのようなモデルとなって登場するのでしょうか。
新型「エルグランド」2026年度に発売へ!
業績が低迷している日産にとって喉から手が出るほど欲しいのは、改めて言うまでも無く「売れるクルマ」です。
【画像】超カッコいい! これが「新型エルグランド」!? 画像を見る(30枚以上)
事実上の引責辞任した内田前社長は記者会見で「儲かるクルマがない」と呟いた。売れるクルマを開発しなかったのは内田さんですけど、いずれにしろ1秒でも早いタイミングで「売れるクルマ」を出さなければならない。

そんな気持ちの表れが、2026年度に発売予定の新型「エルグランド」です。
日産のニュースルームでは「2026年度に発売予定の新型エルグランドのデザインを一部公開」となっているが、そもそも2026年度と言えば2026年4月から2027年3月までを指す。来年の2026年としなかったのは、2027年に発売される可能性が大きいからだと思う。
1年半も先に出すクルマの情報を流している点で、相当焦っているという証明みたいなもの。ちなみにプロトタイプは今秋(2025年後半)のお披露目になるそうな。
この流れを見ると、2019年の秋にプロトタイプを発表した「ARIYA(アリア)」に似ている。早いタイミングで情報公開したものの、受注開始は1年半後。納車は2年半後の2022年3月になった。新型エルグランドも納車開始まで2年掛かるかもしれません。
内田体制の日産が抱えていた問題点は「誰も責任を取りたがらない」ということ。内田前社長を筆頭に開発中のクルマを市販するか決められなかった。
漏れ伝わる情報によれば、毎年4~5車種を開発していたが、内田前社長主催の経営陣チェックで「売れるのか?」と聞かれ、答えられないと「止めよう」になったという。
考えて頂きたい。売れるつもりで開発したって、「売れるか?」と聞かれたら「間違いなく!」とならないでしょう。次期エルグランドも内田体制下では市販するという判断をしていなかったと聞いた。
確かに「売れるか?」と聞かれた迷うことだろう。なんたってトヨタ「アルファード&ヴェルファイア」という手強いライバルがいるんだから。
しかも日産には適当なプラットフォームやパワーユニットが無い。同じような状況で販売した「セレナ」を見ればわかる。ライバルのトヨタ「ノア&ヴォクシー」に人気が集中したことでオーダーストップしたためセレナに流れたが、ノアの納期が短くなった今、セレナは低迷しているのだ。
以上、長い解説になった。現時点で判明している新型エルグランドの情報をお伝えしたい。
まず車体だけれど、プラットフォームは未公表。1.5リッター3気筒の第3世代「e-POWER」を搭載することのみリリースされている。
どんなユニットか? すでに同パワートレインを欧州向けSUVに搭載したプロトタイプ車両の先行試乗会を行っており、私(国沢光宏)も味見してみた。
結論から言うと、「新型エルグランドがアルファードくらい重かったら厳しいかな」と思う。
ライバルのアルファードは、システム出力250馬力の2.5リッターハイブリッドで車重2100kgを走らせる。セレナに搭載される1.4リッターの第2世代e-POWERが163馬力。1.5リッターのe-POWERだと、おそらく頑張って190馬力ほどで、新型エルグランドの車重が2トンを越えたら厳しいんじゃなかろうか。
ということを考えると、プラットフォームは「エクストレイル」などと同じになる(試乗したプロトタイプ車両のベース車「キャシュカイ」も同じミドルクラス向けプラットフォームを使用)。つまり、新型エルグランドはアルファードよりひと回り格下のミニバンということです。
第3世代e-POWERは、現在販売されている第2世代と比較してこれといったアドバンテージ無し。性能向上というより、生産コストや静粛性の追求をしたもので、もちろん第2世代より優れたパワーユニットに仕上がっていたけれど、正常進化型です。
有利さがあるとすればコストか。新型エルグランドがアルファードと同じような押し出し感を持ちながら、コストダウンして安く売れば商品力が出てくるだろう。
具体的には、現在ノアの売れ筋モデルの価格帯は400万円、アルファードは550万円といったイメージ。新型エルグランドがカッコ良くて存在感があって使い勝手も優れていて500万円なら商品力は出てくると思う。
今までの日産は「安く作って高い値付け」が多かった。星野朝子前副社長兼ブランドチャンピンオンの強い意志によるものだったが、良心的の反対です。もちろん失敗したから今の日産になっている。
もしエスピノーサ新体制の商品計画チームが有能なら、新型エルグランドをアルファードと同じくらい迫力のあるボディにして、アルファードよりキラキラしたインテリアを持たせ、それでいて「これはお買い得ですね!」と思える価格設定としてくるだろう。
逆にお客さんが魅力を感じないモデルであれば、日産の再建は厳しい道のりになる。
個人的には、新型エルグランドに大いに期待しています。
Writer: 国沢光宏
Yahooで検索すると最初に出てくる自動車評論家。新車レポートから上手な維持管理の方法まで、自動車関連を全てカバー。ベストカー、カートップ、エンジンなど自動車雑誌への寄稿や、ネットメディアを中心に活動をしている。2010年タイ国ラリー選手権シリーズチャンピオン。
遠回しに、絶対にコケると言っているような…。それが出来る日産なら現状はないはず。
【画像】超カッコいい! これが「新型エルグランド」!?
どこが?