「息子が帰ってきたみたい」復活の“赤いZ”西日本豪雨で水没被害も… 形見の「フェアレディZ」が7年ぶりに復活! 日産校学生のレストアで蘇る

2018年の西日本豪雨で水没被害にあった「2代目フェアレディZ(S130)」を日産京都自動車大学校の学生達がレストアしました。そこにはどのような物語があるのでしょうか。

長い歳月をかけて御子息の形見が復活を遂げた

 2025年3月24日に日産京都自動車大学校(以下日産京都校)は、2018年の西日本豪雨で水没被害にあった日産「2代目フェアレディZ(S130)」を復活させるプロジェクトが完了したことを受けて、完成報告式を開催しました。

2018年の西日本豪雨で水没被害にあった「2代目フェアレディZ(S130)」(画像はレストア済み)
2018年の西日本豪雨で水没被害にあった「2代目フェアレディZ(S130)」(画像はレストア済み)

 1969年に登場した初代フェアレディZ(S30型)は、「ダットサンフェアレディ」から居住性を向上させ、ゆったりとクルージング可能なGTカーへ劇的に変化を遂げたモデルです。

 その後、2代目フェアレディZ(S130型)は1978年に登場。初代フェアレディZのロングノーズ&ショートデッキスタイルのコンセプトを継承しつつ、ボディを大型化させることで室内スペースを拡大させました。

 なお日本では2リッターエンジンの「Z」と2.8リッターエンジンの「280Z」がラインナップされ、海外では「ダットサン280ZX」の名前で知られています。

大切に保管されていた「S130Z」(左上)/学生達が授業の合間に再生させている(右上)/内装部品を外している状態(左下)/少しずつ 復活していく「S130Z」(右下)
大切に保管されていた「S130Z」(左上)/学生達が授業の合間に再生させている(右上)/内装部品を外している状態(左下)/少しずつ 復活していく「S130Z」(右下)

 そんな2代目フェアレディZ(以下S130型Z)のある個体が2018年の「平成最大の豪雨」といわれる西日本豪雨で水没。

 このS130型Zは、岡山県倉敷市に住んでいる山本夫妻が御子息(晃司さん)の形見として大切にガレージで保管されていた個体でした。

 晃司さんは1997年にバイク事故で他界され、これを機にと山本夫妻は「晃司のために」と自宅を新築され、2階に晃司さんの部屋を造り、クルマ好き、バイク好きな晃司さんの所縁の品々、写真などが所狭しに飾られていたといいます。

 しかしながら、西日本豪雨により夫妻の自宅は1階の天井まで浸水し、S130型Zは泥水に埋もれてしまったといいます。

 そんなS130型Zですが、被害にあった翌2019年に山本夫妻より「教材になれば」と申し出を受け、日産京都校の有志学生が集い、今回の「Z復活プロジェクト」が始まりました。

 従来、水没してしまった車両のレストアには相当な時間や工数を要するといい、今回は2台の部品取り車を購入するなどしながら、「Z復活プロジェクト」でも約5年の歳月を経てレストアが完成。

 2024年4月には山本夫妻が来校し、他界された息子さんのS130型Zを学生さんが作業している様子を見て「晃司が夜な夜なZを触っていたのを思い出します。お孫さんはいないのですか?と聞かれることもあって、司が元気なら、この位の孫がいてもおかしくないのにと思うと、涙が出てきました」と話されていたといいます。

 そうしたなかプロジェクトに関わった学生達は「ご子息の形見である大切なフェアレディZを必ず復活させ、ご両親にお届けする!」という想いのもと様々なサポートを受けてレストアをやり遂げたようです。

 今回の「Z復活プロジェクト」について、日産京都校の担当者は次のように話しています。

「元々このクルマは浸水被害にあった自宅を復興ボランティアが発見しました。クルマ自体はその自宅の亡くなられた息子さんの物でご両親が20年以上も大切にしてきたものと聞いています。

 その後『なんとか復活させたい』という色々な人とのご縁があって日産車を勉強する学生の手で再び復活させることになり、2021年の夏から学生内の有志が手を付け始めました。

 最初にすべての部品を外して洗浄することから始めますが、綺麗にすれば使えるものもあれば、電装系などは使えなかったりと様々でした。

 いまのクルマと構造が違う部品もあり、ひとつひとつ調べながら直して行きました。またカスタマイズ科の学生が再塗装し直してくれたことでボディは綺麗になっています」

完成報告式では自走して登場したS130型Z
完成報告式では自走して登場したS130型Z

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 今回、「Z復活プロジェクト」の完成報告式には、前出の山本夫妻をはじめ、日産の名車再生クラブ会長・木賀新一氏、本プロジェクト関連の学生や教員が参加。

「Z復活プロジェクト」では、学生からのプロジェクト活動報告やキー贈呈式があり、来校した山本夫妻は次のように話しています。

「この度はありがとうございました。

 完成したクルマを見て、本当に息子が帰ってきたように思いました。

 このクルマは西日本豪雨で被害に遭いました。ドロドロになったので、そのままダメになるのかなと思いましたが、ご縁があって日産さんに引き取っていただいて、もうその時はこのクルマと逢うのは最後だなと思っていました。

 直す作業は、本当にボロボロで大変だったと思いますが、学生さん、先生達から時々ご報告頂くたびに、息子がそこら辺まで帰ってきてるっていうような感じで『私達ももっと頑張らなくちゃね』と元気をいただいてきました。

 うちの息子は大学生のまま死にましたけども、でも学生の皆さんはこんなに頑張ってくださって、こういうダメなクルマでもちゃんと動かしてくださる力があるっていうことで、感動しております。

 本当に皆さんありがとうございます」

「Z復活プロジェクト」の完成報告式に来場された山本夫妻
「Z復活プロジェクト」の完成報告式に来場された山本夫妻

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 なお今後、このレストアが完成したS130型Zは、2025年5月に富士スピードウェイで開催される「オールフェアレディZミーティング」での展示も検討されているようです。

 その後S130型Zは、山本夫妻の元に戻される予定だといいます。

【画像】超カッコイイ! これが「復活した赤いZ」です。画像を見る!(15枚)

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