トヨタの「86」は、2012年に発売された2ドアスポーツクーペです。

　2012年発売の初代、2021年発売の2代目（GR86）ともに吊り上がった鋭い形状のヘッドライトを装着していますが、純正で「丸目ライト」を装備した驚きのモデルも存在しました。

　この「丸目ライトの86」とは、初代に設定された「86 style Cb（スタイルCb）」という名称のモデルです。

　もともとは2013年の「東京オートサロン」で参考出展されたカスタムモデルでしたが、多くの人気を集めたことから、2015年のマイナーチェンジ時にカタログモデルに追加されラインアップされました。

　ちなみに同車の名前にある“Cb”は「Cool beauty」の略。その名のとおり、美しくエレガントな外観が86 style Cbの特徴です。

　ベースは86の上級グレードのひとつ「GT」ですが、フロント周りの造形が大きく変わり、86 style Cb専用のデザインへと変更されています。

　ベースよりも70mm延長されたフロントノーズには、全体的に丸みを帯びた優しいボディラインを採用。

　さらに、ヘッドライトをオーバル形の丸目ライトに変更することで、エレガントさとクラシカルさを併せ持つ個性的な雰囲気を生み出しました。

　この丸目ライトと流れるようなフロントラインの組み合わせは、どこか「ポルシェ ケイマン」を彷彿とさせます。

　インテリアでは、“Cb”のエンブレムを備えた専用の本革巻きステアリングホイールや、新意匠のアナログホワイトメーターのほか、黒檀木目調インテリアパネルを採用。室内の高級感がアップしています。

　カラーリングはベースと同じく「ピュアレッド」「クリスタルブラックシリカ」といった単色のほか、「ピュアレッド×マットブラック」といったツートンカラーの用意。さらに専用プレミアムツートーンペイントも設定されていました。

　エンジンなどパワートレインはベースのままとなっており、車両価格（消費税込）は6速MTモデルが418万582円、6速ATモデルが426万3055円でした。

※　※　※

　このように、ノーマルの86にはないエレガントさを備えた86 style Cbは、狙いどおり女性からの支持を得ることに成功しましたが、2016年のマイナーチェンジでカタログから外れ、わずか1年半で販売終了となりました。

　86が2代目へと移行した現在も、同様のモデルが新車で販売されることはなく、86 style Cbを手に入れるには中古車を購入するしかありません。