「もう少し前に詰めて…」 なぜ停止線の“かなり手前”で「止まる車」がいるの? “スペース空け過ぎ”な謎行為…実は他の車・人への気遣いだった!?

信号待ちをしているクルマの中にはときどき、停止線からかなり手前の位置で停止している車両がみられます。ではドライバーは、一体どのような目的で停止線前のスペースを空けているのでしょうか。

大型車ドライバーからは感謝の声も・・・

 信号待ちの際には、停止線のずっと手前で止まってスペースを空けているクルマが散見されます。
 
 この行為に対してはSNS上で「後ろがつっかえるけど、どういう理由でやってんの?」「もう少し前に詰めてよ」といった声が寄せられています。
 
 特に直進車が停止線より手前に止まっていると、後続の車両がなかなか右折レーンに入れず、右折矢印の信号が表示されているのに右折できないという不満も聞かれます。
 
 では、ドライバーは一体どのような目的で停止線前のスペースを空けているのでしょうか。

まだ前詰められるのに…なぜスペース空ける?(画像:写真AC)
まだ前詰められるのに…なぜスペース空ける?(画像:写真AC)

 これにはさまざまな理由が考えられますが、まず「大型車両が交差点を右左折してきた際、曲がりやすいようにスペースを空けている」ということが挙げられます。

 トラックやバスといった大型車両は、その車体の大きさから左折時に軌道が大きく外側にふくらんで対向車線にはみ出る可能性があります。

 そのようなときに停止線手前のスペースを空けておくと大型車が比較的スムーズに曲がれるほか、信号待ちをしているクルマに接触する危険性も低くなります。

 大型車を運転するドライバーからは「大型乗りからすると、こういった気遣いはとてもありがたい」、「停止線の1メートル手前でも助かります」など、感謝の声が上がっています。

 さらにドライバーの中には「万が一後ろから追突された際に、横断歩道を渡っている歩行者に危険が及ばないようにする」という意識を持っている人もみられました。

 停止線の手前のスペースを空けておけば、仮に追突されてクルマが前に押し出されても、横断歩道上の歩行者をはねてしまう危険を低減できます。

 このように大型車や歩行者などへの配慮で停止線前のスペースを空けているドライバーがいる一方、前方の車両感覚がつかめていないために、停止線より手前で止まってしまうというドライバーもみられます。

 SNS上では「クルマの前方の車両感覚がつかめない」、「どんなに詰めたつもりでも1.5〜2mは空いてしまう」といった声が寄せられました。ボンネット部分で前方が見えにくいことにより、苦手意識を持っている人は少なくないといえます。

 なお車両を感知して信号を切り替える「感応式信号」が設置されている交差点の場合、停止線のかなり手前で停止すると、センサーがクルマを感知できず信号が変わらない状態になってしまいます。

 そのため、感応式信号がある場所ではその点に留意して停止する必要があるといえるでしょう。地域によっては、感応式信号のセンサーが感知する範囲を道路上に丸(○)で標示しているケースもあります。

 加えて、警察庁でも停止線前のスペースを大きく空けることは推奨していません。

 警察庁が公表している運転免許技能試験に関する採点基準によると、「停止線の手前からおおむね2m以上手前で停止した場合」は停止位置不適として、減点の対象となることが明記されています。

 また国土交通省の資料では停止線の位置について、「交差道路側の右左折車の走行に支障を与えない位置に設置する」と記載されています。

 つまり、本来停止線は大型車両であっても支障なく通行できる場所に設置されており、基本的に対向車線側のドライバーが停止線前のスペースを空けておく必要はありません。

 とはいえ、道路の幅や形状によっては大型車両の通行しにくい場所があるのも事実です。

 ドライバーは日頃から停止線の直前でピタリと停止できるような運転を心がけつつ、大型車両の交通量が多い交差点では2mを超えない範囲でスペースを空けるなど、臨機応変な対応ができると良いでしょう。

※※※

 クルマ前方の車両感覚をつかむためには、クルマの前端を駐車場の白線に合わせ、運転席から白線の見え方を確認するというトレーニング方法があります。

 車両感覚に苦手意識を持っている人は、他の人に協力してもらうなどして練習することが大切です。

【画像】ええ…!? これが信号で「謎にスペース空けまくる」停止車両です(17枚)

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Writer: 元警察官はる

2022年4月からウェブライターとして活動を開始。元警察官の経歴を活かし、ニュースで話題となっている交通事件や交通違反、運転免許制度に関する解説など、法律・安全分野の記事を中心に執筆しています。難しい法律や制度をやさしく伝え、読者にとって分かりやすい記事の執筆を心がけています。

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